第21話
暫く歩いていると俺の家が見えてきた。やっと帰宅出来たことへの安心か疲れがどっと来た。
「コナー。着いたぞ。」
「お! やっとだね。」
さっきまでの少し疲れた顔は何処へ行ったのやら、コナーは子供のように目を輝かせた。
俺が家に入ろうとしていると、コナーが踏みとどまった。何事かと思いコナーを見てみるとコナーの額には少量だが汗が見えた。
「何かあったのか?」
「何かあったって…………君にはこの異様な雰囲気が分からないのかい? まるで高難易度のダンジョンのような魔力が漂ってる。」
まるで何を言っているのか分からない。と言うか高難度のダンジョンになんか入った事が無いからな。
「体外魔力を使った事が無いから分からないのかな。いや、このレベルなら誰でも分かると思うんだけど…………。」
「体外魔力?」
今まで外に出てない事もあってか知らない言葉が多すぎる。ネットもずっと開いていない。必要最低限の事以外を調べるのは怖くて躊躇ってしまうのだ。
「やっぱり知らなかったか。引き篭もりなのにネット触ってなかったんだもんね。詳しく説明すると長くなるから簡単に言うけど、体外魔力は体に取り込めないけどスキルを使うのに必要なものだよ。そして、もうひとつあるんだけど、それが多分君が思っている魔力で、体内魔力と言うやつだ。これを取り込むと何故か分からないけどスキルが手に入るんだ。こんなものかな?」
へー。理解出来ているようで理解出来ていないとういう感じだ。俺がスキルを使った時に魔力を使った覚えは無い。だから体が覚えていないのかもしれない。
「なぁ、俺がスキルを使った時に体外魔力を使った覚えは無いのだが。」
「え? そんな訳は。あ、そういう事か。言い方が悪かったみたいだ。僕が言っているスキルはアクティブスキルと呼ばれる外に事象を起こすスキルの事だよ。君のスキルは殆どがパッシブスキルと言う体内に事象を起こすスキルだから分からないのかもしれない。」
「そういう事か。」
まぁ、理解は出来たと思う。確定出来ないのはやはり体験してないからなんだろう。俺は一旦その事は理解出来たという事にする事にした。
「それで、入らないのか?」
「え? ああ。入るよ。入るに決まってる!」
コナーは先程までの元気を取り戻し食い掛かるように俺にそう言った。子供を初めての場所に連れていく時のお父さんのような気持ちだ。まぁ、子供いないからどんなのか分からないんだけどね。
本当に悲しくなる。
だが、その事は顔に出さずに家へと入っていった。
ん? ちょっと待てよ。俺はずっと洗濯も掃除もなにもしていない。風呂にも入っていない。どこか行く時は着替えたりしていたし魅力のスキルもあるし俺の見た目的にはそこまで汚くは無いとは思うが、スキルの効果の及んでいない俺の家は…………。
「うわっ! 汚っ!」
やっぱりだー!
俺は散らかり放題汚れ放題な俺の部屋を見回して叫びたい気分になった。
一人でいる時はそんなに気にしたりはしていなかったのだが、人が来るとなると話は別だ。
俺だって見栄を張りたいのだ。
自分と相手を比べて自分の方が劣っていたら物凄く虚しい気分になる。出来れば相手よりも上の立場にいたい。
だが、この家を見れば一目瞭然だ。俺の家は見た通りこの有様だ。だが、コナーの家はどうだ? 家かは分からないが、あの部屋を見る限りちゃんとした綺麗な部屋に暮らしていたに違いない。
俺が謎の敗北感を感じているとコナーはその事など気にもとめずに話し始めた。
「それよりもさ! その箱は何処にあるんだい!?そこら辺に置いてある箱は全部開いてるから違うだろうし。これだけの量があったら探せないんよ!」
一見困っているセリフのように感じるが、そのセリフとは裏腹にコナーはワクワクとした表情を隠し切れなかった。
「ちょっと待っててくれ、確かこの辺にーーっとあったあった。」
俺は大量の開いた箱の中に埋もれていた唯一の開いていない箱を引っ張り出した。
「これが噂の箱かい!? 不思議な素材だ。僕の知ってる金属にはこんな様なものは無い。そんな事は今はいいんだまずは開けてみなくては!」
コナーはダイアルに指をかけるた。だが、すぐにコナーは不思議そうな顔をして俺の方を向いた。
「これ晴輝君が言ってるよりも回しにくいよ? と言うか普通のダイアルよりも重いというか…………。これ本当にしらみ潰しに回して開けてったの? 現実的に考えて無理な気がするんだけど。」
コナーは戸惑った様子で聞いてくる。そんなはずは無い俺が開けていた時は一日で5個とか開けられたはずだ。それにコナーが回しているよりも何倍も、下手したら数十倍倍早く開けられた。
「ちょっと貸してくれ。」
俺は箱を開けようとダイアルに指をかけた。
カチャッ
あ、開いてしまった。
「こ、これは! 体外魔力とも体内魔力とも違うこれは…………ゴニョゴニョ」
コナーは何か小さな声で呟いているが、なんと言っているのか分からないため一旦置いておこう。
さて、困った。俺はマスターキーのお陰というかマスターキーのせいというかで触ったらすぐに開いてしまう。
どうしようか。
俺は開けないと思いながら触ると触れることが出来たことから、スキルを使わないと思いながら開けようとしてみた。
お、できたできた。
1番最初と同じくらいの感じでダイアルを回すことが出来た。やはりコナーよりも早く出来ている。
「あれ、何でだろう。」
コナーはもう一度触ってみるが俺よりも全然遅い速さだった。
「僕が遅いのか、それとも君が速いのか…………。よし!」
コナーは箱を手に持って何かをした。
その瞬間だ。
「ぐうっ!」
「な、何だ!?」
コナーの耳や鼻から大量の血が流れ出した。
何が起こってるんだ!? 周りを見渡すが特に変わった様子は無い。
コナーはしばらく呻き続け、遂には倒れてしまった。
「コナー!」
一体何が起こってるって言うんだ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます