茜色の向こうへ
一色みらい
第1話 正しい形
「私って、学校好きだからさ」
そう言って笑う少女は、私の目にはひどく憎たらしく映った。
こげ茶色の髪を撫でる手。まばたきの合間に揺れる瞳。胸元で結ばれたリボンの形はとても綺麗で、彼女を否定できる理由なんてないはずなのに。
由夏といると、いつもこんな気持ちにさせられる。
由夏は成績優秀、眉目秀麗。あるべき中学生の姿をそのまま映しとったような少女だ。それに対し私はいつだって少し足りない。成績は人並みだし、見た目には気を遣っているつもりだけど別にモテる方じゃない。
由夏の隣を歩いていると、いつだって由夏が正しくて、私は間違っているのだと思い知らされる。相談するのは、愚痴を吐くのは、弱みを見せるのはいつも私。由夏が笑顔以外の表情を見せることは滅多にないし、脆い部分を見せてくれはしない。
私は静かに唇を噛んで彼女と同じような笑顔を振りまく。
「たしかに、学校ってなんかいいよね」
「そうそう、私、ずっと理央と一緒に学校にいたいもん」
少女はまだ分からないようだった。
私も分からないふりをする。
「えー本当?」
「ほんとだよ」
君が何も知らないなら。分からないなら私が教えてあげる。
「そっか、まあ私たち親友だもんね」
笑いあう二人は、ほとんど理想的な友達。これが正しい形だった。
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