第15話 ヤバいから逃げるんだよォーッ!

 俺は自分の直感を信じる事にした。直感が全て正しいとは言い切れなかったものの、窮地に至った時に外れた事はない。今回も多分俺達を救ってくれるだろう。

 俺はしがみついているマイを一旦剥がして、怯えている彼女の白い顔を見つめる。


「逃げよう!」

「うん!」


 こうして俺達は無我夢中でその場を離脱する。判断が早かったからか、襲いかかる和服幽霊の一撃は何とかかわす事が出来た。それからの逃走は勘頼みになる。何故なら俺達2人共、この辺りの土地勘がなかったからだ。

 適当に曲がって、適当に走って、分かれ道で悩んで――。それでも、即決していたからこそ背後の幽霊の接近を許さなかった。


「えっと、えっと……」

「あのさ、いつまで走らなきゃいけないのかな?」

「そんなの追いかけてくるアイツに言ってくれよ~」

「何でこうなっちゃったの~!」


 彼女はこの展開の理不尽さを叫ぶ。俺だって叫びたい。叫んで何とかなるなら、声が枯れるまで叫び倒したい。けれど、現実は理不尽で残酷だ。幽霊と人間の根比べは人間に勝ち目はほぼないだろう。幽霊は疲れ知らずで、人間はすぐにバテてしまうからだ。

 お札とかそう言う対抗手段があったなら、また状況も変わるんだろうけどな。


 とにかく夢中になって走っている内に、周りの雰囲気が独特なものになっている事に俺は気付いた。最初に気付いたのは空の色だ。夜なのだから真っ暗はずなのに濃い紫色になっている。赤みがかっているのだ。それに気付いて周りを見渡すと、目に映る建物もどこか奇妙な形をしている気がする。

 もしかしたら、俺達は現実の世界とは別の何処かに迷い込んでしまったのかも知れない。それとも、俺の感覚がおかしくなったのか――。


「ねぇ? ここ変じゃない?」

「マイさんも分かった?」

「絶対変だよ! 空の色もおかしいし。ここはどこなの?」

「俺にも分かんないよ!」


 俺はマイの発した素朴な疑問に答える事が出来ず、逆ギレ気味に声を荒らげてしまった。すぐにそれを反省したものの、謝罪の言葉を言う前に彼女が俺に顔をじっと見つめてきた。


「これからどうするの?」

「えっと……」


 理屈は分からないものの、もし本当に別世界に来てしまったのなら幽霊をまけたのかも知れない。元の世界に戻る方法は分からないものの、その確認は必要だろう。

 それか、今はまだ確認をせずにこの世界の正体が分かるまでは先に進み続けるのと言うのもアリだと思う。


 マイは俺の言葉を待っている。なら、やはり俺が判断をしなければ――。



 振り返って確認する

 https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330649104418658

 このまま前進する

 https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330649104468086

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