①死責転嫁《Bois de Justice》

秋月 菊花

プロット

タイトル:「死責転嫁Bois de Justice


ジャンル:現代ファンタジー


コンセプト: 悪のカリスマ主人公 バディ 勧善懲悪


ストーリーログライン:不当な死を覆す医者が、ヤンキー少女と共に権力に盾ついて行く話


世界観:

 現代日本に準拠。主人公である先島が持つ「死責転嫁」の能力のみがファンタジー要素。能力詳細は「用語・備考」の欄に後述します。


登場人物:

〇先島 礼二(さきしま れいじ)男 20歳 主人公

 短く刈った黒髪にシルバーの瞳。真っ赤なフレームの眼鏡をかけている。院内にいるときは常に白衣を着用し、それ以外は黒いシャツ姿でいることが多い。

 医者。海外に留学、飛び級制度を利用しアメリカの名門大学医学部を18歳で卒業した。絶対にミスをしないことで有名になり若くして地位を築いたが、周囲の優秀な医者がバタバタと死んでいくため「蠱毒」と呼ばれ恐れられている。

 山奥の閉鎖的な村の出であり、家系に代々伝わる「死責転嫁」の能力を持つ。

 知識が豊富で理屈の伴わない行動はとらない。人の命を助けるためならどんな手段も厭わない、ある意味矛盾した性格。

「懲役? 賠償金? くだらない。奪った命を償うというのは、こういうことを言うんだよ」


〇姫宮 礼緒(ひめみや れお)女 17歳 相棒

 プリン化した金髪を背中の中程まで伸ばし、耳に大量のピアスを開けている。瞳の色は緑(カラコン)。ショッキングピンクのノースリーブの上に、夏でも冬でも黒のスカジャンを羽織っている。服の背中一面に刺繍されたライオンがお気に入り。

 地元の暴力団直属のヤンキー集団の下っ端。かといってパシリ要員というわけでもなく、基本は暇を持て余している。

 無鉄砲な楽天家。後先考えずに突っ込んでは玉砕する姿がよく見られる。どうしようもないアホだが勘だけはやたら良い。

「先島サンが生きてる限り、つまりアタシって死なないワケじゃん? いやーいいっすよね命の心配しなくていいって!」


〇敏本 裕一郎(としもと ゆういちろう)男 28歳 一章敵役

 ワックスで固めたこげ茶の髪に、茶色の瞳。ブランド物のスーツを着ている。

 絶対に自分の手を汚さない敏腕弁護士。弁護の腕はもちろん立つが、絶対に勝てそうにない案件の場合はあらゆる手を尽くしてゴリ押す。不慮の事故による被害者死亡はよくある話。

 一見親切に見えるが、むしろ冷酷。勝利の優越感に酔うことだけが生きがい。

「死人に口なし。火を見るよりも明らかな、この世界の理です」


〇毒島 英夫(ぶすじま ひでお)男 68歳 二章敵役

 白髪交じりの髪をオールバックにし、黒のスーツと赤ネクタイを着こなしている。瞳の色は黒。

 与党に在籍する現役の幹事長。公認権を乱用し自分の周囲を都合の良い人材で固めまくっているが、衆目に晒され自由行動が制限されるリスクから内閣総理大臣の座は意図的に避けている。未だ隠し通している横領や賄賂、恣意的な左遷は枚挙に暇がない。

 とにかく人当たりが良く、常に微笑みを絶やさず謙虚。しかしその全ては悪印象を抱かれないためであり、本質は欲求に目がない快楽主義者である。

「一体何を臆することがあるというのかね。君のその行動で救われる人がいるんだ、胸を張りたまえよ」


〇桝田 恵美(ますだ えみ)女 45歳 三章敵役

 茶色の髪を後頭部でまとめ、アンバーの瞳に細いシルバーフレームの眼鏡をかけている。ほとんどの時間を警察署内で過ごし、その間は常に制服を着用。

 警察署の署長であり、警視正。公務の傍ら進んで事件捜査に参加し、特に容疑者の取り調べは自らの手で行うことがほとんどである。犯人の自白率は驚異の98%以上を誇るが、握り潰した誤認逮捕も数知れず。なお公務の大半を押し付けられている副署長がいる。

 自らの信じる正義を絶対の基準とし、厳格で意志が強い。ただし強い加虐嗜好を持っており、その信念はことごとく相手を追い詰めることだけに向けられている。

 「そう、そんなに大変な事情があったのね……でも残念。正義は覆らないわ」


用語・備考

〇「死責転嫁」

 先島の持つ能力。故郷の村で祀られる土着の神に由来するもの。殺人や医療ミスなど不当な死に見舞われた人を蘇生し、反対に犯人を死に至らしめる。同時に先島以外の目撃者や関係者の記憶も改ざんされる。

 老衰、病死、自殺など犯人がいないものに対して発動することはできない。また、この能力は「現場で」「夜明けまでに」行使する必要がある。


章ごとのあらすじ:各章3~4万字程度 プロローグ・エピローグ3千字程度

・プロローグ

 夜の病院。医療ミスがあった手術室で「死責転嫁」を行う先島。直後、救急車のサイレンが鳴り響き、犯人だった医師の名を呼ぶ声で院内が騒がしくなる。


・第一章「蟲毒の医師」

 医者として多忙な日々を送る先島のもとに、大怪我をした姫宮が運び込まれてきた。間もなく亡くなった姫宮が刺されていたことを知った先島は、その夜「死責転嫁」を行う。蘇った姫宮の代わりに命を落とした犯人の背後には、痴漢の被害者死亡を目論んだ敏本がいた(姫宮は痴漢被害を訴えていた)。裁判に負け殺人未遂も露呈し世間から非難の声が集まった敏本は、姫宮だけでなく彼女の命を救った先島にも私怨を向ける。身の危険を感じた先島は、敏本への復讐を決意した姫宮と共に敏本の自宅兼事務所に殴り込みに行くことにした。

 その辺で拾った鉄パイプ片手に、身を顧みない猛攻で次々とガードをなぎ倒していく姫宮。先島も神経毒入りの注射器を携えて相手の動きを止めていくが、ようやく追い詰めたところで敏本には逃げられてしまう。なんだかスッキリしない気持ちを抱えながらも、再起の目途はないとして二人は敏本の追跡を諦めるのだった。


・第二章「記録と記憶」

 前回の事件から数週間後。病院長に呼び出された先島は、病院に多額の研究費用を援助してくれたという毒島の元へ挨拶に行くよう命じられる。そこで約束した時間の前に毒島の応援演説の様子を見にいったところ、偶然そこに居合わせた姫宮に声を掛けられた。選挙でもテレビでもないどこかで、毒島の姿を見たことがあると話す姫宮。やがて演説を終えた毒島は姫島にも敏本の件でねぎらいの言葉をかけ、その場はお開きとなった。

その日の深夜、当直中の先島の耳に複数人の争う声が聞こえてくる。気になって様子を見に行った先島の目の前で、その内の一人が殺された。犯人達が立ち去ってから先島は「死責転嫁」を行おうとするが、直前に陽が上り実行は未遂に終わってしまう。悔いる先島は、遺体が持っていたであろう不自然に質の良い武器に目を止めた。そして数日後、姫宮の既視感の正体が暴力団の定例会だという事実が判明。それと同時期に大量の緊急搬送があったことを思い出した先島は、それらの関係性を探るべく当時行った「死責転嫁」の記録を紐解いていく。

 緊急搬送された人々は暴力団同士の抗争に巻き込まれており、毒島は当時から今もなおその資金源になっていたことが判明した。そこから芋づる式にでてきた他の罪状を抱え、二人は毒島の記者会見へと潜り込む。先島は終わったタイミングで待ち伏せするつもりだったものの、しびれをきらした姫宮は大勢のマスコミが生中継をしている前で証拠と共に糾弾を始めてしまった。仕方がないので参加する先島。しらばっくれていた毒島は次第に血相を変え、ついにはその場から逃げ出した。しかし会場の外はニュースを見て集まってきた追加のマスコミと野次馬で溢れ、掻き分けて逃げようにも人垣は厚く跳ね返されてしまう。遅れて出てきた先島と姫宮の前で、毒島は力なくその場に膝をついたのだった。


・第三章「正義の代償」

 毒島の失脚から数日後、自宅でくつろぐ先島のもとに警察署から電話がかかってきた。曰く、補導された姫宮が保護者として先島を指名したのだとか。仕方なく迎えに行った先島を出迎え、姫島もろとも雷を落としたのは署長である桝田だった。その帰り道、先島の携帯に銃撃事件の現場から応急処置を要請する電話が入る。病院に到着してすぐ息絶えた被害者は、救急車の中で姫島の兄貴分である暴力団組員の名前を口にした。桝田が容疑者としてその組員を確保する反面、「死責転嫁」によって蘇った被害者は全く違う犯人の名をあげる。翌日二人は警察署に直談判に行くが、犯人が死亡したため桝田は聞く耳を持たない。それどころか噓の証言をさせたと罪に問われてしまう。

 打開策を考える先島の元にヤンキー集団の一人が現れ、姫宮が一人で警察署に乗り込んでいったことを告げる。先島は慌てて追いかけるも、姫宮は既に数人の警察官を強行突破し、兄貴分に事情聴取中の桝田のところにまで辿り着いていた。怒りに任せ、兄貴分と先島の制止も聞かず桝田に詰め寄る姫宮。剣幕に圧され冷静さを失った桝田はついに拳銃を抜き、姫宮に向けて引き金を引いた。弾丸が命中し、姫宮は声もなくくずおれる。その場の全員が硬直する中、淡々と「死責転嫁」を行う先島。蘇った姫宮は跳ね返った自らの弾丸に撃ち抜かれた(ことになった)桝田の姿を見て、「もう少しで殺されるところだった」と安堵の笑みを見せたのだった。


・エピローグ

その日、先島の自宅には姫宮が上がりこんでいた。兄貴分の生還祝いをヤンキー仲間と開催すべく、その会場に選ばれていたのだ。姫宮を監視しつつ先島がふと新聞を手に取ると、そこには二人が制裁した三人の権力者たちが裏で繋がっていた旨の一面記事が。やはりああいうのはどこかで関係しているものなのだと納得し、先島は姫宮に呼ばれて生還祝いに参加する。逃亡した敏本の行方は未だ知れないままだった。

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