第6話 女王の魅了
「これで、堂々とロワルド男爵の屋敷に行くことができるわよ。私たちの任務はオークの女の子を救い出すことね。ロワルド男爵には報復はしないで、誘拐された経緯を女の子から聞き出し、この町に暗躍する『不滅の欲望』の組織を見つけ出すことね」
「アルカナ様、それでいいのよ」
「ソルママ、もう、誰もいないから様はいらないわ」
ソルシエールは、私の母親だが身分は平民なので、人前では私のことをアルカナ様と呼ぶ。これはルティアも同様である。
私の住んでいるゾンタークは、4大公爵家の1人であるバトルクワイ・ヴェルヘルム・エーデルメタル公爵が領主である。バトルクワイ公爵は、亜人の奴隷を基本禁止しており、亜人の奴隷の売買をおこなうと処罰の対象となる。なので、私がバトルクワイ公爵に、ロワルド男爵のことを密告すれば問題は解決すると思われるが、治める領地が変われば法も変わる。
エールデアース帝国では4大公爵によって国が四つに分断される仕組みになっている。バトルクワイ公爵が治める領地以外は、亜人の奴隷売買は合法化なので、バトルクワイ公爵領から一歩出れば、今回誘拐されたオークは奴隷商品になるので、バトルクワイ公爵領から連れ出すことができない。
しかも、バトルクワイ公爵領内でも、バトルクワイ公爵が全てを把握することはできない。バトルクワイ公爵から領地を任されている者たちが、秘密裏に亜人奴隷を流通させている事情もあるので、今回のような事件が発生する。
ゾンタークはバトルクワイ侯爵領であるが、直接管理しているのはアーダルベルト・フォーゲル伯爵である。アーダルベルト伯爵は『不滅の欲望』の幹部の可能性が高いと推測されるが、まだ決定的な証拠は見つかっていない。
「アルカナちゃん、もう少し時間を早くできない?少しでも早く彼女を解放してあげたい」
「そうね。ルティアちゃんが心配する気持ちもわかるから、1時間早めに行こうかしら」
「ありがとう」
ルティアは少し冷静さを取り戻して、ゆっくり腰を下ろして椅子に座った。
「ルティアちゃん、怒りをコントロールするのも大事なことよ。冷静さを失ってしまったら性格な判断もできなくなるし、ミスを犯してしまう危険があるわ。アルカナちゃんに迷惑がかからないように努めるのよ」
「わかりました。ついオークの女の子の気持ちを考えてしまうと怒りが抑えることができなくて・・・」
「ルティアちゃんの気持ちは理解しているつもりよ。でも、あなたには1番冷静で居て欲しいのよ。だってあなたのスキルがなければ今回も上手くオークの女の子を助けることなんてできないのだからね」
ルティアはゴブリンクィーンに進化して『女王の魅了』というスキルを手に入れた。ルティアの赤い瞳で魅了された者は、自分の意思とは別の人格が入り込み、ルティアに絶対服従となる。しかし、この『女王の魅了』はルティアの半径10m圏内のみ発動し、圏外になってしまうと意識を失って倒れ込むのである。
「わかっている。私がしっかりとしないと」
1時間後3人でロワルド男爵の屋敷に向かった。
ロワルド男爵邸
「まさか、下級貴族が経営している治療院に美人な平民とかわい子ちゃんがいてるとは夢にも思わなかったぜ」
「旦那様、あの治療院は美人の助手2名と可愛い女の子が経営していると巷では評判です。助手の1人は亜人種のゴブリンですが、このゴブリンは豊満な肉体を持っているので、『不滅の欲望』のターゲットになっているそうです」
「ゴブリン???そんな奴は見なかったぞ」
「時間外だったので席を外していたのかもしれません。往診に来られるときには一緒に来るかもしれませんので、楽しみにしてください」
「そうか。俺のコレクションの一つにしてやりたいが、あの治療院はエールデメタル公爵家に可愛がられている可能性がある。下手に手を出すと痛い目にあってしまうわ」
「旦那様、心配はご無用です。エールデメタル公爵家がゾンタークに来られるのは年に2度と決まっています。先日お越しになったので、次に来られるのは半年後になります」
「しかし、あの娘はエールデメタル公爵家の子息に求婚を受けたと言っていたぞ。あの娘に手を出したらどうなるかわからないぞ」
「旦那様、冷静になって考えてください。私が思うにその娘は旦那様のお誘いを断るために嘘を言ったのです。エールデメタル公爵家の子息は、『覇王』の『レア称号』を持つ皇帝になる資質を持った人物です。こんな田舎の小娘相手に求婚するはずがありません」
「確かにそうだな。俺としたことが迂闊だったぜ。あいつらが往診に来るなら3人とも俺もモノにしても問題はなさそうだな」
「はい。でも、旦那様は人間の女には飽きたと言っていませんでしたか?」
「平民奴隷相手ではイチモツが元気が出ないのだが、あのオークの体を見てからは、精力がみなぎっているのだ。今の俺なら人間の女相手でもガンガンに仕事をこなせる自信があるぜ」
ロワルド男爵は腰を振ってアピールをする。
「旦那様、まだ右手は完治していませんのであまり無理をしないでください」
「そうだな。しかし、オークの体を思い出したら俺のイチモツが制御不能になってきたぜ」
ロワルド男爵はズボンを大きく膨らましていた。
「やっぱり我慢できん」
ロワルド男爵は性欲を抑えきれなくなりオークを監禁している地下室に向かった。
屋敷に着くと私は門を叩いて中に入れてもらえるようにお願いした。
「旦那様よりお話は伺っています。しかし、予定の時間よりも1時間早いようですが?」
「ロワルド男爵様の健康面について提案があるので、少し早めに来ちゃったの。もちろん、健康面のアドバイスは無料のサービスなので追加料金は発生しないよ」
「無料でしたら問題ないと思います。旦那様は今トレーニングをしていますので、しばらくお待ちください」
「ちょっとすみません。ロワルド男爵に早急に伝えたいことがあるのですが」
ルティアはロワルド男爵の執事の目を見つめながら声をかけた。
「な・・・なんて美しい瞳をしているのだ・・・」
執事はルティアの瞳を見て意識を失った。
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