蟷螂草子

あじさし

蟷螂草子

 side A


 酒樽にたまったガスがたまりにたまって、これ以上ないくらい樽の木を膨らませているようなイメージ。あるいは袋の中に入れた無数の蛇がうごめいて、袋が横倒しになり、しっかり縛ったはずの口から蛇が抜け出てゆくイメージ。秩序だったものは、それゆえに無秩序が閾値を越えた時に脆く崩れ去ってゆくものだ。


 憂鬱。


 気温の乱高下からの雨。


 沈む時間が早くなってゆく太陽。


 そして、朝な夕なに凍りつく路面。


 冬の始まりは秩序と無秩序のあわいにある。ような気がする。


 祭り。


 それは無秩序を意図して作り出し、最後には秩序を取り戻すための機能があり、古来より人々は上手くそれによってガス抜きをし、共同体の維持を図った。


 商業がこれまでにないくらい発展した私たちの生きる現代社会においても、祭りは同様の効果が暗に期待されている。それはかつてないほどの大きさを誇る商業ネットワークと地球上を股にかける超巨大企業、そしてバックにいる大国が、より小さな共同体を飲み込んで、まるで一つにまとまっていこうとするように見える情勢でもそうだ。


 ホモ・サピエンスには祭りが必要なのだ。


 そう言わんばかりの秋から冬にかけてのイベントラッシュが、私は苦手だった。


 帰路の車内でかけるラジオから山下達郎の歌がかかり始めるのを聴いて、もうそんな季節か、と呟く。そして、ため息をつく。


 ハロウィン商戦も年々早い時期からやるようになっているし、中間決算が終わったと思ったら街は正月を過ぎるまで騒がしいし、ラジオをつければイベント情報や歌がわっと頭の中になだれ込んでくるし、もう疲れる。


 まあ、今年も私は地元に戻ってくる友人とクリパするんだろうけどね。


 今日は帰りにスーパーに寄ることにしていた。なぜだか分からないけれど、唐突に風呂吹き大根が食べたくなって、午後からずっとそのことばかり考えていた。大根のほかに味噌が切れかけていたらそれも買おう。あ、そういえば今日はお肉が特売だったな。


 


 買い物を済ませてしまうと、車の中で、マイボトルの中の残りのコーヒーを飲む。


 あたりまえだけど、酸化が進んで酸っぱい。


 今度からはあまり酸化が進まない飲み物を用意するようにするか。麦茶なんかはどうだろう。


 フロントガラス越しに、出入り口が見える。その脇に喫煙コーナーがあって、学生くらいの男の子3人と女の子が1人いた。もう完全に日は落ちていたけれど、建物の中からの灯が明るいせいで、背格好もある程度は見て取れた。おいしそうに煙草を吸うキャップを被った子。アイビールックの男の子と、ぶかぶかなサイズのパーカーを着た男の子が女の子に何やら話しかけているようだ。女の子の方は、ロングコートの一番上から一番下までボタンを全部留めていて、足元からはスカートが覗いている。彼女は男の子たちに対して肯いたり首を横に振ったりしている。男の子が寄ると女の子が後ずさりをする。そうこうしているうちに、男の子の一人の腕が女の子の手を掴んだ。もう一人の男の子が肩を軽く叩く。連れだってどこかへ行くようだ。


 男の子はみんな煙草を吸っていたのに、女の子は吸っていなかったなあ。


 脳の縁を何かが掠める。


 ドン。


 車の中で思わず立ち上がったせいで頭のてっぺんをぶつけた。キーを解除してドアを速やかに開けると、ずきずきと痛みを主張する頭をさすりながら喫煙コーナーへ歩みを進めた。


「ちひろ!ちーちゃん」と男女4人のグループにわざと声がよく通るように低い声で話しかけた。

「ここにいたんだ。ちーちゃん」


 男の子3人は突然現れた謎の女に驚いたのか、目や口を軽く見開いている。


「遅くなってごめんね、お姉ちゃん仕事今日ちょっと長引いちゃってさあ。あれ?この子たちはお友達?」


「あ、ああ、まあそうです」


「はい」


 男の子たちは口々に答えた。女の子から手を離した。


「今日、風呂吹き大根と、あとハマチ安かったから刺身にして食べよう。お姉ちゃん作るの手伝ってくれるでしょ」


「ああ、お姉さんだったんですね。それなら、俺たちはまたにしようや」アイビールックの茶髪を立てた男の子がそう云って笑顔を作ろうとする。


「どうも、いつも妹がお世話になってます。」


「どうも、それじゃあ。ちひろちゃん、また今度な」


 そういうと男の子たちのグループはスーパーに面した通りへ歩いて行った。なんとなく、そそくさというオノマトペが似合いそうな感じだ。


「ごめんね。なんか余計なことしたんなら謝る。本当にお友達だった?」男の子たちが行ってしまってから彼女にそう言った。彼女はその場でふるふると首を横に振った。よく見ると顔色が悪そうだ。けれども、顔立ち自体はとても整っていて、あどけなさを残す目、ほっそりした顎、それをショートにした髪が引き立てていて、暗い顔でさえもなんだか絵になるような女の子だ。歳はまだティーンネイジャーくらいに見える。


 そういえば、買い物の荷物を彼女は持っていない。スーパーのあたりで誰かを待っていたのだろうか。それとも、これから何か買う予定だったのだろうか。


「もしかして誰か待ってたの?」


 彼女は横に首を振る。


「買い物があるなら付き合うよ。まあ、さっきの男の子たちは戻ってこないと思うけど、よかったら家まで送って行くよ」


 またその場で横に首を振る。これはどういう意味だろうか。買い物はない?それとも送らなくていいよってこと?


「びっくりさせちゃったかな」


 今度はその場でこくんと肯く。それとももしかしたら、喋れないのかもしれない。私はイエスかノーで答えやすい質問を頭の中で練った。


「お買い物はこれから?」


 ノー、という代わりに首を横に振って答える。


「誰かと一緒にここへ?」


 ノー。


「誰かと一緒に帰る予定なの?」


 ノー。女の子は再度横に首をふるふると振った。さらさらした前髪が、耳には聞こえない繊細な音を奏でていそうだ。


 ううむ。


「一人なの?」


 イエス。


「家に帰れる?」


 ノー。


 それはどうして、と訊こうとして質問を改めた。


「ここじゃなんだし、うちに来てお話する?」


 イエス。こころなしか目に浮かんでいた不安が少しだけ影をひそめたように見える。


 


 家に着くと、洗面所に案内し、コートを預かった。手洗いうがいを済ませると、ダイニングキッチンのカウチに座らせた。


 彼女を車に載せるとき、よろよろと歩みを進め、座席に座る時もゆっくりと背中をシートにくっ付けたのを見て、ようやくその時異変に気が付いたのだった。コートの裾や袖から覗くほっそりした足や手に対して、コートが膨らみすぎているとは思っていた。最初は着膨れしているのかと思ったけれど、助手席で息をつく彼女を見て私は尋ねた。


「間違ってたらごめん。もしかして、お腹に赤ちゃんいる?」


 イエス。


 まじか。家出してきたような少女をナンパから助けたと思ったら、もっと込み入った訳があるのか。生きていればいろいろな物事に出遭うものだ。


「ご飯作るけど何か食べられないもの、魚は食べられる?」


 私はカウチの背もたれに寄りかかる彼女に訊いた。コートを着ていた時よりも腕や足が細く見える。それと対照的に、ワンピースの上からその丸みを帯びたお腹が主張している。まるでいたいけな少女に何かが寄生しているようにも見えたし、少女の身体自体が新しい命を包み込む卵のように見えた。


 彼女は肯く。


 ご飯を研いで、炊飯器のタイマーをセットし、野菜を刻み、ハマチと一緒に鍋に入れて煮込む。豆腐を小さめに縦に切り、刻んだ生姜を気持ち少なめに乗せて冷蔵庫に仕舞う。沸かした別の鍋に顆粒だしを入れ、味噌を溶く。


 気が付くと背後に少女が立っていて、鍋の中を覗き込んでいる。


「もうすぐ出来るからね」


 味噌汁の揚げを入れる様子をまじまじと眺め、匂いを嗅いでいるようだ。どうやら揚げが好きらしい。


 炊飯器のタイマーが鳴る。彼女は肩をひゅっとすぼめるとゆっくりカウチの方へ戻ってゆく。


「ふふ、びっくりしちゃった?」


 彼女はバツが悪そうに眉を曲げ、口の端を上げる。


 


 食べ終わるとほうじ茶を淹れて飲んだ。彼女は本当に少ししか食べなかった。ご飯をよそいながら量を聞いたらその度に首を横に振る。ご飯は一口ちょっとしか食べなかったし、ハマチも一口しか食べなかった。でも、何故か味噌汁と豆腐は私と同じだけ食べた。お腹がせりあがってる分、胃が圧迫されて小さくなってるのかもしれない。


 少女の顔には赤みが差し、気持ちよさそうにカップで手を温めている。おいしかったのかな。


「温まった?」


 彼女はその場で肯く。

 

「なんかいろいろ事情がありそうだけど、家には帰れないの?」


 イエス。


「それとも、帰りたくないの?」


 それに対して彼女は、よく分からない、といった風に頭を傾げた。ううむ、新しいパターンが来た。


「家族はいる?」


 ノーのようだ。首を横に振る。


「一緒に住んでる人はいないの?」


 ノー。


「そうか。とりあえず、今日は泊ってく?」


 今度は首を縦に振った。


 そうは言ったものの、考えるべきことがたくさんあった。明日は貴重な休みだったけれども、残念に思う余裕さえその時私にはなかった。一人暮らしだとして父親は?お腹を見る限り臨月のように見えるけれど、このまま明日の朝、一人で返してしまって大丈夫だろうか、たしか、新聞に救急の担当病院が載っていたはず、そもそも、なんで喋らない/喋れないのだろう、考えれば考えるほど、尋常な状況でない実感がじわじわとこみ上げてくる。


 そんな不安が首をもたげている状態の私とは対照的に、彼女はふうふうカップを冷ましながら飲むお茶に気を取られている様子だった。こういっては悪いけれど何も考えていないようにも見える。彼女の腰かけるカウチが軋む。手で私のテーブルに置かれた掌にそっと触れた。焦げ茶色の瞳の真ん中にくっきりと大きく瞳孔が開かれている。とても美しい眼だ。


 少しだけ色を取り戻した手は華奢で節が骨ばっていて、ささくれが無数にできている。今、こうして何も考えていないように見える少女にしては年を取りすぎているように思えた。


「クリーム、塗ってあげるね」


 掌にクリームを取って温め、彼女の手と指になじませる時、手を引っ込めようとして、眉をハの字に曲げていた。塗り終わってしまうと、まとわりつくものを拭い取ろうとするように必死で手や指を擦り合わせていた。


「はは、まさか初めて塗った訳じゃないでしょ。本当はここまでひどくなる前にお風呂上りとか、水仕事の後にこまめに塗っておくんだよ。」


 私はお母さんか。


 彼女は不服そうに上目づかいでこちらを見ると、いきなり両手で私の頬にクリームを塗り付けてきた。


「ちょ、何すんのさ」


 子供か。


 突然の行動におかしさがこみ上げてくる。次第に足音を忍ばせていた緊張が、一気に解けてお腹の底から笑い声が出て止まらなくなってしまった。


 つられて彼女も笑った。口から見せる前歯はところどころ欠けていて、ぎょっとさせられた。やはり事件だろうか。後で失踪者のリスト、ネットで調べてみようか。とはいえ、あまりにも屈託のないその笑顔は、可哀そうというよりも、成長期の子供の歯をむしろ連想させた。逆にそれだけに痛々しい。どんな目にあったのだろうかと、その後風呂の湯船を洗いながら思った。あまり考えたくはないが、秩序の綻びは共同体の最も弱い者に対して暴力を向けることはよくある。


 状況を整理しよう。


 そう思った矢先、獣のようなけたたましい叫び声が部屋から聞こえてきた。


「どうした!」風呂の扉を勢いよくはねつけ、彼女に駆け寄るとお腹の下を抱えて床に倒れていた。スカートがびっしょり濡れて黒くなり、足元に水たまりができている。


「大丈夫じゃないな」一旦深呼吸をすると、歯ぎしりをする彼女を仰向けにする。


 テーブルとカウチを壁際まで寄せ、ベッドルームからマットを剥がして持ってくると彼女を寝かせ、一緒に持ってきたタオルを口に噛ませる。


「呼吸はできる?」


 かろうじて縦に首を振る彼女。首に枕をあてがい、頭があまり動かないようにしてやる。膝を立てて、楽な姿勢にしてあげたつもりだけれど、これでいいんだろうか。これは救急車を呼ぶ案件だろう。


 スマホの電源を押したものの、反応がない。


「クソっ、こんな時に限ってバッテリー切れやがって!」私は何の罪もないスマホを壁に投げつけた。タオルを噛む歯の間から漏れるとても少女の喉から出るとは思えないような泣いてるのか怒っているのか定かでない叫び声と、タオルの上から歯を軋ませる音がダイニングキッチンを支配する。


「隣の部屋、行ってくる。電話借りて救急車呼ぶから待ってて。」思ったよりも落ち着いた声が出た。


 立ち上がろうと床に手を着くや否や、彼女が袖を引っ張る。


「何?大丈夫だよ電話借りるだけだからすぐ戻るよ」


 彼女はノーの意思表示をする。彼女の額には無数の汗が出て、べっとりと顔じゅうを覆い、顔を強めに傾けたせいで眉や目尻を伝って涙のように流れていた。


「救急車呼ばないと、私にはどうにもできないし、死んじゃうかもしれないんだよ」


 そう諭す私の手を彼女がまた引っ張るので思わず前のめりになってしまう。こんな細い腕のどこにそんな力があるのだろう。乱れた前髪の間から、強烈な光を帯びた視線を感じる。少女は私の瞳孔を射抜くように目を見開いている。


「分かった。分かったよ。ここにいてあげる。」私は何かとてつもないものに向き合ってる気がして、あきらめてそう言った。


「ごめんね、下着脱がすよ」


 痙攣するように震える彼女のお尻をそうっと浮かせて下着を取ると私は息を呑んだ。下着の真ん中が膨らんで、明らかに彼女のものではない皮膚が覗いている。


「うそでしょ。なんでこんな早いの?」


 母親が私を産んだときは初産だったせいか2日かかったらしい。それで未だに冗談めかして恨み言を並べられるというのに。


 彼女が再び咆哮を上げる。


 待つことしかできないのか。


 畜生。


 彼女がいきむたびに彼女の手が痛いほど私の腕を握りしめ、産道から新生児の頭が出てくる。その度に私は、これまで見たことのない強烈な光景に対して、「動いた」と言うか、或いはここ数カ月で最も高いトーンで叫ぶしかできることはなかった。


 どれくらい時が経ったろうか。何十回か息んだところで頭が全部出た。

 

「わ。あ。出た。頭が出た!」


 赤い色をした顔に何かが覆っているのでそっとつまんで剥がす。新生児は顔を出しているが呼吸はしてない。


 この状態、大丈夫なの?


 彼女がいきむ。少しだけまた新生児が身体を出す。よく見ると腕が出ている。


 頭がその拍子にマットにつきそうになったので思わず手で押さえた。彼女の手を振りほどくともう片方の手でも支える。


「大丈夫。大丈夫。頭と腕出てるから。あともう少しだよ」


 お腹から出てきた腕がぴくぴく動いてる。


 良かった。多分生きてる。


 彼女の呼吸はずっと荒いままだ。それに合わせてお腹から出ている新生児の頭と腕が揺れるのが伝わってくる。


 なんか、呼吸法とかあったはずだけど、なんだったっけ。クソっ。


 彼女が咆哮を上げながらまたいきむ。すると、今度は反対の腕も出てきたので、頭と背中を押さえる。新生児は両腕で宙を掴もうとするように腕を振る。


 いいぞ。あと少し。


「焦らないでいいからね、あと少しだから。」


 こういう状態になったら引っ張った方がいいのだろうか。いや、下手に動かしたら肩が抜けるかも、こんな柔らかくて頼りない生命体なんて。どうすればいいのだろう。


「大丈夫だからね。」


 どうすればいいのだろう。


 彼女が息を切らせながら少し微笑んだ気がする。


 あと少し。頑張れ。


 彼女が叫ぶ。これだけ音が響いてるはずなのに助けも騒音のクレームも来ないなんて、今日はこのアパート誰もいないのかもしれない。


 今までで一番長い咆哮が部屋に響く。


 するっと足まで出てきた。


 やった。


 不思議なことに、足が出てしまうとするすると足の先まで出てきた。新生児の頭と背中をそうっとマットに下ろす。ついに全身が抜け出たのだ。


 緊張の糸が一気に緩んだのも束の間、新生児はまだ呼吸をしていない。


 どうしよう。


 大人であれば首を傾けたり、横倒しにして気道を確保するところだが、首がぐらついている状態でそうしてもいいものか判断がつきかねた。


 畜生。


 一瞬の判断が生死を分ける。とはいえ、何もしなければ待つものは死だ。思い切って首を支えながら慎重に横にする。


「ね、息をして。お願い。もうお母さんのお腹の中から出たんだよ、お願い。息をして」お尻を軽く何回も叩く。


 すると生まれたばかりの赤ん坊は一瞬身体を震わせる。そして、口の中から黒に近い色をした液体をデロっと吐き出した。


 少しの静寂の後、猫の鳴き声のような弱々しい声が部屋にこだまする。赤ん坊は断続的に声を発していたが次第にその声は大きくなってゆく。


「ああ、わ、わ、う、息、してる。泣いてる。うわあああ」横隔膜が痙攣しているかのように声が言葉にならなかった。


「やったね、やったね。よく頑張ったね、偉い、偉いよ。」私はぐったりしている少女の足を何回も叩きながら言った。


 さて、こうはしていられない。山は越したが病院に搬送しなくては。


 私は赤ん坊をタオルで包み、彼女の腕の中に寝かせると彼女の頭を撫でる。


「なかなかタフだったね。すぐ戻るから、電話借りて、救急車呼ぶからね。」


 私は部屋を出て、次々と同じ階の部屋のインターフォンを鳴らしてはドアを叩き、助けを乞う。しかし、どの部屋も全く反応がない。


 なんてこと。


 ふと、アパートの駐車場が見える廊下の窓に人影が映る。私は階段を駆け下りて人影を追う。駐車場に下りるとその男性らしき人影に向かって走りながら呼び掛ける。


「そこのお兄さん、ウィンドブレーカーを着て小さな買い物袋下げてるお兄さん!」


 男は一瞬立ち止まるとゆっくりこちらを向く。あたりを見回した後で、俺?と言いたげに自分の鼻を指差す。


 あなた以外に今誰がいるんだよ、バカタレ。


「突然ごめんなさい、実はスマホで救急車を呼んで欲しいんです。」


「えっ、具合の悪い人でもいるんですか?」


「同室の人間が出産をして、自分で呼ぼうとしたら、充電が切れて電話できないんです。」


「え、それは大変だ」言葉とは裏腹にとても落ち着いた低い声で答える。少しおちょくられている気分になった。


「とにかく、こっち来てもらっていいですか?」


「あ、はい。そういうことであれば。」


 部屋に男を上げる。改めてみるととても静かな部屋だ。少しの間とはいえ、少女が心細く思っただろうことを考えると胸が痛んだ。


 しかし、それにしても静かすぎる。さっきはあんなに赤ん坊の泣き声が響いていたというのに。嫌な予感がしてダイニングキッチンの扉を開けると、そこにはマットと丸まったタオルが何枚か置かれているだけだった。思わず膝から崩れそうになるのをこらえ、部屋のあちこちの扉を開けて回る。バスルーム、寝室、トイレ。でもどこにも少女と少女が産んだばかりの赤ん坊はいなかった。


「そんな、どうして」出るときはぐったりしていたのに、一緒にどこかへ行ってしまったのだろうか。


 部屋を出て探そうとする私を男が呼び止める。


「これ、見て下さい。」赤ん坊を包んでいたタオルをそうっと差し出す。


「なんですか。さっきまでそれに包んでたけど今は」


「これ。」


 男がタオルを慎重に開いてゆくとそこには薄黄色をした小さな子供のこぶしほどの大きさの泡のようなものがあった。


「え、これ、なんですか」


「うーん。多分オオカマキリかチョウセンカマキリの卵鞘、卵ですね。」


 おもむろに男が持っているタオルをそっと持ち、眺める。つやつやとして無数の光を放っている。


「で、赤ん坊はどこにいるんですか?」


「あ、う。」私だって知りたいくらいだったが、そんなことを言ってもこの男も余計に混乱するだけだろう。かといってこんな時に使える気の利いた言い回しというのも私は知らない。


「ごめんなさい。本当にさっきまでいたんだけれど、私の勘違いだったかもしれません。正直混乱していて何が何だか整理が付いていないんです。」


 男はしばらく考えるようなそぶりをすると云った。


「生きていればいろいろな物事に出遭うことがありますよ。病院に行けずに弱っていくお母さんと赤ん坊の代わりに、自然の中で放っておいても孵化してゆく昆虫の卵であってよかったですよ。」口の端を上げる笑顔がとても柔らかい。


 顔が次第に熱くなってゆくのが分かる。


「本当にごめんなさい。突然道で呼び止めて、ご迷惑おかけしました。」


「いいえ、僕は昆虫が好きなので逆に少しラッキーですよ。」玄関で靴を履きながら男は云った。「それでは。おやすみなさい」


 閉まりかけた玄関のドアがふいに止まる。


「あ、カマキリの卵なんですけどね。明日にでも外の適当な低い木かフェンスに紐か何かでくくっちゃった方がいいと思いますよ。部屋の中だと温かいから、冬でも孵化しちゃうし。」


「あ、そうなんだ。」云われてみればそうか、春と勘違いして孵化しちゃうのかも。「明日、そうします。」


「では」男は去っていった。


 部屋の中で卵を包んでいる泡をまじまじと眺めた。まるで赤ん坊が卵になってしまったように感じられて今夜起こったことがまだ整理できていないということもあったが、それ以上にキラキラとささやかな輝きを放つ卵鞘につい見とれてしまった。


 ふいにまさかと思い、少女に噛ませていたタオルを持ち上げると、そこには1匹のカマキリがいた。


「ここにいたんだね」


 カマキリはかろうじてお腹がぴくぴく動いてはいるものの、目の前に指をかざしたりそっと鎌に触れたりしてみても反応を返さなかった。不思議なものだ。ある程度大きくなってしまってからはトンボやカブトムシに触るのも意図的に避けていたのに、こうしてカマキリの横に寝そべっていても全然気持ち悪くない。いや、むしろとても愛おしく感じられる。


「頑張ったね、よく。」


 目の光を失ったカマキリに優しく声を掛けながら、断続的に続いていた緊張の糸は解け、私のあずかり知らないところで蠟燭の火を吹き消すように切れようとしていた。




 side B


 真っ暗だ。空気がじっとりと湿気を含み、服はまるで生乾きのまま身に着けているようで気持ち悪かった。洞窟の中だろうか。ほぼ視界はないに等しかったが音が異様に響く空間にいるようだ。その中を壁を手で伝いながら裸足で歩いてゆく。足の裏に土くれや時折木の小枝のようなものがくっつくのが分かる。


 これは夢だ。


 なぜか夢の中で夢だとわかる夢を見ることが時々あった。今回もそうなのだ。


 やがて、すこしずつあたりが次第に明るくなってゆく。遠くから水の音が聞こえる気がする。視界が開けていったおかげで、周りに霧か靄が立ち込めていることが分かった。鼻から息を吸うとほのかに草のような匂いがする。


 目の前が黒から白へ、水を含んだ空気はますます水を帯び、植物の匂いがより強さを増していった。


 奥の曲がりくねったところに強い光に照らされている壁がある。出口はもうすぐのようだ。はやる気持ちがある一方で妙な落ち着きを持ってゆっくりと足を進める。


 穴の中を出てゆくと、高い土の崖に丸く囲まれた場所に出た。まるで木のうろの中にいるようだ。見上げた空は無数の大きな丸い雲で覆われて青空が全く見えなかった。かなり広いところで、反対側の崖までは歩けば5分はかかりそうだった。中には腰の高さまである草や灌木が生え、ぽつりぽつりと背の高い広葉樹が立っていた。そこには、どこから流れてどこへ行くのかは分からないが、小川が流れていた。風は全くない。


 川に沿って歩いてゆくと、比較的小さな草ばかり生えている空地のような場所があり、大きな岩が川のすぐそばに横たわっていた。平たくて車を2台上に置いてもまだ余裕がありそうだ。岩の影から細長い木の枝のようなものがひょこひょこ動いているのが見えた。


 だれか釣りでもしているのだろうか。


 岩の裏の川辺の方へ回ってみる。すると男が一人、釣り糸を小川の中に垂らしているのが見える。男の座っている傍には数匹の魚が尾で川辺の石を叩いてぴちぴちと音を立てている。足音を立てないように慎重に近づいてゆく。彼はこちらには全く気付かない様子で竿をゆったりと動かしながら鼻歌を歌っている。名前は忘れてしまったがかなり前に聞いた覚えのある歌だ。


 懐かしい。


 男に近づいてゆきながらそう思った。


 男はこちらに気付かない。竿がその動きを変わらずに揺れている。よく見ると決して体格がいいわけではないが肩幅が広く、腕の付け根から腰にかけて印象的な輪郭を描き、お尻がその存在感をズボン越しに主張している。


 もっと近づきたい。なぜだか分からないけれど、強烈な飢えのようなものを男に対して感じていた。ゆっくりと足を進めるのと反対に心臓の鼓動が激しくなり、それと同時に気持ちが昂ってゆくのが分かった。


 ついに男の背中に手が届くところまで来ると、機嫌が良さそうに歌を口ずさむ男に、広げた両腕を男の首と胸に絡める。一瞬歌を止めた男は待ち構えていたかのように頭を傾けてこちらに向き、微笑んで見せた。(夢の中では確かに顔を見ていたのだけれど、あとになってから全く思い出せないのが少し残念だ。)


 私の両腕の中で男は再び歌い出す。背中や首筋に鼻を押し当てるように近づけて息を吸うと、洞窟の出口で感じた草の匂いとは違う清涼感のある、それでいて温もりと肉感のある汗の匂いがした。耳や掌に触れたお腹から感じる繊細な振動と相まって、頭がくらくらするような心地よさに包まれる。それと同時に身体の内側から来るむず痒いような感覚に気付く。それは次第に大きくなってゆく。


 唇を彼の首筋にそっと重ねる。ぴくっと肩が震える。彼は、胸に当てている私の手の甲に手を重ねる。もうそれ以上我慢はできなかった。


 彼の耳の下あたりを両手で捕まえると歌を奏でる唇を無理矢理塞いだ。口内に突っ込んだ舌先から彼の舌の律動を味わう。吸い上げた彼の舌先が口蓋の襞をくすぐる。

 

 男の手が私の二の腕に伸び、肩の少し下から肘にかけて優しく撫ぜる。背中から頭の天辺にかけて、突然そよ風に吹かれたかのように毛が逆立つ。甘い快楽がお腹の中でとろ火のように燃える。


 ふいに手を止めると、彼は滑らかな手つきで私の乳房を服の上からそっと触れた。まるでどこか特定のポイントを探り当てようと試みるように慎重に10本の指で撫でまわす。


 やがて、彼の手が服の裾から中へ入っていき、背中に手を回すとブラのホックを外した。弄るように手を腰へ持っていくと服を裏返して脱がされてしまった。微かに背中に当たる川を沿って流れる風と、目の前にいる男の身体から発せられている熱を、自然の中にさらけ出された私の上半身にひしひしと感じる。なぜだろうか、向かい合った男の視線が気持ちいい。その一方で男の「中身」がずっと気になって仕方なかった。


 ズボンを下着ごと掴むと一気に踝あたりまで下ろす。足の付け根の生い茂った草むらの間からは棒状の器官が斜め下の方を向いて立っている。とてもこの男の身体とは思えないほど彼の他の所の皮膚よりも暗い色をしていて、先端からはピンク色をした穴子のようなものが顔を覗いていた。男はとっさにそれを手で隠すと、上のシャツを脱いだ。私もスカートを緩めて下ろし、下着を取って足を交互に抜いていった。


 男は私の背中と足に腕を伸ばすとお姫様のように抱きかかえて岩の方へ歩いてゆく。岩には木でできたか梯子がかかっていて、彼は私を抱いてたまま登ってゆく。1段1段上がっていくうちに落ちてしまわないか不安が募る。腕の中で身体を縮こませる。


 岩の上に登ってしまうと男は私を抱きかかえたまま下に下ろした。背中から肩に手を回されながら岩の上から下を見下ろす。この大きなうろのような地形の外は見ることはできないが、時折風にそよぐ木、向こうの崖の方まで続く草原、それを割るかのように流れる川が見渡せた。木々の葉が青々としてゆったりと揺れている。


 綺麗。


 視点が少し高くなるだけでがらりと風景が変わって見えるのは不思議なものだ。


 男はおもむろに背中越しに乳房に触れる。指が両胸の先端をくすぐる。思わず口に手を持っていってしまう。すうっとする感覚と頭の中がふわっとする感覚がないまぜになって次第に何も考えられなくなってゆく。


 ふいに耳を唇で食まれる。


 いやっ。


 微弱な電流が身体を駆け巡って、ピンク色をした内臓や脳を刺戟する。私の身体が逃げないようにお腹を腕で抱えられながら、今度は舌で耳の裏と耳の穴を交互に舐められる。


 だめ。


 息が乱れる。お腹の一番底、恥丘から下に手を遣るとさらにその下の柔らかくて弱いところに擦りつける。すでにとても湿っていて、手を滑らせるとお腹から快感がゆっくりと広がって行って、足の裏がじわっと熱くなるのが分かる。


 男は執拗に乳首を指でこねくり回す。そして、思い出したかのように耳を舌で弄ぶ。その度に下半身がまるで違う生き物のように腰を自分の手に打ち付けたり、お尻をつけている岩肌に擦ったりしてしまう。顔と背中がとても熱い。


 ふいに、股に当てていた手を止めると、私は彼に向き合い、べっとりと粘液でまみれている指を彼の口元に当てると、唇をこじ開けて舌の上で何回か指を撫ぜた。そして、仰向けに彼を寝かせると服を脱がせた時よりも大きくなっている肉の笛のようなものをそっと握った。


 私の手の中でそれは硬くなったり柔らかくなったりを不規則に繰り返している。先端の皮膚は完全に剥けて燃えているように赤みを帯びている。口を近づけると独特な匂いが脳の縁を掠める。皮膚と赤くなっている先端の間を舌でつつくと、膨らんだ先端のおちょぼ口みたいな切れ目から透明な液体が蜜のように垂れてくるので、唇で歯を覆いながらそっと口に含んでみた。口の中でそれは不器用に上下し、上唇を優しく押す。頭を上下させながら口のそれを含むのは顎を精一杯開かなくてはならなかったが、その時の私は疲れなど全く感じられなかった。


 口から離してしまうと、男が今度は私を横たえて、両膝を立たせる。足の先からお尻の間、お腹の下の方まで彼の視線の前にすべて曝け出されていた。私は股の間を手で滑らせると膣に指を入れて押し広げてゆく。彼が上から腕立て伏せのように覆い被さる。彼のぱんぱんに膨らんだものを手で誘うとゆっくりと私の一番底の方へ導いていった。


 入り口がこれまで経験したことがないほど押し広げられてゆく感覚。思わず息が詰まる。一旦息を吸って吐いてゆくと少しずつ奥の方へ入ってゆくのが分かる。更に吸って吐くと入り口の肉の壁が力を失って男を受け入れてゆく。


 男が合図を求めるような顔で私の方を見る。私が肯くと、彼はゆっくりと腰を単調なリズムで腰を私のお腹に打ち付け始める。


 男の動きに合わせて呼吸をする。だんだんと息が揃って来る。最初よりも深いところまで抉られているようだ。彼の恥丘が私のクリトリスのあたりを圧迫するので、じわじわとさざ波のように迫る刺戟が体中を駆け巡る。快感と同時に身体の奥底から湧き上がる強烈な飢えのような感情が、私の両足を彼のお尻に抱き着かせた。


 彼は顔を近づけると、口で私の耳を吸う。


 耳、いやっ。


 顔を背けるが今度は反対側の耳の穴を舌で嬲るように吸い上げる。身体の下と上から同時に来る刺戟が脳からとめどない幸福感を湧水のように分泌した。


 それでもまだまだ飢餓感は止まらない。


 私は彼の首に腕を回すと首に何回かキスをする。その度に私のお腹の中で彼の者がぴくぴく大きくなった。肩を舌で舐めると川辺で首筋を舐めた時よりも強い匂いが鼻腔を刺戟する。


 おいしそう。


 肩を抱き寄せると私はそのつるつるとした肩に歯を突き立てた。


 男は一瞬苦痛で顔を歪めたが、腰の動きは留めなかった。彼の肩に付いた歯型から針でついたように丸く血が滲み出てきた。舌でそれを舐めとると今度は眉だけを歪める彼。


 おいしい。


 呼吸に声が混じるようになってきた。もうすぐ彼は達してしまうのだろう。首を甘噛みすると私の膣内が彼のもので上の方に圧迫されて気持ちいい。


 もっと欲しい。もっと。


 思い切り彼の首に歯を食い込ませる。彼は腕を岩に押して離れようとするが、私は振り落とされないように胸を押し当て、背中に回した腕をがっちりと固定する。その間、腰は何もなかったかのように私の中を抉ってゆく。


 硬い。首は案外歯が立ちにくいが、糸切り歯を意識するとアブに刺されたような穴がいくつも首に開いた。男が気怠いような、それでいて切羽詰まったような低い声で鳴く。


 歯を押し当てる角度を変えると今度は上手く肉に食い込ませることが出来た。その瞬間、男は絶望的な悲鳴を上げる。腰の動きがにわかに止まり、私の中で何回か跳ねるように震えた。彼の体液が私の最も奥に流し込まれてゆく感覚は、これまでに感じたことのない昂りと幸福感を身体中にゆっくりともたらす。


 歯がすうっと男の首筋に入ってゆく間、彼は身じろぎもしなかった。肉を当てている歯に、まるで根菜を噛むときのような感触を覚えた。くっと後に力を入れると私の中に入っていた肉の笛はしおしおとしぼんでゆく。


 ゴリッと音がしたかと思うと次の瞬間信じられない勢いで顔に鮮やかな赤みを帯びた温かい液体が吹き付けられる。男の身体は完全に力を失い、私の身体を押しつぶした。口の中に新鮮な血液が泉のように流れ込んでくる。私はそれを咀嚼しては嚥下する。


 おいしい。ああ、幸せ。


 顔中にまみれた液体を舌や手で拭いながら見上げる空は相変わらずの曇天模様で、吹き付ける風は穏やかに撫でつけ、彼のまだ温かい亡骸が覆い被さっていないところが少しだけすうすう冷えた。





 Bonus Track


 暗転。


 薄い金属の板に水滴が断続的に当たる音がする。


 それは開演のブザーとともにステージの幕が上がってゆくように私の瞼をおもむろに開かせる。


 とん。とん。……。とん。とん。とん。とん。……。……。とん。


 流しの蛇口、最近緩いんだよなあ。


 何回か深呼吸をすると、全身がとても冷えていた。身震いをした。


 トイレ行きたい。


 お茶を入れている間、久しぶりに見た激しい明晰夢についてぼんやりと思考を巡らすが、それは凍り付いた上り坂を歩んでゆくように上がっては元の位置に戻る繰り返しにしかならなかった。


 壁際に寄せたままのテーブルに置かれたデジタル時計は4:30を表示している。瀕死のカマキリの横で眠りに落ちてからそれほど時間は経っていなかったが、もう一度眠りにつくには目が冴え過ぎていた。


 紅茶の熱がカップを通して手を温め、食道を伝って少しずつ現実感を取り戻していった。


 ランニングがてら外に出ると、紺色の空が広がっていた。遠くに金星が光って見える。


 走り始めると、最初は冷たさを纏っていた太ももや二の腕も、ランニングの呼吸が整ってゆくにつれて次第に熱を帯びてゆく。額にうっすらと新鮮な汗をかく。顔が火照ってゆくうちに脳のクラッチが上手く噛み合い、思考のエンジンにこびり付いた汚れが落ちてゆくのが分かった。


 近くの運動公園を通ると、並木道を曲がり、テニスコートの脇の植え込みに足を進める、そして、ポーチの中からスコップを取り出すと穴を掘り、ティッシュの中にふんわりと包んだカマキリの亡骸を埋める。


 この植え込みに卵も括ってしまっていいかな。充電したてのスマホの照明で辺りを照らし、蟻の巣がないかしばらく探したが、何とかなるような気もして近くの灌木に紐でカマキリの卵を括った。


 金網越しに見える空は、紫色をした雲がたなびいて、遠くにある木々の隙間から橙色の筋が見え始めていた。


 今日はいい天気になりそうだった。




 余談だが、カマキリの卵を外に出すように教えてくれた昆虫博士の男は今私の伴侶で、私たちの間には二人の子供がいる。


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蟷螂草子 あじさし @matszawa

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