ことり。

あしゃる

ことり。

ことり。

音を立てて、櫛を置く。

そのまま次の行動に移ろうとして、動きを止めた。

困ったな、何をするんだったけ。すっかり次の行動を忘れてしまった。

こういう時は、前の状況を振り返るに限る。


____確か、私は櫛で髪をといていた。いや、櫛を使うから当たり前か。今日は◯◯と会う日だから、精一杯身なりを整えようとしていた。それで、それで、私は。


「◯◯はもう、______。」

 昨日、◯◯の母親に電話越しにそのことを言われたのを、思い出して、息が苦しくなって。


__ああ、そっか。だから私は、櫛を置いたんだ。だから、鏡の向こうにいる顔は、涙でぐちゃぐちゃなんだ。

…こんなに大事なこと、忘れてたなんて。よっぽど、信じたくなかったんだろうな。いや、今でも信じたくない。でも、伝えなきゃ。


 スマホを手に取り、◯◯とのトーク画面を開く。私はそこに向けて、一つのメッセージを送った。

 ”バイバイ、◯◯。大好きだよ。”


 もう二度と、◯◯からは既読はつかない。

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ことり。 あしゃる @ashal6

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