第14話 静かな森



 遥か向こうに街を眺めながら大きく弧を描き迂回して歩いている。

疲れ果て、小石につまづき、草に足を滑らせながら、ベディエはゆっくりと弧を描きながら歩いている。

喉の渇きも尋常ではなくなっている。

目の前の風景がなくなり、見えるものは形のない色だけになる。

パステルナークが声を掛けてきても、最早、ベディエにとっては音だけになる。

ベディエはとうとうひざまずき、額から地面に向かって突っ伏してしまう。


 どれくらいの時間が経ったのであろう。

かなり長い時間だったと思うが、実際には束の間であった。


「ベディエ、起きなさい。前を見なさい」


 何度も母の声が聞こえたような気がする。

ベディエは目を、やっとの思いで開けると、地面に生えている野草を見る。


「ベディエ、見るのです、起きて前を見なさい」


「母さん・・・。」


 そう言うとベディエは上体を起こす。

開けたままの目は、まだ前方を捉えられない。


「ベディエ、しっかりしなさい」


 そう言われてベディエは、何度も瞬きをして前方を定めようとする。

徐々に目前の景色の形がはっきりしてくると、


「母さん、あれは?」


「そう、目指していた森です、破壊されてはいませんでした。さぁ、あそこまで頑張りなさい、頑張って歩くのです」


「母さん、うん、歩くよ」

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