彼はただ妹の幸せを願った

秋雨千尋

約束はちゃんと守りましょう

 スゴ腕の始末屋がいるらしい。

 決して証拠を残さずターゲットを完全に消し去るそうだ。

 私は手を尽くして彼を見つけ出した。


「引き受けよう」


「ありがとうございます。やっとあの人の無念を晴らせます」


「妹のためにやっている事だ。感謝などいらない。すぐに取り掛かる。今すぐ2キロ以上離れた場所に行け」


 アリバイまで気にしてくれる優しい始末屋さん。私は興味を抑えきれず、彼の後をつける。

 憎いあの男を眠らせた彼は、トレンチコートの前を開けた。


 中から巨大なヘビが飛び出し、獲物を丸呑みにした。


「ひっ!」


 始末屋さんがこちらを向く。


「2キロ以上離れろと言ったのに」


「誰にも言いません。どうか命だけは!」


 それが私の遺言になった。



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彼はただ妹の幸せを願った 秋雨千尋 @akisamechihiro

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