星空に誓う
まれ
一番星
☆1 冬休みのはじまり
俺、
改めて、甘乃新汰、美空高校に通う高校二年生だ。
と言っても、今は冬休みなので学校はない。
机の上にある携帯が震える。
「もしもし」
『おっす、新汰。今何やってる?』
「課題だけど」
『真面目かよー。冬休みなんて気休め程度の二週間しかねーのに課題とかもったいないだろ』
「お前、夏休みの宿題は?」
『残り一日にやるタイプ』
俺は溜息が出た。
コイツは
俺は普段は陰キャというかコミュ障だからあまり人としゃべってこなかった。
でもコイツは違った。バカでアホなやつだが一緒にいてそれなりに楽しいと思える。
「で?何?」
『で?』
「なんか用があってかけてきたんじゃないのか?」
『あー、そうだそうだ。新汰、彼女になってくれないか?』
「…切るぞ」
『あぁ、待っ―』
俺は紫苑の言葉を待たず、すぐに電話を切った。すると、また電話がかかってきた。仕方ないので出てやることにした。
『ごめんごめん。冗談だって。新汰さ、31日の夜空いてるか?』
「その日は家族と過ごしてるよ」
『なら、行けるよな、初詣。どうせ友達と行ったことないだろ』
そうだけど。この言葉は紫苑には言わなかった。理由はなんか癪だったから。
『とりあえず決定な。時間は(午後)11時。いつもの場所で』
そう言って紫苑は一方的に電話を切った。訊きたいことがまだあったのだが、また連絡すればいいか。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
「おっす、来たな新汰」
初詣に行く集合時間数分前。いつもの集合場所。住宅街の中にある空き地みたいな広場を俺と紫苑は集合場所にしている。
「あぁ」
コミュ障な俺は紫苑と違って、そんな言葉しか出なかった。そう言ったあとはしばらく沈黙の時間になった。紫苑はスマホの画面を見続けているままだ。
「あれ、紫苑行かないの?」
「んあ?言ってなかったっけ?
全く聞いてないよ。それ。
柚子というのは、紫苑の幼馴染の女子。
今にも雪が降りそうなほど寒いというのに外に男二人で会話もせず女の子を待ち続けていた。会話がないのは仲が悪いとかじゃなくて喋るのが苦手な俺を紫苑が気遣っているんだと思っている。
集合して十分ほど経ってようやくその柚子とやらが来た。
「ごめーん待った?」
「いや…」
「めっちゃ、待った。おせーよ、お前」
俺がいや、全然待ってないって言うあのテンプレを言う前に俺の言葉を紫苑は遮って言った。なんか険悪ムードに初っ端からなったんだけど。とはいえ、それなりにいつものことなので心配ないかもしれないが。
「ねぇ、そろそろ行かない?」
後ろで言い合っている二人に催促をした。すると、柚子がすぐに反応した。
「ごめんね。このバカが」
「だぁれがバカだって?」
「紫苑が」
「こんにゃろー」
また始まったよ。本当にそろそろ行かない?
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
集合場所から近くの神社までめちゃくちゃ近くすぐについた。
長い参道にはたくさんの出店がある。さまざまな種類・味のポテトにフランクフルト、じゃがバター、マグロ串に高級和牛の牛串。あ、タコせんもある。俺は出店に見惚れていた。見惚れすぎてゆっくりゆっくり歩いていたんだと思う。二人を見失ってしまった。見渡してみるが周りの人がたくさんいるせいで全くわからない。背伸びをしてもあまり効果はなかった。とりあえず、道のはずれにはけることにした。
「はあ。早々に二人とはぐれてしまったな」
壁にもたれながら、そんなことを一人ごちる。とりあえず、紫苑に連絡でもするか。するとすぐに紫苑から返信がきた。大体の場所だけ聞いてそこにいろとのことだった。きゃーかっこいい、王子様みたーいなんて。あほらしっ。
ふと、自分に近づく人影があった。なんだ、早かったじゃねぇかと思って顔を上げた。そこには、茶髪ロングの女の子が着物姿で立っていた。
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