第20話 決意
私は傀儡されたハーロルト子爵が覆いかぶさった時、『診断』をして最小限の情報を読み取った。
傀儡されたハーロルト Aランクの『怪力』の『称号』に匹敵する力をゆうする。傀儡者の命によって体の魔力を燃料として爆発する自爆には要注意。
私は、この情報を入手して自分の結末を想像することができた。そして、この結末を利用することにした。ハーロルト子爵が爆発するときに、胴体と頭だけは防御魔法で守り、両腕両足は捨てることにした。しかし、右手だけは魔力を流し込み遠隔操作できるようにした。これは聖女だからできる『瀕死の抵抗』という魔法である。
聖女である私にしか使えない魔法がいくつか存在する。『瀕死の抵抗』もその一つである。『瀕死の抵抗』は死に直面しそうな最悪の状況下で自分を救う魔法である。例えば、今回のような爆発に巻き込まれて、瀕死の状況になった時、体のどの部位からも魔法を発動することができるようになり、自己治癒をすることができるのである。今回は頭と胴体は防御魔法によって守られているので、胴体または頭から魔法を発動して自己治癒を行うのがセオリーであるが、私はセオリーを無視することにした。
私は爆発の風圧を利用して、右腕をクローヴィス兵士長の足元に飛ばすことに成功して、一旦は様子をうかがっていた。私の思惑通りにクローヴィス兵士長は一人になった時、勝利の安堵の余韻により、私の欲しい情報を思い出したのである。私はソルシエールを殺した犯人の手掛かりを得ることが出来たので、クローヴィス兵士長を殺害することにした。彼が生きていると私のこれからの行動に邪魔になるからである。
私は『瀕死の抵抗』を使って、右手を動かしてクローヴィス兵士長の足を掴んで『スーパーヒール(超回復)』を使った。私は『聖女』なので、攻撃魔法は使えないので、相手に攻撃できる手段はないのである。しかし、唯一相手に致命傷に与える事が出来る魔法がある。それは、『聖女』しか使いない最高上級魔法の『スーパーヒール』である。『スーパーヒール』は瀕死の状態から一気に治癒させる最上級の治癒魔法である。しかし、その効果は絶大であるが、瀕死でない状態で『スーパーヒール』を使用すると、体の細胞が活性化し過ぎて細胞が死んでしまうのである。『スーパーヒール』による死亡は原因を特定すること出来ず、本人も苦痛もなく力がだんだん出せなくなって死んでしまうので、死への恐怖もなく死んでいく。
クローヴィス兵士長も自分が死にゆくことに気付かずに力がどんどん抜けていき安らかに眠ったのである。
一方私は、頭と胴体だけは無事に守り切ったが、両手両足が切断され、痛みのあまりに歯を食いしばって痛みをこらえていた。『スーパーヒール』を使えばすぐに元の体に戻ることができるのだが、クローヴィス兵士長を倒すのに使用したので、1時間のクールタイムをおかないと再び使用することができない。なので、『ヒール』で出血を防ぎ、最低限の回復で生き延びていた。
「ロリポップさん、その話は本当なのか?」
「あれ?なぜ私はここに居るのですか?」
ロリポップは、アーダルベルト伯爵の書斎に来ていたが傀儡が解けて我に返った。
「ロリポップさん、本当にアルカナさんが殺されたのですか?」
「あ・・・私は地下牢に居たはず・・・」
「ロリポップさん、私の話を聞いていますか?」
「伯爵様、申し訳ありません。先ほどまで私はクローヴィスに洗脳されていたようです。なので私がなぜこの場所にいるのかわかりません」
「そうですか・・・あなたの先ほどの報告では、ハーロルトの手によってアルカナさんが殺害され、クローヴィスは冤罪であったので罪を取り消すように言っていました」
「思い出しました伯爵様、ハーロルトの爆発に巻き込まれたアルカナちゃんは、全身がバラバラになって死んでしまったと思います。すべてクローヴィスの仕業です。すぐに兵士たちを徴収して、クローヴィスを殺すべきです。私はアルカナちゃんにもすぐにクローヴィスを殺すべきだと言ったのです」
「兵士たちでクローヴィスを倒せますか?クローヴィスには洗脳のスキルがあるようです。下手に近づけばあなたのように洗脳されてしまうだけです」
「確かに伯爵様の仰る通りです。しかし、どうすればよいのでしょうか?このままですと以前のようにクローヴィスの思いのままに事が進んでしまいます」
「私達だけで対処できる問題ではないでしょう。しかし、ここでクローヴィスを倒さなければいけないと私は感じています。なので、ここは私一人で対処します」
「待ってください伯爵様、私も行きます」
「ダメです。これは私の戦いです。すべてに決着をつけたいと思います」
アーダルベルト伯爵は書斎にロリポップを残して地下牢へ向かった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます