第41話

俺達はトレントのダンジョンに向かう途中、あることに気づいた。

トレントのダンジョンに向かうまでにモンスターに会っていないという事だ。

今まで外に出ると必ずモンスターに襲われるという生活だったためか、違和感が凄い

快適さはあるのだが、これはこれで不気味だ。


トレントのダンジョンにつくと、ゴブリンのダンジョンとの違いに驚愕した。

ゴブリンのダンジョンの見た目は高層ビルのような見た目だったが、こっちは土の様な塔が空高くまで伸びているような見た目だった。

土で出来た建物など見たこと無い。

かなり異様な雰囲気を放っているその建物に俺達は入って行った。


「何だ…………ここ。」


俺は入った瞬間にこのダンジョンの異質さに気づいた。

というか気づかない方がおかしいというレベルの異質さだ。


「何ここー! まっしろいね!」

「あぁ。」


このダンジョンの中は外から見た雰囲気とは違い、ただただ白い空間が拡がっているだけだった。

その空間に端は見えず、その空間はに繋がっている様に感じた。


「あ! 階段あった!」


ゆうちゃんが指を指す先には豆粒のような大きさの階段があった。

全てのものが白いこの空間では距離感が掴みにくく、遠くの物がどのくらい遠くにあるのか分からない。

なので、階段は白い空間に浮いているように見える。


ちょっと怖いが登って行こう。

俺達はそこ階段へと向かっていく。

何だか階段が少しずつ大きくなっているように見えて少し面白かった。


次の階に行ってもほぼ同じような空間が続いているだけだった。

違うのは階段への距離だけだ。

モンスターも居ないからぶっちゃけ暇だった。


「これは、気が狂いそうだな。」


ずーっと同じような風景を見続けるというのは引きこもりの俺からしてみれば楽勝な事な筈だが、これは次元が違う。

しかも、俺はいいがゆうちゃんがどうか分からない。


「ゆうちゃん。これから多分こんな感じの光景がずっと続くと思うけど大丈夫? 暇にならないように一旦帰っておもちゃでも取ってくる?」

「大丈夫! お兄ちゃんがいれば何でも楽しいよ!」

「ン゛ッッ。」


可愛すぎやろ。


「分かった! じゃあ、僕が肩車してあげる。」

「やったぁ! お兄ちゃん走るのすっごい速いからそれすっごく楽しくて好き!」

「そっか! いくらでもやってあげるよ!」


俺はゆうちゃんを肩に乗っけて走った。

ゆうちゃんは楽しそうな悲鳴をあげる。

楽しそうでなによりだ。


そんな調子で俺達はダンジョンを登って行った。



◇◇◇◇



バリバリ


「んー、これなんだったんすかねー。」


凪は謎のガラスな様なものをバリバリと食べながら呟いた。


「あ、けど何かコレ凄い土飛ばして来てたしそのままにしたら無限に土を食べられたかも…………ま、いっか。これ凄い美味しかったしね。」


【スキル《暴食LV10》を入手しました】

【Пибрни дииативнй вати《食》】


「ん? なんすか、今の。」


今まで頭に響いた声は理解は出来ていないが、少なくとも日本語ではあった。

だが、今頭に響いた声は完全に日本語ではなかった。

それにこんな言語見たことも聞いたことも無い。

凪は首を傾げる。


「ま、いっか。どうせ使い方とか分からないから意味無いっすよね。」


凪はあっけらかんとした態度でそう言った。


ーーーーー


「うんにゃ?」


凪がガラスの中に入っていた生き物のような何かを食べ尽くすと、よく分からない音が鳴った。

物凄い爆音では無いものの、様々な音が重なりすぎていてその情報を脳が処理しきれていないという感じがした。


ま、いっか。


凪はそう繰り返す。

凪はその事については気にしない事にし、周りの美味しそうな物を食べ始めた。


「ん?」


この部屋の美味しそうなものをほぼほぼ食べ終わった頃、凪は何かを感じだ。


「これは…………凄い遠いけど…………凄い美味しそうな匂いっすね!」


凪は今食べていた木の板を投げ捨てる。


「あんなに美味しそうな匂いなんだから絶対美味しいッスよね! 絶対食べるっすよ!」


凪は期待に胸を膨らませる。


凪はその美味しそうな匂いの招待を探る。


「多分…………下っすね。」


凪は今まで登ってきた階段を見る。


「もうここまでの美味しそうなものは食べ尽くしたはずなんすけど…………まだ残ってたんすかね?」


凪は階段を降りてみる。


「やっぱり! 匂いが濃くなってるっすね!」


階段を降りる度に濃くなっていく匂いに、凪はこのまま下に降りていけば必ず美味しそうな匂いの正体に会えると確信した凪は階段を下りていく速度を加速させていく。


「ご飯。ご飯。ご飯。ご飯!」


凪にはもうその事しか見えてない。


そのまま凪はその匂いの正体に会うまで階段を降り続けた。


その匂いの正体に凪は対面する。

2体の生き物だ。


「な、凪?」

「美味しそう美味しそう美味しそう美味しそう美味しそう!!」

「おいおい何言ってんだよ。」


へぇ、こいつらは日本語使えるんだ。

この前のやつはよく分かんない言葉で喋ってたし、会った瞬間美味しそうなやつをいっぱいくれたし、こいつらとは違う生き物なのかな?


「ま、いっか。」


凪はそういうと、捕食を開始する。

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