めらんこりあ

おぼろづきよ

ねえ

 ねえたとえば、まあるいテーブルに灰皿をのせて、ポプリの壜はみどりにかくれたまま、香りを閉じ込めているの。ねえ、たとえば、まあるい窓からそとのなかを見ているとき、きみのひくピアノはところどころ途ぎれながらも、五線譜のうえをいきもののようにながれてゆくの。ねえたとえば、ラジオからみしらぬ曲がながれたときにも、……ねえたとえば、わたし、君の声にきいて。ねえ、あたたかみのある色彩の娘たちが、尾のように帯をひいたまま、このがらすどをそっとたどってゆくの。ねえ、たとえば……、そうね。もうしばらくすれば、梅雨がやってくる。そして、そらのしたのうえに、かくされたままの虹がすっと線をひいて、よぎる……

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