09:婚約者との遭遇 sideジュリア

 



 学園に入学して初めて、婚約者のリディオ様に遭遇しました。

 食堂を出た後、予定があるビビアナ様とクラウディア様と分かれて、教室に戻ろうとしたところで後ろから声を掛けられたのです。


「おい!お前!何恥ずかしい事してんだよ!」


 これで自分が呼ばれたとすぐに気付く方が居たら、その方は特殊な能力を待っている方だと思います。

 私も、まさか自分の事だとは思いませんでしたから、気付かずに歩き続けました。


「聞いてんのかよ!貧乏人!!無視してんじゃねえよ!」


 後ろから強い力で腕を掴まれて、自分の事を呼んでいたのだと知りました。

 今回も腕を掴まれなかったら、自分だとは気付かなかったと思います。

 アンドレオッティ子爵家の私を「貧乏人」と呼ぶなんて、普通に考えてありえませんからね。



「サンテデスキ伯爵令息、お久しぶりです」

 私は掴まれた腕に視線を向けながら、ご挨拶をしました。

 早く離して欲しかったからです。

 顔合わせから半年。まともに顔も合わせていないのに、いきなり腕を掴むとは、婚約者だとしてもありえません。


 しかしそれがかえって彼の気に障ったようです。

「こっちに来い!」

 掴んだ腕を離すどころか、強く引かれてしまいました。

 ホンの数メートルですが、無理矢理歩かされました。

 角を曲がった所で、突き飛ばすように腕を離されました。


「お前!いくら貧乏だからって、食堂で他の生徒にたかってんじゃねえよ!」


 この方は何を言っているのでしょう?

 普段はともかく食堂の味の確認の際は、私が全てお支払いしております。

 必要経費ですので、父も了承済です。

 普段はそれぞれの家からお昼を持参しますので、払いようもないのですけれどね。



 あの食堂は、主に寮生活をしている生徒の為にあるようなものです。

 私達のように自宅から通学している生徒は、主にサロンで持参した昼食を食べるのです。


「そんなに貧乏なら、昼飯くらい我慢しろ!貴族としての誇りも無いのか?お前は。他人に寄生してんじゃねえよ。次に見掛けたら、食堂から追い出すからな!」


 何様なのでしょうか?この方は。



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