46:新しい婚約者

 



「…………は?」

 突然実家に呼び戻されたマルツィオは、父親の言っている事が直ぐには理解出来なかった。

 目の前の父親も、困惑顔である。

「断る理由も無いのだが……お前の意思を尊重しようと、努力はする……かもしれない」

 要は、断る気は無いという事だろう。

 正確には、断る事は出来ない、だろうか。


 リディオの実家、ポルカーリ伯爵家には、アンドレオッティ子爵家からマルツィオへ、婚約の申込みが来ていた。

 いや、まだ打診程度なのだが、ポルカーリ伯爵家から見れば王命に等しい。



「良い話だな!三男のマルツィオには婿入り先が決まって無かったし!」

「そうだよね!羨ましいよ」

「えっと……可愛いんだよね?その子」

 段々と家族の説得がおざなりになってきた。

「もう良いじゃない。マルツィオ、貴方はアンドレオッティ子爵家に婿入りしなさいね」

 とうとう母親は、マルツィオの意見を聞く事さえ止めてしまった。


「別に断る気は無いけど……」

 マルツィオの言葉に、家族は諸手を上げて喜んだ。

 さといマルツィオは、病室での授業は婿入りの為の審査だったのだろうと気が付いた。



 それから1ヶ月も経たず、マルツィオとジュリアの婚約が正式に発表された。

 結婚は、ジュリアが学園を卒業して直ぐに行われるという。

 余りの早さに当のマルツィオが驚いていると、ジュリアが「商売人の勘です。長引かせるだけ無駄」と良い笑顔で言い切った。


 それだけ自分への評価が高いのだと、マルツィオは無理矢理納得した。


 余談だが、前婚約者のリディオとの結婚の話は、一切決まっていなかった。

 ジュリアが相手に不信感を持っていたので、ドメニコからいくら話をされても、首を縦に振らなかったのだ。

 やはり商売人の勘というのは、有るのかもしれない。



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