アナザーワールド 〜ようこそ、君の世界の裏側へ〜

クロスディアⅡ

第1話 プロローグ

第1話


「はぁはぁ………」


落ち着け、落ち着け私………


息をこんなに漏らしたら、に見つかってしまう!


「────よし、落ち着いた。」


息を整え、冷静になろうと努力する。


じゃないと、殺られてしまう。


『リコちゃん、何処に居るの〜?早く見つかった方が〜楽に死ねるよぉ〜?』


────声が近い。


見つかれば、間違いなく私は死んでしまうだろう。


どうして………


「どうして、こんな事に………」


☆☆☆


「どうして、どうして………」

「何寝惚けてんだ、お前?」


そんな声が聞こえた様な気がした瞬間………


「ひゃっ、痛い!?」


────頭に衝撃が走る。


まるで金槌で撃ち抜かれた様な痛みが頭部を支配し、悶絶してしまう。


まぁ、要するに………


「もう、何するんですか所長!?」

「おう、起きたか。バイト中なのに堂々と寝るとは良い度胸だな、彼岸花ひがんばな。」

「リコです!名前も呼べないんですか、中卒ヒモ所長!!!」


私の名前は彼岸花 リコ。


この建物、『私立怪魔専門事務所』でバイトをしている華の女子高生だ。


で、こんな私の華麗な頭を叩いたのが所長で雇い主の鵺崎ぬえざき 京介きょうすけ


何を思ったのかは教えて貰ってないが、中卒でこんな見た目オンボロ事務所の所長をしている人だ。


────ちなみに、1歳しか違わない。


「おい、中卒はやめろ!地味に気にしてる上に、俺への言ってはいけない言葉ランキングの3位なんだぞ!!」

「これで3位なんですか?ていうか、2位と1位は何なんですか?」

「2位が『一生養ってあげるよ』で、1位が『この紙に名前を書いて、僕と永久就職契約しようよ♪』だ。」

「うわぁ………」


この人、所長とは名ばかりみたいな物で、実質はとある令嬢(まだ会った事ない)のヒモをやってる様な物なのだ。


だから、会う度にそんな事を言われるのだとか。


でも、本人曰く………


『俺はアイツ一筋だ。例え、報われる事のない恋だとしても。』らしい。


────面倒だよね、この人。


「こういう所が無きゃ、カッコいい人なのになぁ………」

「何か言ったか、彼岸花?」

「リコです。────そういえば、さっき夢で所長と初めて出会った日の事を見たんですよ。」

「唐突な話題変換だな………で、それがどうしたんだ?」

「いやぁ、今思えば、アレは運命の出会いだったなって気分になって。」

「────俺には悪夢の出会いだったよ。」


どうやら、私と所長じゃ認識に齟齬があるみたい。


────でも、間違いなく私は断言できる。


あの夜は私にとって運命の出会い………


────そして、生涯記憶に残るであろう初夜なのだと。


続く

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