第1話

 時が経つのは自分の想像以上に速い。

 亀のようにノロノロと進んでいるように思っていたら、いつの間にかチーターのように駆け抜けていく。

 

「ふわぁ……」

 

 異世界転生。

 僕が前世で生きていた地球で死に、異世界に……前世の自分がプレイしていたエロゲ『最果てのダンジョン』……敗戦国の成れの果て、エロゲは真実より奇なり、スターリン超え、鬼畜の王、人間の考えることじゃないレベル100、制作陣が鬼畜エロゲを覗くとき、鬼畜エロゲもまた目を逸らしているなど、好き放題言われているような鬼畜エロゲの世界に転生してから既に12年。

 

 転生したばかりの頃は何事にも心惹かれ、時が経つのがものすごく遅いように感じていた頃はどこへやら。

 今の僕は既にこの世界に馴染み、エロゲの世界に生きる民として健やかに生きていた。

 

 鬼畜エロゲの世界で健やかに……?と思う人がいるかもしれない。

 しかし、僕が転生したのはメインストーリーに絡むことのないゲームでは名前も姿も出てこないモブキャラ。

 主人公サイドのメインストーリーでは尊厳破壊の鬼畜エロゲストーリーが展開されているだろうが、ただの一般人がこの世界に生きる分にはそこまで鬼畜エロゲの魔の手にかかることはないのだ。

 せいぜい魔物の孕み袋になる可能性があるくらい……『最果てのダンジョン』のBADENDの中だと魔物の孕み袋が最も人道的で素晴らしい結末だと言われているので、魔物の孕み袋になる可能性くらい何ともないよね!


「だ、ダンジョンの入場ですね……承りました」


「うん。ありがとう」

 

 異世界では定番とも言える冒険者ギルドによって管理されているダンジョンの中に僕は入り、体を伸ばす。

 ハイファンタジーの世界観である『最果てのダンジョン』では名前の通りダンジョンが存在し、僕はそのダンジョンに潜り、そこから採れる鉱石や魔晶石を売って生計を立てている。

 

「今日も今日とて頑張りますか」

 

 ダンジョンに潜るのに必要な冒険者の資格……それを史上最少年10歳で獲得してから毎日ダンジョンに潜っている僕。

 ゲームのようにステータスが存在している世界で。

 自分がやりこんだゲームの世界で。

 エロ要素よりもダンジョンで戦うRPG要素が好きだった僕がこの世界でやることなどたった一つ。

 

 かつて前世で僕が『最果てのダンジョン』プレイヤーの中で頂点に立った時のように、世界最強になること。

 

 エロ要素よりも鬱要素の遥かに多いメインストーリーなんかに関わることなくこの世界で最強になる。

 それが今世における僕の生きる目的だった。

 

 

 

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