第7話 グダグダな告白
このままだとヤバい。この流れを変えないとヤバい。焦った俺はここで一か八かの賭けに出る。いつもより更に気合をれて、じっとマイの顔を凝視した。
「あ、あのさ……」
「ん?」
「相手は知らないやつなんだろ?」
「うん」
場に微妙な沈黙が流れる。これはつまり……いや、焦りは禁物だ。もっと慎重に確かめねば。
「悩むって事は断る気もあるんだよね」
「まぁ……」
「じゃあさ、俺の言葉次第?」
「まぁ……」
俺の質問のテンションがおかしかったのか、彼女の顔に不信感がにじみ出てきているような気がする。アレ? 大丈夫なのか? この流れでいいのか? 俺もまた段々とテンパってきた。
「あのさ……」
「うん」
「いつも猫カフェ一緒に行ってくれるじゃん?」
「うん」
ここまで来たらもう察してくれるかな? いや、ハッキリ喋らないとダメか。俺は一旦ここで深呼吸する。あーダメだ、緊張して喉がカラカラだよ。今すぐにでも水を飲みたい。でも、今ここを離れる訳にはいかない。うわあああああ。
「さっきからハルトくん変だよ? 言いたい事があるならハッキリ言ってよ」
「あのさ、俺といて楽しい?」
「楽しいよ。楽しくなきゃこうして話さないよ」
「じゃあ、俺じゃダメ?」
勢いに任せて俺は口を滑らせる。マイの反応は……。ダメだ、顔を見られない。このまま今すぐに逃げ出したい。こんな告白ってないよな。何やってんだ俺ーっ。
そして、また重い沈黙が訪れた。これはどうなんだ? どっちなんだこれ?
「何がダメなの?」
「え? いやだから、そいつとは付き合って欲しくないんだ」
「あ、あ~。ハルトくん……そう言う事?」
「あっ、でもほら……返事とか、すぐには……」
言いたい事が伝わった時点で、俺は席を立つ。ここから先は心の準備が足りなかった。俺が彼女の横を通り過ぎようとした時、カバンを持つ右手首を掴まれる。
「待ってよ。逃げないで」
「えっ?」
「1人で言い逃げは卑怯だよ」
「で、でも……」
マイの真剣な表情を目にしたら、俺の足はもう動かなかった。心は今すぐにでも逃げ出したいのに、この場から1秒でも早く離脱したいのに。
その表情を見る限り、彼女は返事を返す気満々だ。なら、返事をしっかり聞くのが道理だろう。確かに逃げるのは良くなかった。俺は改めて椅子に座り直す。
「私ね。ハルトくんの気持ち分かってたよ。でもハッキリ口にして欲しかった。そうしたら返事も出来るのにってずっと思ってた。だから返事は今すぐに出来るよ。だってずっと待っていたから」
「それって……」
「私はハルトくんが好き。さあ、今度はハルトくんの番」
俺は頭の中が真っ白になった。これは夢かな? きっと夢だな。目の前の俺には到底不釣り合いな美少女が俺の事を好きだって……。そんな事が有り得る訳がない。俺は何て都合のいい夢を見ているんだ。この夢がずっとずっと覚めないでいて欲しい。
そうやって彼女からの告白の言葉を何度も何度も反芻していると、目の前の美少女の両手が俺の頬をがっしりと掴む。
「早く返事をして! ボケっとしない!」
「あ、はい。俺も宮児嶋さん、好きです……」
「名前で呼んで!」
「まっ、マイさん、好きです」
こうして俺達はベタベタな成り行きで、ベタベタなハッピーエンドを迎える事になった。ああ、一生分の運を使い果たした気がする。俺、明日からも生きていけるかな……。部屋にいきなり隕石が落ちてきても納得しちゃうぞ。
俺が頭の中を真っ白にしていると、マイが俺の手を握って引っ張り上げる。
「ほら、今日も一緒に猫カフェ行こ」
「うん」
俺達はこれからどんな青春を迎えていくのだろう。カップル成立なんてまだ最初の一歩だ。これから少しずつ親密になっていって、お互いの理解を深めていこう。それから先の展開は――出たとこ勝負でいいや。
こうして2人はラブラブになりましたとさエンド
あとがき
https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330651670176834
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