07:入学式当日 sideリディオ

 



 起きたら、昼近かった。

 同室だったマルツィオが部屋を出ていき、朝起こしてくれる人間が居なくなった。

 今日は新入生の入学式だったか?

 親父に婚約者をエスコートするように言われていたが、寝坊したのだから仕方ないよな。

 迎えの馬車が来ていたはずだが、さすがにもう伯爵邸に帰っただろう。


 どうせ相手はたかが子爵家だ。

 文句を言ってきたところで、爵位はこちらが上だ。

 しかもエスコートしたら、俺がしょぼくれた子爵家に婿入りする事が周りにバレるじゃないか!

 そんな恥ずかしい事が出来るか!



 今日は入学式だけなので、もう学園に行っても無駄だろう。

 朝飯を食いっぱぐれたから、腹が減っていた。

 この時間でも、食堂では軽食も食べられるはずだ。

 朝昼夕の3食と違って有料だが、まぁ良いだろう。

 払うのは俺じゃないし、寮費と一緒に伯爵家に請求がいくはずだ。

 無駄遣い禁止されているが、これは不可抗力だし無駄ではないよな?


 食堂に行くと、いつもより大分人数が少なかった。

 食事時じゃないからかと思ったが、通りすがりに聞こえた話でその理由を知った。


「あの大財閥のお嬢様が今年入学してきたらしいぜ」

「あ、知ってる!今頃その親戚達が集まって祝ってるらしいな」

「あの高級サロンを貸切らしいぞ」

「それで今日はこんなに人が少ないのか」


 そこまでしか聞こえなかったが、話していた四人はまだまだ盛り上がっていた。

 そんなお嬢様が入学してきてんのか。

 それに比べて、俺の婚約者はたかが子爵だ。

 しかも狭い家しか王都に持てない貧乏人だ。

 あれでは、結婚したら恥ずかしくて友人も呼べない。



 急に食欲が無くなって、野菜ジュースと炭酸だけを買って部屋に帰った。


 子爵令嬢でも、華やかな美人とか自慢出来る婚約者なら良かったのに。

 決して醜女ブスでは無い。

 だが俺が求めるのは、皆が振り返るような美人だ。

 皆が羨むような婚約者が欲しいのだ。


 本当に、親父は何であんな女との婚約を決めたんだ。




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