風景画

やがて真っ白な霧も、フワーッと晴れ渡って、また前と同じように、丘陵の景色と、みんなの走ってる姿も、見えるようになってきた。

「うわ~、なんだったんだ~?今の白い霧は~?ボク1人で、白い霧の中に包まれていたみたいだな~」

そう思いながら、また走りはじめた。

近くで、ちっちゃな可愛いリスも、ボクといっしょに、しばらく走ってた。

「あれ~?確か、写生しに行った時にも、いたようなリスだな~。同じリスなのかな?」


ボクは、そのまま走り続けてゴールして、それからバスに乗って、クラスのみんなと小学校に帰った。


教室に入ったら、ボクの横の、いつも空いてるスペースに、なぜか、新しい机とイス、置かれてあった。

「先生~!なんでかわからないですけど、ボクの席の横に、机とイス、置いてありますよ~」

って先生に言った。


「じゃあ、あやめっち、使ってない机とかを置いてある教室わかるでしょ。そこまで持っていってくれない?なんで、新しい机、置いてあるのかしらね~。遠足の間、誰か使ってたのかしら?」

って先生に言われた。

「ハ~イ」

って言って、机とイスをちょっとだけ離れた教室まで運んだ。


なんでか、よくわからないけど、見てると、ちょっと懐かしいような気持ちになってくる机とイスだった。


誰かと競いあっていたような...何か2人の好きなことで、競いあっていたような...いっしょに仲良く何かをやっていたような...そんな人の存在していたような...そんな感じのしてくる机。


「なんでボクの横に置いてあったのかな?誰か使ってたのかな?変なの...」

って思いながら、ボクの教室に戻った。


教室で先生に

「あやめっち、写生の時に描いた風景画、小学生絵画コンクールで、2枚とも入選したよ~」

って言われた。

「2枚描いたっけ?」

って思って、2枚の絵を観てみた。


先生は

「同じ場所から描いた風景画なんだけど、微妙に絵のタッチを変えて描いたから、2枚とも入選したのかもね~」

って言ってる。

「う~ん、これ2枚ともボク描いたんだっけ?」

って思った。

「マラソン大会の時、ボクの横で、ボクといっしょに走ってたリス。絵で、そのリスのこと、ボクやっぱり描いていたみたいだな~」


次の日の朝、教室に可愛い女の子の転校生やって来た。

栗林葉ちゃん。


「あやめっち、昨日片付けた机とイスをもう1回持って来てくれる?」

って先生に言われて

「ハ~イ」

って言って、ボクの席の横に、また運んできた。

「ありがとう~」

って言って、葉ちゃんはボクに微笑んでくれた...


ボクは栗林葉ちゃんと、前にも、どこかで会ってたような気になってきて、ちょっと恥ずかしくてポッと紅くなってしまった。

小学校の周辺の木々の、秋の紅葉みたいに、紅く染まってしまったみたい...


学校の帰りに葉ちゃんと紅葉の木々の道を歩いていた。

途中で妹に出会った。

3人で歩いてたら

「あーっ、あやめっち、見て~!あの月!」

葉ちゃんは、東のほうから登ってた月を指さした。

「うわっ!小学校を出た時はきれいな満月だったのに~」

半分ほど月食になった月。


3人で、しばらく土手に座って、空の月を眺めていた。

そのうち皆既月食になった。

めっちゃ幻想的。赤茶色になった満月。


そして天王星食も。

「同時に見るのって久しぶり」

って葉ちゃんも言ってる。

3人のそばに、可愛いリスやって来た。


真っ白い霧、急に立ち込めてきた。3人とリスを包みこんだ。


「うわっ!なんだなんだ?葉ちゃんライオンになっちゃった?」

リスと遊んでいた妹もびっくり。

葉ちゃんは羽のはえた獅子に変身していた。

「これで最後かな?」

獅子の葉ちゃんは言った。そして霧の中を飛び上がった。

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