第37話 スカル・バンディッド(2)
話を聞き終わり、オレはメンバーを見回した。
「確認だが、これからブラック・マンバと、どうしたいんだ?」
「どうって?」
大が顔を上げて訊き返す。
「このまま逃げて、関わり合わないっていう手もあるぜ……?」
俺がそう言うと、皆の顔がさっと赤くなった。
「馬鹿野郎っ! そんな訳にいくか! 喧嘩になった理由はさっき言ったとおりだ。このまま、あいつらを放っておく訳にはいかない。何より、負けたままっていうのも我慢できねえ!!」
大が吠えた。メンバーも皆、一斉に頷く。
「そうか。お前らが変わってなくて安心したよ」
俺はどこかほっとして、笑いながらそう言った。
「お前なあ、試したな?」
大が腕を組んでむくれる。
「いや、まあ。そういうつもりじゃなかったが、結果的にそうなっちまったか……。すまん」
俺は頭をかきながら謝ると、
「さっき、奴らが妙にタフだったっていう話があったな。そこをもう一度詳しく話してくれないか」と言葉を続けた。
「ああ、頭がおかしくなったって思わないでほしいんだが……」
大が話し始めた。
「俺が奴らの金属バットを取って、それで殴ったんだよ。はずみで顔も殴ったんだ。だが、何ごとも無かったかのように立ちあがってくる。それに、噛みついてくる奴もいる。それで大怪我を負っちまったメンバーもいるんだ」
「噛みつかれた!?」
「ああ。奴ら、何かがおかしいんだ。ただ、タフなだけじゃ無い。目の色が違うっていうか、狂ったような感じっていうか……」
一哉も同調する。
「戦える人間はここにいる四人だけなのか?」
「いや。あと、義男や雄介たちの六人がいる。動けるのは全部で十人……いや、竜一も入れて十一人だ」
大が言った。
問題は悪魔が具体的に何を企んでいるかだ。それをうまく邪魔することができれば、自ずと目の前に奴は現れるような気がする……。
考え込んでいると、風が吹き、小さな
風が止むと、そこにはいつの間にか、真っ黒コートを着たルイが立っていた。
「誰だ、こいつ!?」
浩二が悲鳴に近い声を上げた。
「ルイ……さん」
俺は呟いた。
「竜一、知っているのか?」
大に訊かれ、俺は頷いた。
「何かヒントでも持ってきてくれたのか?」
「ああ。悪魔と邪霊を倒す方法を教えに来た。その上で、作戦を立ててほしい」
ルイは言った。
「分かった……みんな聞いてくれ。この人、実は俺の目を覚ましてくれた人なんだ。超能力者というか占い師というか、そういうことが得意な人なんだ。狂ってるブラック・マンバの奴らを倒すためには、この人の知恵がいる」
俺は言葉を選び、慎重に説明した。
「知り合いか?」
「俺の遠い親戚なんだ」
「そういうことか……で、名前はなんて言うんだ?」
周りにほっとした空気が流れ、健介が訊いた。
「名前は……し、いや、
「ああ、さっきもそんな名前を言ってたな……だが、ルイって外人みたいな名前だな」
大が笑って言った。
俺はとっさに口から出任せを言ったが、誰も疑っている様子は無かった。
「悪魔とか言う言葉が聞こえたが、やっぱり、奴ら普通じゃ無いんだな?」
大が訊いた。
「ああ、そうだ。薬と特殊な催眠術のせいで変になっているのだ。普通に殴り倒せば終わりって訳にはいかない」
ルイはそれっぽく理由をつけて言った。確かに、薬のせいってことにした方が皆、信じてくれるだろう。
「じゃあ、西上さんの話を聞いて作戦を考える。気合い入れて聞くんだぞ」
メンバーに喝を入れるために、そう言うと、
「気合いって、またかよ」
「気合いはいつも入ってるっつーの」
「まあ、でも竜一くんがいれば気合いの入り方も違うか……」
皆が口々にツッコミを入れ、笑いが広がった。
そんなつもりじゃなかったんだがな、と思いながら俺は頭を掻いた。みんな、冗談めかして言っているが、表情は真剣だった。
「それじゃ西上さん、具体的に何をすれば、奴らにダメージを与えられるんだ?」
俺はそう言って立ち上がると、ルイを見た。
「まず、大量の塩がいる。皆、人数分のバケツとそれに一杯の塩を用意してくれ。それに街の中心にある大銀杏の枝だ。それもたくさんいる」
「そんなもの、何に使うんだ?」
大が訊ねる。
「この塩が秘密兵器なのだ。まあ、彼らを正気に戻すための薬だと思えばいい。まずは、奴らが仕掛けている呪いを邪魔する。さっきも少し言ったが、これは催眠術のようなものだ。奴らのアジトを急襲し、彼らを言ったん倒して塩をかけると……」
メンバーは、みんな一様に不思議そうな顔をしていたが、ルイの言うことに集中していた。
俺は大きく息を吐いて、その様子を見守った。
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