第26話

 年末、クランリーダーの仁さんから連絡があり、一度全員で顔合わせ兼忘年会を開くことになった。


 集まったのは仁さんのパーティ4人、蓮さんのパーティ4人、亜紀さんのパーティ4人、そして新人組の俺たち3人に、専属職員になった五十嵐さんの16人だ。


 最初にそれぞれが自己紹介をしてから、他のパーティメンバーと各々交流をしている。

 

 仁さんのパーティメンバーは4人ともBランクの冒険者で、今はDランクのスパイダーダンジョンに潜っているらしい。スパイダー自体はそこまで強くないらしいが、数が多いのと麻痺や毒系の攻撃をしてくるのが厄介だそうだ。

 ドロップする魔石がDランクなので、Dランクダンジョンとなっているが、冒険者の殲滅力次第ではかなり高難易度に感じるらしい。

 ただ、ここで取れる魔石の数が多いことと、ドロップアイテムの糸が高品質な事から収入は結構いいんだとか。


 そして、蓮さんと亜紀さんのパーティは火力に特化したパーティで、防御力の高いCランクのゴーレムダンジョンに潜っているらしい。

 ゴーレムは数が少ないが、鉱石をドロップするので、当たりを引けばかなりの高収入になるんだとか。ただ、鉱石は鑑定に掛けるか、クラフトスキルで使える「分解」をしないと何の鉱石かわからないため、苦労して持ち帰ってみたらハズレということも多々あり、連続でハズレを引いた時は生活が厳しいとか言っていた。

 このダンジョンに入る人たちの間では、別名で宝くじダンジョンと呼ばれているらしい。



 「だから二人がこのクランに入ると聞いて、俺たちが入らないわけがない!」


 「今まで少ない数しか鉱石を持ち帰れなかったけど、あなたたちがいればウハウハよ♪」


 「宝くじが宝くじじゃなくなるんだからな!ハズレなら持ち帰らなきゃいいんだし!」



 この二人は初めて入った時に当たりを引いたらしく、それ以来この宝くじダンジョンの虜になってしまったんだと仁さんが教えてくれた。今では虜になった冒険者を仲間にして二つのパーティでやっているんだとか。



 「普通の冒険者は、あのダンジョンは運試しで行くんだ。たまにクラフト持ちを連れてきて確実に金になる鉱石を持ち帰る奴がいるが、それでも居着く奴は稀だな。」


 「なんか話だけ聞いてたら確実に稼げそうな感じなのに何でですか?」


 「あのダンジョンは魔石も鉱石もドロップ率が低いんだ。鉱石はさらに当たりハズレがあるし、なんて言ったってゴーレムを倒すのが大変だ。火力・体力・強運この三つが揃わないとあそこでは稼げない。あいつら一時期の酷い時なんて、金なくて野宿してたからな…。」


 「Cランクの冒険者が金欠で野宿って…。」



 あの人たちはCランクまでいったんだから凄い人たちなんだろう。でも話を聞いていると、なんだかダメな人たちに聞こえてくる。

 一攫千金目指して、給料をひたすら宝くじにあてちゃう人みたいな感じだろうか?



 「コウたちが成長して行けるようになっても、あいつらに毎日ついて行かなくていいからな?もちろん、運が良ければ大きく稼げる日もあるが、ハズレの日が続くと悲惨だからな。ちゃんと普通にダンジョン探索もするんだぞ?」


 

 仁さんがあんな風にはなるなと言っているので、ダメな大人の見本なのだろう。まだFランクなので、ついていけるのはまだ先だが、一緒に行くのは月に何回って決めておこうと思う。


 その前にスキルのレベルアップで「分解」をゲットしないといけない。分解で石と原石に分けないと鉱石に何が埋まっているか分からないらしいので、仮に俺がついていけるレベルになても、足手まといになる可能性がある以上はスキルが無ければ置いていかれるだろう。


 南さん達だけ行けて俺だけ留守番なんてなったら悲しいから、できるだけ早く分解は手に入れておきたいな。

 そんなことも考えながら、仁さんたちとの忘年会を明け方まで楽しみ、だんだんと冒険者生活が充実してきているのを実感した。


 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る