第4話

魔道具屋に行ってから、一ヶ月ほどが経った。

あれから何回か街に出たがやはり、そう簡単には見つからなかった。


そして最近、屋敷が慌ただしい。

何かあったようだが、その何はわからない。

まああまり気にしなくてもいいだろうと思い、いつも通り家の掃除や庭の花壇の世話などをしていた。

この家はお金が無いため、使用人が少なく仕事も全然しないため、その変わりに僕が使用人のような仕事をしている。


僕は仕事を終わらせて、いつも通り部屋に戻る。


「あれ?アメジスさん?」


いつもはいるはずのアメジスさんが部屋にいなかった。

もしかして、僕がいない間に連れてかれちゃったのかな。

少しムッとしていると、なにやら部屋の外が騒がしい。

少し気になり、聞き耳を立ててみると、どうやら父が騒いでいるようだった。

だが、どうにも様子がおかしい。

なにか慌てているような、そんな声が聞こえた。


なんだろうと思っていると、この部屋に足音が近づいてきている。

そしてばんっと乱暴に扉が開けられる。


「こんなところにいたのか!サフィニア!」


どうやら父は僕を探していたらしい。


「手間かけさせやがって。さっさと行くぞ!」


腕を引っ張られ、無理やり立たされる。


「ちょっと、離して!」


「うるさい!黙ってついてこい!」


そのまま父に引きづられて屋敷の外に出された。

無理やり袋のようなものを被せられ、手足を縛られる。

そして、外に止まっていた馬車に詰め込まれた。

何が起きているのか全然理解できないが、確実にいいことではない。

すると馬車の外から声が聞こえてきた。


「これで借金をちゃらにしてくれるんだろうな!?」


「あぁ、旦那様はそう仰っている。」


「そうか!ならさっさとあんなもの連れて行け!」


「..では失礼する。」


少しすると馬車が動き出す。

僕もしかして、借金返済のために父に売られた?

まさか父がそんなことまでするとは思わなかった。

早く逃げ出さないと、このままじゃあ絶対にまずい。

でも、手足を縛られていて身動きが取れない。


僕が脱出方法で悩んでいると、馬車が止まった。

どうしよう、まだ拘束がとれてないのに。

馬車が開き、僕は担がれて運ばれた。

目的地についたのか、僕は乱暴に床に落とされた。

被らされていた袋をとられるとそのまま扉が閉じられた。


僕はあたりを見回してみると、誰もいないようだ。

部屋の中は、拷問器具のようなものが大量に置かれており、明らかにやばい雰囲気だ。

這いずって近くに刃物が落ちていたので手に取り、縄が切れないかと試す。

なかなか縄は切れなくて苦戦していると、扉が開かれた。


「ほう、本当に黒色ではないか。」


部屋に入ってきたのは、小太りのおじさんだった。

きっとこの人が旦那様なんだろう。

こんな部屋がある家の主人なんてまともなわけがない。

早く縄を切らなきゃ。


「本物ではなくとも、最近玩具が壊れたところで新しいものが欲しいと思っていたが、これは報酬を倍にしても良さそうだな。」


そう言いながら、器具をガチャガチャと弄り出した。

まさかあれを僕に使おうとしているのか....?

本当に早く逃げなきゃ、殺される....!

そしてついに、足の縄が切れた。

それと同時に、男がこちらに沢山の器具を持ってやってくる。

僕は急いで立ち上がり、男に体当たりして扉の方へ向かった。


「なっ!待て!」


その声に僕は振り向かずに全力で走る。

手の縄は切られていないため、少し走りづらいがそんなことを言っている場合じゃない。

部屋の外は牢屋のようなものがあり、人が沢山積まれているのが見える。

臭いも酷く、吐きそうになりながらもとにかく走る。

階段見つけたため、上がってみると倉庫のような場所に出た。

外の様子を見て、誰もいないことを確認すると部屋の外に出る。

そしてまた走りだし、屋敷の外へ向かう。


「なっ!おい。あれ!」


途中で使用人に見つかってしまった。


「おい!旦那様の玩具が逃げ出したぞ!」


そんな声を後ろで聞き、やっと外への扉を見つけ外に出る。


どこに行くでもなく、走り続けていると街の近くに来た。

助けを求めようと思ったところで、周りの反応で自分の見た目を思い出した。


「ねえ、あれって..。」


「魔王と同じ色じゃねえか....!」


「やだ、こっちみた。」


「あれ、大丈夫か?今のうちに倒しといた方がいいんじゃないか?」


「でも、何されるかわかんないぞ。」


そんな声が聞こえて、僕はここにいるのもまずいと思い、人気のなさそうな場所に向かった。


「あ、逃げたぞ!」


「急いで追え!」


追っ手が増えてしまった。

僕は、人気のないところまで走り、少し速度を落とす。

後ろを確認しながら走っていると、路地裏の近くで突然腕を掴まれる。

そのまま路地裏の方へ引っ張られてしまった。

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