第2話 その場所は



 今、立っているこの場所が分からない。

周りは木々に囲まれ、遥か彼方に岩山がある。


「母さん、此処は?」


とベディエが尋ねると、


「此処は、お前の父と母が初めて出会った場所です。此処へ来る前に居た場所、時の扉があった場所です。但し、時代が違うのですが」


と朱色の鞘に収まったパステルナークが答える。


「この森を抜ければ道があった。お前の父と私が二人で歩いた道だ。今、有るか無いかは行ってみないと分からない。然し、方角だけは感覚で分かる。今すぐ歩けますか? ベディエ」


「大丈夫です、母さん」


「ならば、歩きなさい、正面に見えている岩山の逆方向です」


「はい、分かりました」


 暫く歩いて行くと、森は開け、見渡す限りの大地に出る。

然し、そこには道と呼べるようなものなど何一つ無かった。

そこは、雑草が生い茂った広大な大地が風に吹かれているだけであった。


「ペディエ、案ずるな、真っ直ぐに進みなさい。その先には栄えた村があったのですが、この分だと村も寂れて無くなっているでしょう。然し、歩きなさい、道の無いこの道を歩かなければ会えないのです」

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