第28話 仕様変更
自分で作った後に何度か入り口から入り2階層への魔法陣(隠蔽中)までの道のりや、小部屋の確認などは既に何回もしているのだが、眷属であるレイリー以外にダンジョンを見せるのはこれが初めてなので少しだけ緊張する。
ルーナもヒナもダンジョンに入ったことはないはずだから、別のダンジョンとの比較はできないだろう。
そうなると、今回の俺のダンジョンがダンジョンとはこういうものだと言う認識になってもおかしくはないので緊張もしようかと言うものだ。
「これがダンジョン。もっと内部が暗いものかと思ってたけど、早朝か日が落ちる少し前くらいの明るさがあって結構見やすいね」
「まあ内部でも場所によるな。薄暗い場所もあったぞ」
「ぼうけん! ヒナ てきたおす!」
ダンジョン内部は光源は特に見える所にはないが、周りが見渡せる設定にしている。
ろうそくや
ヒナは初ダンジョンに委縮することもなくやる気満々のようだ。
「がぅぅぅ」
「お、バジュラが反応しているな。敵か? 恐らくゴブリンだ。ヒナがやるか?」
「キョウジ!? ヒナで大丈夫なの!?」
「まあ、大丈夫だろ(ダメージのある攻撃はしてこないように命令してあるしな)」
「ヒナやるぅ! きちゃないはなびちらす!」
「おー、俺が魔法を使えるようになった時に話したことを覚えていたのか? お、やっぱりゴブリンだな。武器は持ってないし大丈夫そうだな。ヒナ頑張れ」
ゴブリンはこちらを認識したが、攻撃的になることもなくゆっくりとこちらに向かって来ている。
それを確認したヒナはダッシュをして一気にゴブリンの足を短剣で切り裂いた。
ヒナが移動すると同時にバジュラも並走をしていたのだが、ヒナに任せて攻撃をすることはないようだ。
もしもの時のために並走したのか?
正直、バジュラの知能と戦闘力はかなり高い様に思える。
「はちゃー」
ゴブリンは足を引き裂かれて正面に倒れた所を、後ろからヒナに背中を刺されて絶命する。
その瞬間にゴブリンは消えて魔石となった。
絶命する前までは血しぶきは上がるが、死んだ後は綺麗に消えるのがドロップ式の良い所だよね。
「やっちゃー!」
「偉いぞ、ヒナ」
「大丈夫!? 怪我してない?」
ヒナは大喜びの反面、ルーナは無傷で倒した戦闘を見ていたにも関わらず、ヒナを心配していた。
「まあ、最後で決められない場合は短剣を差し込むと、抜けずに危険になる可能性がある。突き刺す場合は次からはもう少しダメージを与えてからだな」
「あい!」
俺が転移したばかりの時に油断をして刺されたが、そのときの相手も刺したことで満足をして俺にサッカーボール蹴りをされて命を落としていた。
あの時は俺が完全に油断をしていたから、もし刺された後にすぐに剣を抜いて次の攻撃にうつられていたらもっとダメージを負っていた可能性があったのだ。
「次はルーナがやってみよう。大丈夫、レイリーに教わった剣捌きで落ち着いて攻撃をすれば問題ないよ」
「が、頑張るわ!」
順次ゴブリンにはこちらに移動する様に指示をしているので、そろそろ次が来るはずだ。
バジュラが少し反応したのでもうすぐだな。
「そろそろ次が来る。ルーナ、頑張れよ。ってか腰が引けてるぞ。いつもの強気はどうした?」
「おねぇちゃん、がんばぁ」
「ううぅ。やってやるわよ!」
ルーナはいつも強気でそこそこキツイ言葉使いをするのに、ゴブリンと戦闘をすることに腰が引けていたので煽ってみると、やけくそになったのかゴブリンに切りかかり見事に倒してみせた。
ルーナもヒナもゴブリンを倒しても魔物だからか精神的に落ち込むこともないようだ。
そこで俺はゴブリンに少しだけ動きをつけようと考えた。
ちなみに指示はこっそりとレイリーがゴブリンたちにしている。
そうして数時間、ゴブリンには一定以上の傷をこちらに付けなければ何をしても良いという命令を出したのだが、それにもヒナとルーナ、ついでにバジュラも完勝するまでになっていた。
「はぁ、はぁ……。もう何十体倒したのかさえ……」
魔石の数を見ると98個あるので、俺とレイリー以外の三人で倒した数は一人平均33体ほどか。
魔石の他にたまにレアドロップでこん棒が12本ほどドロップもして、それは俺のアイテムボックスに収納した。
さすがに初日でこれはやりすぎたか?
しかしヒナは本当に凄いな。
疲れても少し休憩をすると復活をしていた。
ルーナもヒナもバジュラでさえ、ゴブリンを数体倒した後に動きが見違えるようになっていたので、もしかしたら魔物を倒すと経験値的なものがあってレベルが上がっているのかもしれない。
「たしかに結構な数を倒したが……、まだ昼になったばかりなんだよな。レイリー、休憩がてら二人を屋台にでも連れて行って食事にしてくれ。俺はここに残ってゴブリン退治を継続する」
「了解です、マスター」
「キョウジは食べなくて良いの?」
俺が昼食をとらないことが気になったのか、ルーナが聞いてくる。
「まあ午前中は俺とレイリーはほぼ何もしていないしな。腹も減っていないし、ここで少し俺も働くよ」
「そう、一人なんだから無理しないでよね」
「ああ、心配してくれてありがとう」
「おにくぅ~。ヒナ、おにくたべちゃい!」
「はは、レイリー、ヒナに肉串でも買ってやってくれ」
「了解しました」
「やっちゃー!」
「ではルーナさま、ヒナさま、バジュラ。行きましょう」
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