君と過ごした365日
赤猫
そんなところにいたのかよ
拝啓そっちの生活はどうでしょうか?
俺は遠くに行った君が何をしているか考えながら今大学受験のための勉強を頑張ってます。
君が俺の背中を押してくれたおかげで俺は夢に対して迷いなく進もうと決意出来ました。
本当にありがとう。
「なぁ⋯毎年ここ来るけどさ、実感ないわ」
俺は彼女の眠っている墓石を指でそっと撫でながら呟いた。
体が弱かったわけではなかった。
交通事故である。本当にあっけないけど彼女らしい最後だった。
道路に転がってしまったボールを子供が取るために飛び出してしまいそれを見た彼女が庇って代わりに轢かれただけだ。
俺はそれを実際には見ていない。
なんでよりによってその日俺は先生に押し付けられた雑用を断ることが出来なかったのだろうか。
彼女の最後の言葉は「また明日!来週はデートに行きたいね!」だった。
その願いは叶わずに終わってしまったけども。
「あーあ、デート楽しみにしてたんだけどな」
素直に言えなかった。
別にとかなんでもいいとかいつも素っ気なく自分の照れている所を見られるのが少しだけカッコつかないと思って隠していたけど、ちゃんと言えば良かった。
「好き」だとか「俺も楽しみにしてるとか」言えば良かった。
なんで今更こんなに後悔ばかり出てくるんだろうか。
涙が出ないんだ感情の行き場がなくてただ積もっていくだけで吐き出せなくて苦しい。
なぁ、どうしたらいいんだよ。
「泣きたいなら泣きなよ」
俺にそう言って抱きしめてくれた彼女はもういない。
俺の泣き顔を「酷い顔」って言って笑ってくれる君はいない。
それで少ししてから「ほらシャキッとしなよ!」って言って俺の背中を思いっきり叩いてくれる君がいない。
ずっと一緒にいてくれない。
嘘つき嘘つき。
女々しいってわかってる君が今の俺を見たら怒るくらい弱虫なのは理解している。
でも俺はお前といないと生きていけない縋らないと俺を保てない。
下を向いて唇をぎゅっと結ぶ。
すると俺の頭をガツンと誰かが叩いた…ような気がした。
慌てて振り向くがそこには人はいない。
ただ愛しい声が俺に対してこう言ったような気がした。
「いつまで下向いてるんだドアホ!前向けばーか」
なんだお前そんなところにいたのかよ。
俺は涙が出てきてぐちゃぐちゃになった顔を勢いよく袖で拭って笑ってみせた。
君と過ごした365日 赤猫 @akaneko3779
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