第3話 羽南高校 オカルト研究部 調査報告
今回はオカ研設立十周年を記念して、初心に立ち返り、我が校に伝わる七不思議を調査してみることとする。
七不思議と言えばトイレの花子さんだとか、増える階段だとか、そういうのが小学校にあったという生徒諸君も多いだろう。実は、かの七不思議と言う文化は、我らが羽南高校にも根付いているのだ。我々は今一度それらの不思議を調査した! 今や失われかけた文化の継承を、本発表にて目指そうと思う。
七不思議の一、水子の影
今は使われていない旧校舎に出現するという怪異。旧校舎一階の小使室の囲炉裏端に、下校時刻になると丁度夕日が差し込む。その時に、誰もいないはずの部屋に幾人かの子供の影が浮かび上がるという。今は使われていない校舎のため目撃者は少ないものの、直近ではテニス部の西谷正則部長と図書委員の林玲奈女史がその怪異を目にしている。夕方に出現するのはやはり逢魔時ゆえだろうか。怪異の起源として有力なのは、五十年前のとある教員である。仲を噂された男女二人の教員がおり、その二人が堕胎した子供の影が、小使室に現れるのだという。
七不思議の二、アオボウズ
これもまた夕方に出現する怪異である。北校舎三階の男子便所の一か所に入ると、青い顔をした坊主頭の化け物が便器の中から顔を半分だけ出して、大きな目で睨んでくるというのだ。その由来は、北校舎のトイレ付近は昔処刑場であり、そこで首を斬られた男が霊として現れているというのがもっとも有力だ。
七不思議の三、くびおれ女
中央校舎の屋上に向かう階段の踊り場に出現する怪異だ。中央校舎屋上は昔出入り自由であり、今のようなフェンスもなかった。そうした時代に何かしらの要因で屋上から落下し、首の骨を折った学生がいたという。首が不自然に曲がっているくびおれ女は、その学生の幽霊なのだろうか。ちなみに校長先生に聞いてみたが、落下事件の記録はないという。
七不思議の四、ばびりか
体育館の倉庫に現れるという怪異だ。生徒が一人で倉庫に入ると扉を勝手に締め鍵をかけて閉じ込める。鍵を開けるには素早く「 」と言えばいいとされる。起源は不明で、名前と行動、対処法のみしか伝わっていない。しかし対処法が伝わっているなら安心と言えよう。
七不思議の五、媛首神社
これは学校の敷地の外にある怪異だ。高校の裏門を出てすぐの十字路を右折し五メートル先右手に小さな鳥居がある。その鳥居をくぐり階段を上ると、媛首神社に辿り着く。宮司もおらず、殆ど管理されていない神社だが、では何故この神社が怪異とされるのかと言えば、それは真夜中にやってくる『白い幽霊』のせいである。この『白い幽霊』は夜になると境内に出現し歩き回る怪異で、その名の通り真っ白。ふらふらと歩く謎の存在だ。害があるのかは不明だが、肝試しをしていたら『白い幽霊』を見たという生徒の大半が、何らかの要因で転校している。不思議である。また、媛首神社の方もある種のマヨイガ的怪異であり、鳥居の先をいくら進んでも神社なんてなかったという話もあるようだ。どちらもその由来は今のところ不明である。
七不思議の六、人食い鏡
北校舎の二階と三階を繋ぐ踊り場には大きな鏡がある。これは卒業生の彫刻家が寄贈したものとのことで、非常に立派なものだ。だがこれもまた七不思議に数えられる怪異なのだ。珍しいことに、発動するのは日中。四限の授業を受けている時間である。この時間にこの鏡の前を通ると、体を吸い込まれてしまうという話だ。とはいえこれは流石に作り話だろう。鏡の制作者は我が校卒業生の一一(ひとつい)氏で、『ひとつい』という名前の響きが『ひとくい』に変形したと見るべきだ。そういえば先日の昼休みに、この鏡の前で財布が落ちているのを見つけた。大方、落とし物ではなく、持ち主をおびき寄せようとしかけた罠であり、この高校にいじめが存在する証だろう。まったく怪異をいじめに使うなど、許せないことである。財布は責任を以て職員室へ届けた。持ち主に無事帰ることを祈るばかりだ。
七不思議の七、
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