第387話 会議とかって苦手なんだよなぁ……

 パーティーをするような大部屋に招き入れられた。

 長テーブルに、豪華な貝殻の椅子が並べられている。


 俺がテーブルの端に座り、両サイドにアクアとソフィア。

 アクアはアマリアの隣の方が落ち着くらしく、その隣にアマリアが座っている。

 でも、何故か俺の服を掴んでいる。何なんだよ、子供か。


 いや、こいつは子供だったわ。

 ただ、戦闘しか知らない破壊神となってしまった、ただの子供。


 子供なこいつを、元の道に戻すのは大人の仕事。

 子供の将来は、大人が決めることだし。


「んじゃ、こういう会議っぽいのは苦手だが、さすがに真面目にやらんといけないと思うんで、真面目に会議を始めまーす」


 他の奴らは余っている椅子に座ったし、アンジュとアンジェロは空中に座っている。始められそうだな。


「では、司会のグレール………は、壊れているから、代理のアマリア君、お願いします」


 グレールにお願いしようとしたけど、椅子に座らず、出入り口付近でブツブツと何かを呟いていた。


 ちなみに、ロゼ姫とアルカは寝てもらっている。魔力が枯渇しているし、仕方がない。


 まぁ、それでグレールも道ずれになっているんだけどな。

 呟いている言葉を聞き取った時、俺の精神は底を尽きるから、もう放置。


 無理やり連れて来るんじゃなかったかなぁ~。

 話し合いになれば正気に戻ってくれると思っていたけど、予想よりロゼ姫への愛が深かった。


 隣に浮いているグラースは、今だに『にいさん可愛い』と目をハートにして見つめている。

 愛の深さは兄弟同じらしい、気にするのはやめようか。


「なんで、代理が僕なの?」

「ほれ、話を進めないと時間だけが過ぎていくぞ。あと、機嫌が悪くなる人もいて話が進めらんなくなる」


 ソフィアとか、もう限界近いしな。

 それはアマリアもわかっているらしく、ため息を吐きながらも話を進めてくれた。


「はぁ、もう、仕方がないなぁ……。それじゃ、まずフォーマメントで何があったのか。代表で知里、話して」

「あ、はい」


 結局、俺は話さなければならないらしい。

 しかも、司会の特権を利用して、強制的に。

 なんだよ、この爆弾ゲーム。


「なら、掻い摘んで話すわ。しっかりと聞いとけよ、二度も同じことは話さんからな」


 とはいえ、このメンバーだと、普通に一回で処理してくれるか。

 ここからは、本当に簡単にフォーマメントで起こった出来事を話した。


 イルドリ王との出会いや、ウズルイフ、クロとの戦闘。

 そのあと、ついでに地上へ降りてきた時のも簡単に話した。


 んでもって、アクアがどういう経緯でここに来たのかも。


「――――こんな感じだが、質問は受けつけない、以上」

「質問くらいは受付させて。色々聞きたい事があるから」

「ちっ」


 めんどくさ。


「まず、魔力は完全に戻ったっていう事でいいんだよね?」

「おう。ウズルイフが持っていた水晶玉に俺の魔力が込められていたらしい。それをグラースが見つけ、イルドリ王が壊してくれたら魔力が戻ってきた」

「それじゃ、精霊達はもう普通に魔法を出せるってこと? というか、生きてる?」

「――――あ」


 すっかり忘れてたな。

 そう言えばあの二人は、どうなったんだろうか。最近見ないな。


「おい、今は精霊とかどうでもいい。話を進めろ」

「そう言うという事は、ソフィアは何か質問があるの?」

「まず、そいつは本当に俺達に牙を向けないのか。今も、演じている可能性があるだろ。問題ないという根拠を見せろ」


 顎でアクアを指す。

 ソフィアは一度、アクアに殺されかけている。警戒するのも無理はないか。


「まぁ、信じていい要素は今のところないな。今までの行いも、許されるものではない」

「なら、さっさと捨てろ」

「捨てたら何をするかもっとわからんぞ。こいつ、自分で考えられない馬鹿だからな」


 アクアの頭をグリグリすると、「うー!!」と、俺の手を掴んで抵抗して来た。


 抵抗……てい……え?


「お前、抵抗、しているのか、それ」

「していますよぉ。離してください!!」


 グググッと、俺の手を押し返そうとしているけど、力が入ってない。

 いや、力は込められている。でも、弱すぎる。疲れているって事か?


「アクアの握力は、多分リヒトと同じくらいかそれ以上に弱いよ」

「…………お前、魔法を使わなかったら女より弱いんだな」

「酷いですねぇ~。その、女より弱い私に手間取っていたのはどこの男ですかぁ~??」


 うっわ、いやみったらしいな、こいつ。

 もっと、純粋でいれよ。お前は、純粋が売りだろうが。


「まぁ、アクアを放り出すのは少し不安が残る。それなら、目の届く範囲にいてくれた方が対処が出来るし、楽だ。それに、アクアの命もそこまで長くはないだろう。クロヌが魔力を送り込まなければアクアは自然と死ぬし、それまでの辛抱だ」


 アマリアと同じく俺に接続する方法もあるが、さすがに余裕はない。

 戦闘がなく、生き長らせるだけならいいが、それだけじゃないしな。


「あ、その話なんだけど、アクアだけ特別扱いされていてさ。僕に埋め込まれていた魔石とは異なる特別なものを埋め込まれていたんだ」

「…………と、いうと?」

「アクアの魔力は知里と同じでチート級。心臓代わりの魔石さえ体に埋め込むことが出来れば、アクア自身の魔力で生きる事は可能なんだよね。これだけ言えば、わかるかな」


 あーなるほど。

 それはつまり……。


「アクアはクロヌとの繋がりが元々無く、管理者を出たとしても、命に別状はないという事か」

「そういう事。アクアなら自分を裏切らないと思っていたみたいだね。過信していて面白い」


 全然笑っていないみたいだけど??

 アマリアよ、そこはもっと早くに言おうな?

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