第31話 ゴブリンを探せ!
ルーナたちとダンジョンで訓練をしてから約一週間が経過した。
俺たちはその間に合計で3回ほど似たような訓練をルーナたちと繰り返して、ゴブリンの常時クエストを大量に完了させ、ギルドランクがさらに2つも上がってDランクとなっていた。
冒険者ランクDというのは、冒険者として見習いレベルから一般レベルに上がったくらいのランクで、日本で言えば研修期間を終えたというような状態らしい。
冒険者全体で見ればまだまだ弱いことは確かだが、Dランクは職業として成り立つレベルということになっている。
そして、その代償というか2日に一度というクエスト受注ではあったが、2日ごとにゴブリンが100体以上も倒されて最初を合わせて計4回。
俺たちはゴブリンを400体以上も倒している計算になるので、町の近くにゴブリンの集落ができたのでは? とギルドで問題になってしまった。
「朝早くから集まっていただきありがとうございます。それでは、ゴブリンを倒したという山の麓まで行きましょう」
「ヒナはルシオラおねーちゃんをぱーてぃにくわえた! ででんっ!」
「こらヒナ! ルシオラさんはパーティメンバーじゃなくて、ゴブリンの集落を調査するために同行してくれるギルド職員よ」
「ちょーさ!」
「わふぅ!」
「ルーナさん、何かあれば今日は私も戦いますから、ヒナちゃんの言っていることは間違いではないので大丈夫ですよ」
そう、ギルドはゴブリンの集落が、町の近くに出来ている場合には、ゴブリン集落討伐のクエストを出す必要性があるために、ギルド職員であるルシオラさんに調査を任せたようだった。
そして、異常な数のゴブリンを討伐しているのは現状で俺たちだけなので、ゴブリンを倒した場所へ案内していると言う訳だ。
もちろん、俺たちが倒したゴブリンは、俺のダンジョン産であるのでそこ以外にはいない。
俺たちはゴブリンの討伐をした場所を山の麓と言って常時クエストの依頼を完了させていたために、現在そこへ向かって移動することになっている。
俺がレイリーに目線を向けると、レイリーは何も言わないまま俺の目を見返して頷く。
レイリーには、俺たちがここに集まる前に、ゴブリンを気絶させて山の麓にある程度集めてもらうように頼んでいたのだが、どうやらそれは成功したようだった。
俺のダンジョンから夜のうちにゴブリンを移動させることも考えたのだが、俺のダンジョンのゴブリンたちは倒すと消えてしまうために、今回は使えないと気が付いた。
そこで現地のゴブリンを集めて気絶させ、俺たちが到着する辺りで目を覚ますようにレイリーに指示をだしておいたのだ。
「じゃあ行こうか」
町の門付近で集合していた俺たちは、俺の号令の下、山の麓へと移動を開始する。
移動を始めるとすぐにヒナがタタタッと草の茂みに移動すると棒を拾って戻り、それを振り回して遊んでいる。
ルシオラはそれを見て、頬を緩めていた。
「今日は表情を引き締めないんだな?」
いつもは俺の目線に気が付いて、ヒナを見てだらしない表情をすぐにキリリとさせるルシオラが、今日は特にそう言った仕草をしないのでつい話しかけてしまう。
「ここはギルドではありませんからね。仕事中とはいえ、表情まで気にする必要はないので」
「なるほど? 俺は可愛いもの好きを隠しているのかと思ってたよ」
「可愛いものは至高でしょう?」
何を言っているんだコイツは? という目線を俺はルシオラから向けられる。
エルフは美人で、そういう表情をすると氷像のように冷たい印象を受けるが……。
まさかギルド内で職務中だからキリリと表情をなおしていたとは。
「ま、まあそうだな」
ルシオラは移動中、ヒナがふらふらと茂みに入ったり出たりを繰り返すのを見ては、ハラハラドキドキした感じでその様子を見守っていた。
「完全に目線がロリコンの不審者な件」
「マスター……。ルシオラ様はバジュラも見ていますからロリコンではないかと」
俺の呟きにレイリーが突っ込む。
「誰がロリコンですって!? しかし話には聞いていたけど、本当にヒナちゃんもこんなに動けるのね。これならゴブリンから逃げることは問題が無さそうで安心したわ」
エルフは耳が大きい分、俺とレイリーの小声にも反応できるのだろうか?
「すでにヒナはゴブリンも倒せるってことは報告したはずだが?」
「そ、それも聞いたけど……、さすがに危ないんじゃないかしら」
「まあ、ヒナの安全を確保したうえでゴブリンがいたらそれも見せてやる」
ヒナが戦えることは、たしかに自分の目で確かめないと信じられないのも無理はない。
やはり、口で説明するより、戦う所を見せる方が手っ取り早いだろう。
ヒナが移動をしながら遊び、バジュラはヒナの護衛、ルーナもそれを追いかけながら俺たちは先を進んでいくのだった。
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