祓い篇

第9話 媛首神社由緒


当社は、文禄四年に創建されたと口伝され、紀州和歌山の神主が、諸国行脚の途中でこの地に足を留めて祭祀したと伝えられています。

媛首の名前の由来は姫首とされ、これは当時太田城に住んでいた姫君の首を意味しています。この当時、太田城では豊臣家と徳川家への恭順をめぐり内紛が起きており、政争に敗れた姫君はその首を斬首されたのち塚に埋められたのです。その後、通りかかった神主が夢の中で自身の不遇を嘆く姫の姿を見て憐れみ、魂を癒すため建立したとされております。


嘘です。


本当は政争なんてありませんでした。

側室である小宮川の姫を好いた城主太田左四郎が、正室の姫を煙たがった末、冤罪をかけて斬首したのです。

姫は今もなお恨んでいます。この境遇を与えた二人の血も、自身を追い込んだ他の全ても、長い長い年月の経った今でも憎んでいます。

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