16:翌日の学園

 



 ジュリアの誕生日パーティーの翌日、学園は妙に浮足立っていた。

 主にアンドレオッティ子爵家のパーティーに出席した面子である。


「昨日発表されなかったって事は、婚約者は居ないんだよな」

「アンドレオッティ大財閥とか関係無く、婚約者になりたい。可愛い」

「側にずっといたビビアナ嬢、良いよな」

「俺はクラウディア嬢のが好みだ」


 どこのクラスでも、男子生徒は同じような話をしている。

 それを聞いて女子が嫌な顔をしているかというと、そうではなかった。


「クラウディア様、素敵でした」

「ビビアナ様もですわ。お姉様とお呼びしたい」

「ジュリア様も、妖精のようにお可愛いらしくて。ギュッて抱きしめたいです」

「あのドレスに使われた布は、遠い国の特産品なんですって」

「来月から、アンドレオッティ系列のお店で取り扱いが始まるそうですよ」


 女子は女子で、やはり盛り上がっていた。

 そして参加しなかった女子が話に加わり、昨日パーティーの様子を聞き、更に盛り上がる。

 だから学園全体が浮足立っていたのだ。



「何か今日は、落ち着かない雰囲気ですわね」

 ジュリアが首を傾げる。

 他のクラスからクラスメートを訪ねて来る生徒が妙に多いのだ。

 しかもあまり親しくないのか「○○で会った△△だけど、覚えてる?」なんて会話がクラスのあちこちでされていた。


「妖精姫を見たいのでしょうね」

 ウフフ、とクラウディアが笑うが、実はこっそりと、ジュリアを皆から隠すようにしている。

「なぜかうちにも、昨日の時点で婚約の申込みが何件かあったそうだよ」

 ビビアナがウンザリした顔をする。


「ビビアナ様は、炎の精霊みたいで、とても美しかったですものね!」

 ジュリアの素直な褒め言葉に、ビビアナもまんざらではないようで、嬉しそうに笑う。

「クラウディア様は水の精霊みたいでしたし、私の予想以上に素敵でしたわ」

 クラウディアも褒められて、頬を染める。


「私はお二人のようにはなれないので、可愛い路線にしなさいと母に言われましたの。でも可愛いとか綺麗って周りが思う事ですよね」

 おかしなお母様、とコロコロと笑うジュリアは、本気でそう思っている。

「天然最強説」

 ビビアナが呟く。

「しかも色んな意味で世界一ですわよ」

 クラウディアもビビアナにだけ聞こえるように、返事をした。




「アンドレオッティ」

「ジュリア」

 聞き覚えのある名前が、そこかしこで噂されていた。

 その声音が好意的な響きで有る事に、リディオは気分を良くする。

 しかし話に加わろうとすると、サァーと蜘蛛の子を散らすように、皆が居なくなってしまうのだ。


 その為に、詳しい話の内容を知る事は出来無い。

 昨日、何かが有った事は理解していた。

 何せ学園内の生徒が半分以上居なかったのだから。

 それとジュリアの関係は、理解出来ていなかった。

 別の事だと思い込んでいたのだ。

 なぜなら、アンドレオッティは、貧乏な子爵家なのだから。



 に内緒で、何かをやったらしい。

 貧乏な子爵家のくせに、生意気な!

 ジュリアから説明してくるまで、絶対に聞いてなどやらない。

 リディオは意地になっていた。



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