第13話 新執事

 アーダルベルト伯爵が大広間から出て行くと、ハーロルト子爵が私の方を睨みつけた。



 「今すぐにこいつを殺せ!」


 「えっ!殺してしまうのですか?」


 「当たり前だ!下級貴族が伯爵様の執事など務まるわけがない。それに伯爵様の執事は俺だ!断じて認めるわけにはいかない」


 「しかし・・・」


 「殺せ!こいつは自害したと報告しておく」


 「わかりました。でも、殺す前にみんなで楽しんでもよろしいでしょうか?もう私たちは我慢できません」



 メイドの面接に来た女性達の全裸の姿を見て兵士たちは興奮していた。



 「かまわん、好きにしろ。しかし、カルリーヌだけには手を出すな。あいつには先約が決まっている」


 「わかりました」



 兵士たちは歓喜の声をあげてズボンを脱いで壇上に上がった。



 「俺からだ!」


 「いや、俺が最初を奪うのだ!」



 壇上で私の体を巡って兵士たちが争い出した。兵士たちは平民奴隷を凌辱するのは慣れているが、貴族を相手にするのは滅多にないので興奮している。私は体を弄ばれることは覚悟していたが、殺されるわけにはいかないと思っていた。しかし、どう対処すべきか眉一つ動かさないでじっくりと考えていた。



 「騒がしいですね。何をしているのですか?」


 「は・・・伯爵様!どうなされたのでしょうか?」


 「新しい執事に仕事を頼むために戻ってきたのです」


 「この私が致しますので、何なりと命令してください」


 「一つ言い忘れましたが、あなたはクビです。すぐに屋敷から出て行ってください」


 「えっ!」


 「アルカナさん、すぐに服を着て面接の続きをしてください。兵士の皆さんも新しい執事のアルカナさんに失礼のないようにお願いします。ロリポップさん、後はお願いします」



 アーダルベルト伯爵は指示を出すとすぐに大広間から姿を消した。



 ※ロリポップ・キャンディ子爵(女性)アーダルベルト邸のメイド長。年齢25歳 身長171cm モデルのような細身の美しい女性。髪は青のメッシュの入った金髪のロングヘアーでブルーの瞳をしている。



 「アルカナ様だけでなく皆さん服を着てください。兵士の皆さんもズボンを履いて所定の位置に戻ってください」



 兵士たちはすぐにズボンを履いて所定の位置に戻る。



 「俺は・・・どうすればいいのだ」


 「ハーロルト、旦那様の言葉を理解できなかったのでしょうか?」


 「俺様はブラートフィッシュ家だぞ。こんな扱いをしてどうなるかわかっているのか?」


 「この町を任されているのはアーダルベルト伯爵です。ブラートフィッシュ家は関係ありません」


 「クソーーーー。パパに言ってこの町をぶっ壊してやる」



 ハーロルト子爵は大広間から逃げるように姿を消した。



 「アルカナ様、壇上から降りて面接をしてください」


 「えっ!私が面接官をするのですか?」


 「はい。ハーロルトはクビになりましたので、代わりにあなたが面接官をするのです」


 「でも、何をすればいいのかわかりません」


 「問題ありません。面接といってもハーロルトや兵士たちが面接者をいたぶって遊んでいるだけです。最初から全ての者を採用することになっています。後は配属を選ぶだけですので、この用紙から選択すればいいだけです」



 私はロリポップから用紙を受け取った。用紙を見ると今回の募集配属が記載されている。貴族女性は料理人、雑務メイド、執事専属メイド。平民は飼育部屋での汚物処理などの雑務、奴隷平民の世話、兵士の性欲処理。


 私は用紙に目を通して平民を均等に振り分けして、カルリーヌを執事専属メイドに採用した。



 「ロリポップさん、これでよろしいのでしょうか?」


 「はい。問題ありません。アルカナ様、私はこの屋敷では私よりも身分は上のランクになりますので、ロリポップと呼んでください」


 「私のが身分が上なのですね。それならばロリポップに命令します。私のことはアルカナと呼びなさい。そして、私はあなたのことをロリポップさんと呼びます」


 「それでよろしいのでしょうか?」


 「はい。私は年下であり新人です。ロリポップさんのが先輩なので、そのようにしてください」


 「わかりました」


 「面接は終わりましたので、次は何をすればよろしいのでしょうか?」


 「執事の部屋に案内しますので、そこで詳しい説明をいたします。カロリーヌさんはアルカナちゃんの専属メイドなので一緒に来てください。マンフレッド、残りの皆さんを配属場所に案内してください」


 「わかりました」


 

 私はカロリーヌを連れて執事室に向かった。



 「ありがとうございます」



 カロリーヌは涙を目に浮かべながら私に頭を下げる。



 「カロリーヌさん、私に何ができるかわからないけど安心してね」



 私の目的はソルシエールの復讐である。カロリーヌを執事専属メイドにしたのは、温情を売って上手く利用しようと思ったからであった。

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