第25話

 少女の方へと駆け抜ける悪魔。

 その速度は少し、遅い。

 まるで僕が少女の助けに入るのを待っているかのようだ。


「クソがッ!」

 

 僕は罠だとわかりながらも少女の方へと移動する。

 悪魔に全神経を集中させていたせいで全然少女に気づけなかったッ!


「アリスゥ!!!受け止めろッ!!!」

 

 僕は涙を流す少女の涙をぬぐい、安心させるように微笑んだ後にアリスの方へと優しくぶん投げる。

 

「……ッ!」

 

 後は僕がここから悪魔の攻撃に少しでも受け身を……ッ。


「繧?▲縺ア繧贋ココ髢薙?逕倥>繧上?」

 

 僕へと近寄ってくる悪魔の左腕は怪しげな紫色に光り輝いていた。


「まっず……ッ!!!」


 ここでそれを……ッ!いや、ここしかないかッ!?

 

「避けられッ!?」

 

 悪魔の左腕が強引にでも回避しようとしていた僕の腹に当たる。


「邨ゅo繧翫h繧」

 

 僕のHPが紫色の光に触れるだけで吹き飛び……僕の体も宙へと飛ばされて家屋へと叩きつけられる。


「ガハッ」

 

 HPがない状態で家屋へと叩きつけられた僕の体は悲鳴を上げ、血が噴き出す。

 ミノタウロスと戦った時のような激痛が僕の体に走り、視界が真っ赤に染まっていく。

 

 懐かしい……。

 僕の側には仲間がいて、守るべき人たちがいて……相手はミノタウロスのような敵とは違って僕との力関係が絶妙な相手。


 すべてを諦める前も、こんなことがあった。

 誰かを助け、自分の僅かなHPが消し飛び、血だらけになりながら戦ったことが……そんなことが幾度もあった。

 守るもののすべてを失って、最後にお姉ちゃんだけが残って……あぁ、でも今の僕は誰かを助けてこんなところに激痛に苛まれながら倒れている。


「ひひひ……」

 

 僕は笑みを浮かべながら、ゆっくりと立ち上がった。


「窶ヲ窶ヲ縺?◎縺ァ縺励g?」


「まだ終わらない」


 実に懐かしく、良い気分だ。

 

「勝負はここからだよ?」


 僕は己の血に染まった刀を振り、構えた。

 

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