第9話
2体目からのゴブリンは思ったより簡単に倒せた。
ゴブリンを倒していく度に体が慣れていくからか、力のかけ方やタイミングなどが掴めたのか、ほぼ1発で首を落とすことが出来た。
だが、何体か倒していくうちにそれが俺の能力によるものでは無いことに気づいた。
「なぁ、陽夏。このナイフの切れ味っておかしくないか? 普通のナイフってこんなに切れるものなのか?」
俺はナイフとかを触った事も無かったが、それでも分かるほどの物凄い切れ味だ。
「あぁ、それはダンジョンから取れた物ね。」
「え、ダンジョンで物が取れるのか?」
「うん。ダンジョンから取れるものは高品質な物だったり、この世のものとは思えないような効果を持つ物だったりすることが多いの。今は多分そういう物を売るのが1番稼げるんじゃないかな?」
まじか。マジで小説の中の世界みたいだな。ファンタジー小説とかではよくダンジョンの宝箱とかから出る物を売ったりして大金持ちになれたりする。
この世界でもそんな事が起きているというわけか。
「ちなみにこの刀もダンジョン産よ。」
そう言って陽夏はその美しい刀をドヤ顔で見せてきた。
「この刀はね、切った相手から魔力を吸い取って強化されていくものなの。まぁ、強化は微々たるものなんだけど、塵も積もれば山となるって言うし、この刀を使い続けているの。」
そりゃドヤ顔にもなると納得させられるほどの効果だ。
「じゃあ、俺のナイフもなにか効果があるのか?」
「すっごく切れ味が良いわ!」
「それだけ?」
「それだけ。」
うん。まぁ、良いよ。俺にそんないいもの使いこなせるとも思わないしな。
「このダンジョンでも何か取れたりするのか?」
「うーん。取れるには取れるんだけど、あまりいいものでは無いわよ? 」
「何が取れるんだ?」
「鉈と、よく分かんない首飾りと、精力剤。」
「おっ、おう。」
そりゃ、ゴブリンだもんな。そういう物が取れるよな。美少女の口から発せられたその言葉のインパクトが強すぎて俺は表情を引き攣らせた。
てか、これってセクハラにならないよな?
「陽夏。別に変な意味じゃ。」
「来たわよ。」
陽夏は真剣な顔をする。
普通に探索している時と敵を発見した時の切り替えの速さに、陽夏が相当な玄人な事を感じさせる。
「まだ戦えるわよね。」
「あぁ。」
俺はナイフを構える。
そして、周りの状況を観察し、ナイフのリーチに入るまでの歩数を頭の中でシミュレーションして確かめる。
そうしたら、相手にこちらの存在を感づかれないように静かに首元にナイフを突き立てた。
「!?」
ゴブリンは首を切られて初めて俺の存在に気づいたようで、混乱した顔のまま頭だけの状態になった。
「お疲れ様。それにしても君は吸収が早いね。羨ましいよ。私なんて10体以上倒してもそんなにスムーズに倒せ無かったよ。はぁ、これが才能ってやつか。私のスキルもパッとしない奴だしな。」
陽夏がそう愚痴っていると、なにかに気がついたような顔をして俺に質問した。
「君のスキルまだ聞いてなかったよね。何を手に入れたの?」
「えっと。」
困った。スキルはもっと前から手に入れていたし、今回の戦闘では手に入っていない。
嘘をつくにしてもじゃあここで使ってみてよと言われても困る。
どうしたものか。
「え、そんなに酷いものだったの?」
しょうがない。俺は事実を混じえた嘘をつくことにした。
「実は俺のスキルは《解錠》というものらしい。そこまで使えるものじゃないよ。」
「あちゃー、解錠って使えないスキルの代表格じゃん。可哀想。まぁ、戦いの才能はあるみたいだし、今後手に入るスキル次第では全然防衛者としてやっていけるよ!」
ん? まって? なんか俺防衛者になるって事になってる?
それは無理だ。何故なら俺は箱を開けるために家に籠らなければならないからだ。この箱の秘密は知られたくないからこっちで箱を開ける訳にはいかない。ここは丁重に断らなくては。
「なぁ、陽夏。俺は防衛者になる事は出来ないぞ?」
「えっ!? なんで!?」
「あー、えーっと、なんでもだ!」
特に何も考えずに断ったため言い訳を考えていなかったため、雑な感じになってしまった。
「むー。分かった。とりあえず一旦帰ってから話し合いましょう。」
「分かった。」
そうして俺達はダンジョンから出た。
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