第49話
佐々木さんが来た瞬間、あのゾンビ男は佐々木さんの元に駆け寄った。
「さ、佐々木さん、助けてください! あの男に殺されかけてるんですよ! 私には
鍵開け?
鍵開けと言えば俺が手に入れたスキルの《解錠》が思い浮かべられる。
あのゾンビ男も同じようなスキルをもっているのだろうか。
「
「あ、あぁ。」
あまりの勢いに少し押されてしまう。
引きこもりにその勢いはキツイんですが…………。
「申し訳ないが着いてきてくれ! たしかお前は回復魔法が使えるだろ? まだ怪我人が沢山出てるんだ、たすけてくれ!」
「わ、分かった!」
さっきも治しはしたが怪我人はまだまだ出ているはずだ。
…………急がなくては。
俺は佐々木さんに連れられるままに怪我人の元へ向かった。
向かった先には何人もの怪我人が居た。
俺はその一人一人に《快治》をかけていった。
治った人たちは皆俺にお礼を言った後直ぐにまだ戦いに戻って行った。
「晴輝、本当にありがとう。君のお陰で彼らは死なずにすんだ。」
「そんなに感謝されるようなことはしてないですけどね…………。って、それよりもあのゾンビ男の事ですよ!」
「ゾンビ男?」
そうか、佐々木さんはあいつがゾンビを生み出していたことを知らないのか。
俺はとりあえずあのゾンビ男がやっていた事を話した。
「そうか、あいつやっと帰ってきたと思ったらそんな事してたのか…………。人に迷惑をかけないことなら渋々許していたがもうあいつは殺人鬼と同じだ。…………絶対に許さない。」
佐々木さんは手を強く握り締め、怒りを顕にした。
「そうと決まれば早くあいつを捕まえなければ行けないんだが…………あいつはどこいったんだ?」
周りを探してみてもあのゾンビ男の姿は何処にもない。
俺が治療をしているうちにちゃっかり逃げやがったようだ。
「くそっ、あいつ逃げ足だけは早いな!」
佐々木さんはブチギレている。
あいつに逃げられたら何をしでかすか分からないから早く見つけなくては…………。
あいつは生きた人間を殺してまでゾンビを作っていた。
また怪我人を殺されたりでもしたらたまったもんじゃない。
感覚を研ぎ澄ませながら辺りを探してみるが、一向に見つかる気配がない。
「くそっ、晴輝、すまないがここは俺に任せて怪我人の治療に専念してくれ!」
「分かった!」
ここを守りきらなくては悠ちゃんを守ってくれる場所が無くなってしまう。
それだけは阻止したい。
佐々木さんがゾンビ男を探しに行ってすぐにまた新しい怪我人が運ばれてきた。
少しキツいが、まだまだ余裕を持って治療を進められていた。
が、そこで予想外の出来事が起こった。
ドゴォン
何かが爆ぜるような音がホテル街に鳴り響いた。
嫌な予感がする。
この音の正体が味方側が出した音ならば良いが、これが敵が出した音なら大問題だ。
敵側の音だったなら言わずもがな怪我人が出ているだろうし、味方側だとしてもこれだけの音なんだから切り札のようなものを切らなければ行けない程の戦況なのだろう。
どっちにしろ助けが必要だろう。
音が鳴ったのは丁度ゴブリンのダンジョンがある方面だった。
俺はとりあえず音が鳴った場所に行く事にした。
音が鳴った場所に着いた瞬間俺は黒鉄を構えた。
なぜならそこにはクレーターと焼け焦げた人。何者かと戦ってボロボロになった陽夏。
そして、
くそっ、やばい状況になった。
陽夏が交戦中のようだが、少なくとも何人かの人は死んでしまっている。
「陽夏! 大丈夫か!?」
「はっ、晴輝!? なんでここにいるの!? 早く逃げて!」
逃げろって言われたって逃げられるわけが無い。
俺は陽夏の前に立った。
「陽夏は一旦下がって援護をしてくれ!」
「っ、でも…………。」
「いいから!」
俺が陽夏後ろに押した瞬間、謎の女の人は詠唱が終わったのか、杖をこちらに振ってきた。
俺はすかさず黒鉄で防御姿勢を取った。
火の玉の様なものが高速で俺に飛んでくる。
「ぐうっ!?」
とてつもない衝撃と共にこの前まで俺の体を焼いていたコンロの火など比にならない程の熱が俺の体を焼いてくる。
黒鉄は特に傷などは着いていないが、俺の腕はもう限界だった。
火の玉の勢いが無くなると同時に、俺の腕の感覚も完全に無くなった。
カランッ
黒鉄が地面に落ち冷たい金属音を出す。
「晴輝っ!?」
陽夏は目の両端に涙を溜めながらこちらに駆け寄ってこようとする。
「俺は大丈夫だ! 一旦引くぞ!」
俺はまだスキルのおかげで酷い痛みはあるが、まだ動ける。
あの謎の女の人があの火の玉のようなものを飛ばす為には少しの詠唱のようなものが必要な様だし、逃げる時間はあるだろう。
「とりあえず行くぞ! 俺に着いてきてくれ!」
「けどその腕…………。いや、分かった。着いていく。」
まず俺が走り出し、その後ろを陽夏が着いてきた。
ホテル街は入り組んだ構造をしているので何回も曲がっているうちにあの謎の女の人を巻けたようだ。
俺たちは治療をするため、適当な建物に入った。
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