カボチャの国の王女は魔術師の嫁になる

黒月白華

第1話 カボチャの国の王女

 その国はカボチャによる歴史が深くカボチャを崇め、お祝い事があるとカボチャを食し、カボチャの服を作り歌い、踊っていた。


 カボチャ畑は国中に広がり家の中や外にはカボチャのオブジェが並んでおり、カボチャ型の家もあり、夜になるとカボチャのランタンが光った。


 もちろん王城もカボチャがふんだんにあしらわれていた。カボチャ型のドーム屋根に窓、庭園の植木に至るまでまでだ。


 そしてこの国の第二王女は窓からそれを眺めていてうんざりしていた。


「頭がおかしくなる!!朝から晩までカボチャカボチャカボチャ!!」

 王女…ルーシー・ド・アンカースは特注で作らせた唯一カボチャモチーフのない椅子に座り足を組んでいた。


 ドレスもカボチャモチーフや飾りを使用しない。この国で唯一のカボチャ嫌いであった。


 そして今日はルーシーの婚約者選びに開かれたパーティーで朝から何人ものカボチャみたいな男達からダンスを申し込まれては断っていた。


「ルーシー王女…17ともなるとますますお美しい!!」

「いや、あどけなさの残る顔も可愛い」

「あの方に私の作ったカボチャを食べためらいたい!」

「何故カボチャが嫌いなのか?」

 と聞こえてくる。


 ルーシーは腰まで伸びた緩やかな金色のウェーブに輝く蒼の瞳を持ち…まだあどけない可愛い顔立ちに似合わず胸は歩くたびに揺れるくらい立派なもので体型で男達の目線が胸に集中することもありなるべく胸を隠すようなドレスを選んでいた。

 しかしこの日だけは婚約者選びとあって侍女やデザイナーから指摘され渋々胸の谷間が少し露出したものを着させられたのだ。


 だから機嫌は最悪だ。


「またいやらしい視線が集中してるわ!!もう嫌!私結婚なんてしたくない!!」

 と言いジュースを飲み干した。


「ぎゃっ!これカボチャジュースじゃない!誰よ置いたの!!ぺっぺっ!」

 と嫌な顔をし吐き出した。


「ルーシー様…何故そんなにカボチャを毛嫌いなさるのです?こんなに美味しいのに!そして可愛いのに!」

 とカボチャのブローチをつけた侍女マギー・オブ・ストックがうっとりして言う。オレンジ色の髪に銀の瞳で可愛い顔をしている。


「マギー…貴方を含めこの国の連中皆集団催眠にでもかかってるのかしら?」


「かかっておりませんよ。ルーシー様が変なのです。それよりもうすぐ催し物が始まりますよ。旅の魔術楽団の芸だとか」


「それは楽しみだわ。なんせ他所から来た人達だもの!この国の楽団はダメだわ…。やっぱり皆カボチャの出てくる演劇しかしない!」


「うちの国の歴史を演じているだけです」

 するとホールが暗くなったかと思うと色鮮やかな魔法の花火が天井付近で灯り音楽と共に魔術楽団の華麗なショーが始まった!


 沢山のピエロが踊り魔法のジャグリングをしたり魔法の小鳥が光りながら飛び立ちホール内の客達を喜ばせた。そしてメインの魔術師が現れた。


 その男を一目見て息を呑むルーシー。

 漆黒の黒髪に紫の瞳を持ち、一見悪魔のように見えるが…端正な顔立ちに笑みを薄ら浮かべ魔法の花を降らせた。


「か……カッコいい…♡」

 隣にいたマギーが思い切り引いた。


「は?あの悪魔みたいな魔術師が!?ルーシー様本気ですか?確かに顔は一応いいですけど…陰気さが滲み出ておりますよ?きっと性格も最悪ですよ」

 と言う。この国の者は何故か皆太陽みたいに心が晴れやなものが多く暗い色の髪や瞳を持つものを毛嫌いする傾向があった。


「マギーこそ目が腐り落ちてる?あの方とてもとても素敵じゃない!お願い!後でお話がしたいからお茶会に招待して!」

 とルーシーは頼んだ。


 そうして魔術師グレン・アトキン・バクストンが後日王女からの正式なお茶会に呼ばれたのだった。






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