第11話 対面
「何をくだらないことをしているのですか」
全員が全裸になった頃に大広間の扉が開いて2人の男性が入ってきた。1人は長い黒髪の背の高い男性で、その男性の後から、栗色の短い髪の冷たい目をした男性が入ってきた。
声を発したのは黒髪の男性であり、栗色の髪の男性は全く関心がないようである。
「申し訳ありません。一糸纏わぬ姿で伯爵様をお出迎えした方が良いと判断しました」
髭のおっさんは額に汗を流しながら弁明していた。
「毎回余計なことをしないように言っているではありませんか?面接は伯爵様とお目通しをする場なのであり、あなたたちの欲望を満足させる場ではないのですよ」
「わかっています。しかし、今回は上玉が2人も居ましたので、部下のやる気が向上すると思い、このような判断をしました」
「社交場での人気が高かったアインホルン家の娘さんと治癒院を営んでいるアルカナ嬢のことでしょうか」
「はい。カルリーヌ嬢のドレスからはみ出さんばかりの大きな胸を拝見したいと思うのは男性なら当然のことです。そして、小さな治癒院を営んでいるアルカナ嬢の可愛さの噂はこの町に住んでいる者ならば一度は聞いたことがあります。そんなお2人が面接に来られたとなると、全裸を見たいと願うのは男性なら当然だと思うのです。他の6名などどうでも良かったのですが、平等に扱うのが私の心情です」
もう髭のおっさんは自分の願望を隠すことはしない。確かに髭のおっさんの言う通りカルリーヌの豊満な胸は女性の私が見ても魅力的である。右手で必死に胸を隠そうとしているが、大きな2つの胸を隠すことは不可能で、乳房を隠すだけで精一杯であった。そして、胸だけではなく、くびれた腰にプリンプリンの大きなお尻は、全裸になっている男性平民の股間を激しく刺激していた。カルリーヌは顔を赤らめて恥ずかしさを堪えているが、その姿がさらに男性の心を惹きつけていた。
一方私は幼児体型で胸もこぶりだが、雪のような透き通る肌に桜のような淡いピンクの乳房は芸術品のように美しく、カルリーヌの大人の魅力とはまた別の魅力があり兵士たちも嬉しそうに私の体を見ていたが、私が全く恥じらいを見せることなく堂々とした出立ちで、死んだ魚のような目をして一直線に何かを見ている姿に魅力を感じなくなり、みんなカルリーヌの裸だけを見ているのであった。
「やっと本心を言いましたね。毎回同じやりとりをしているように感じますので、少しは反省をしてください」
「善処いたします」
髭のおっさんは頭を下げたが、下げた顔からは勝ち誇ったかのように笑みを浮かべていた。
私は2人の男性が入ってくるとどちらがアーダルベルト伯爵かすぐにわかった。先に入ってきた男性は、私たちの裸を見るなり少し笑みを浮かべながら髭のおっさんに注意をしたが、後ろから入ってきた男性は私たちの裸に無関心であり、人形のようにただ男性の後ろを歩いている感じであった。
アーダルベルト伯爵はソルシーエルを嵌めた最有力候補である。ソルシエールもアーダルベルト伯爵が怪しいと言っていた。私は込み上げてくる怒りを抑えながら冷静を保つのに必死であった。
私たち8人は見世物のように舞台に立たされた状態で、アーダルベルト伯爵の面接が始まった。アーダルベルト伯爵は王様が座るような豪華な椅子に腰かけて私たちを一人一人ゆっくりと観察していく。アーダルベルト伯爵の冷たい青い瞳からは感情を感じ取ることができない。アーダルベルト伯爵は、一番端に立っている男性平民の体を頭の上から足の先までじっくりと観察している。
平民達は貴族の親から生まれたが、『称号』を授かっていないので、『平民』の身分に格下げされた元貴族である。親によっては、『平民』落ちになっても『貴族』の『所有物』として一緒に生活をすることができる者もいるが、大半は生まれてすぐに平民の元に里子に出されて平民に育てられることのが多いのである。里子に出された者は、16歳を過ぎると『貴族』の元へ『メイド』として売り出される可能性は高い。なので、平民は将来『メイド』として売りに出される覚悟はしているのである。しかし、メイドとは響きは良いが実際は奴隷である。
覚悟を決めているはずの男性平民であったが、いざ、現実にメイドとして品定めされると緊張は隠せない。しかも、相手は『失感情伯爵』と呼ばれ、随時メイドを募集をしている曰く付きの相手である。普通の貴族の元へメイドとして働くのとは違うのである。
男性はアーダルベルト伯爵の感情のない不気味な目に恐怖を感じて両手で性器を抑え出した。
「何をしているのだ!手を退けろ」
髭のおっさんが大声で怒鳴りつける。
しかし、男性は手を退けない。それどころが手の隙間から黄色の液体が溢れ出してきた。男性は恐怖のあまりにおしっこを漏らしたのである。男性はとんでもないことをしてしまったと思い、大声を出して泣き出した。
おしっこを壇上にぶちまけて大声で泣き叫ぶ男性に他の6名も動揺して、壇上の端に逃げてしまった。壇上ではアンモニア臭が漂い生暖かい感触が私の足に伝わってくるが、私は一歩も動くことなく壇上に立ち続けていた。
私はずっとアーダルベルト伯爵の方を見続けていた。しかし、感情を向き出しにして睨みつける事はできないし、逆にアーダルベルト伯爵に取り入るために微笑むわけにもいかないので、感情を押し殺して、ただずっとアーダルベルト伯爵を見ていたのであった。
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