「プレゼント」
scene-1
「ママー」私を見つけて、弾けるように走ってくる。今の生活の中で、一番好きなこの時間‥幼稚園のお迎え。大勢のお友達の中で、私を探す不安そうな表情が、「ここよ、悠人」の声に、パッと明るく笑顔になる。そして、私の腕の中に飛び込んでくる小さな身体‥私はちょっとかがんで、すべすべのほっぺたを両手で包み込む。可愛い可愛い、私の王子様。
scene-2
幼稚園の帰り道、悠人は私にたくさんの話をしてくれる。今日誰と遊んだとか、どんな絵を描いたとか、どの子とどの子が喧嘩して、誰が泣いたとか。私は大げさなあいづちを打ちながら、今日の報告をする悠人の言葉を聞いている。
一通り話し終わると、悠人は妙に真面目な顔をしてこう言った。「ねえ、ママ。
プレゼントってどうするの?」
scene-3
私はピーンときた。最近仲のいい女の子がいるのだ。三つ編みにいつも青いリボンの可愛い子‥確か由美ちゃん、ていう名前。そうかぁ、悠人はあの子に何かあげたいんだ。
「うーん、悠人がとても大切にしているものをあげたら喜ぶんじゃない?」
私の言葉に、悠人は「ふ〜ん」と何やら納得顔。あの子のこと好きなのかな。
悠人も男の子だねー。
Scene-4
翌日の夜。帰宅した旦那が、背広を脱ぎながら言った。「今日、上着のポケットからこんなものが出てきたよ」 見ると“当たり”と書かれたアイスの棒‥
あ。そう言えば、何日か前、夕飯の時「そろそろあなたの誕生日ね」って話をしてたっけ。それを悠人、聞いてたんだね。そう‥パパだったの。「悠人の悪戯だろ」と笑う旦那に、私は言った。「それ、一生大事に持ってること!」
でも、人生初めてのプレゼントがパパって、ちょっとヤキモチかな。いつかママにもアイスの当たり棒ちょうだいね、私の王子様!
end
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます