第2話

遊園地からの帰り道にあるダイナーで三人は昼食をとっていた。

あぐりと大口を開けて分厚いハンバーガーを食べてしまっヒエラルの向かいで、ジュドーが下手くそな手つきでホットケーキを食べている。

「おいしー」

蜂蜜で口元を汚したジュドーがにぱりと笑うと、隣でミートソーススパゲッティをつついていたレオナルドが口元を拭いてやる。

「あーかわいい、かわいい」

ぐりぐりと頭を撫でると照れたように俯く。

「なでられたの、はじめて」

えへへと笑ってホットケーキを頬張るジュドーだ。

「虐待されてたのかな」

その様子を見たレオナルドの言葉に、ヒエラルがソースのついた親指をぺろりと舐めて答える。

「体裁を気にする奴みたいだな。痣もないし痩せてない」

「隠れネグレクトってやつかね」

「おそらくな」

食事の終わったヒエラルがスマホを取り出しスイスイと指で操作していく。

「まあ手続きもろもろは後でまとめてやるとして、まずは買い物だな」

「ああ、色々揃えなきゃか」

くるりとフォークにスパゲッティを絡ませながら、レオナルドは楽しくなりそうと呟いた。

食事を終えてダイナーを出たあと、その足で三人はアーケード街へと向かった。

下着や靴下を買い、靴屋に行ったあと洋服を手当たり次第に買っていく。

ショップ袋でずしりと重くなったが、まだ買うつもりのレオナルドは鼻歌を歌いながらジュドーと手を繋いで歩いている。

おもちゃ屋の前を通ったところで、ヒエラルが立ち止まった。

「どした、ヒエラル」

「おもちゃも必要じゃないか?うちにはジュドーの好きそうなものはないぞ」

ヒエラルの言葉におそ松は目をまたたいた。

「おもちゃなら家にいっぱいあるじゃん」

「お前のピエロだとかマリオネットだとかのガラクタか?」

ヒエラルが半眼を向けると、レオナルドは唇を尖らせた。

「アンティークって言えよ」

結局なんだかんだ言っておもちゃ屋でも買い物をした。

さて帰るかと駐車場の車に荷物を積んだところで。

「あ、煙草」

切れていた嗜好品の事を思い出すが。

「まあジュドーがいるから禁煙だな」

ヒエラルの苦笑した声に、だよねーとレオナルドが答える。

「うーん、まあ仕方ないか」

この国の成人は十八歳だから、二人はまだ煙草を吸える年齢ではないのだけれど。

なでなでとジュドーの前髪を撫でやり車の後部座席に乗せると、自分も助手席へとレオナルドは乗り込んだ。

ヒエラルも運転席に乗り込みエンジンを吹かせて駐車場を出て走り出す。

「今度からチョロ松がいるから料理しないとな」

上手くいくかなあと眉を下げたレオナルドに、ヒエラルも似たような表情を浮かべた。

「材料は上手く切れるんだがなあ」

「ほんとほんと」

にやりと笑いながらヒエラルが。

「それに掃除もな」

「洗濯もな」

「頑張れよ」

「そっちこそ」

ぽんぽんと会話を進めていく。

その会話を聞いていたジュドーがふんすと拳を握った。

「ぼくもがんばる」

「えージュドー手伝ってくれるの?っと、アビーちゃんからだ」

ジュドーの言葉にデレデレとしていたが、軽快に鳴った音楽にレオナルドはポケットからスマホを取り出し耳に当てた。

「やっほー俺のお花ちゃん、仕事?あれ、それって俺らに依頼してきた奴じゃん。へえーそうなんだ、了解。んじゃね」

スマホをタップして通話を終えたレオナルドが。

「お仕事一件入りました~」

「了解」

のんびり告げると、ヒエラルが頷いた。

そのまま車が古いビルにたどり着くと、レオナルドが後部座席を振り返った。

「ようこそジュドー、俺らの家に」

「古いが中は広いぞ、今日からお前の家だ」

二人の言葉にジュドーは窓に手をついて二階建てのビルを見上げる。

「きょうからぼくの、おうち……」

どこかキラキラした目のジュドーに笑みを浮かべると、兄二人は声を揃えた。

「さあ、楽しい生活の始まりだ」

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