第2話 依頼者の元へ

 癒理子は善知鳥から聞いた情報を頼りに、一度ホテルに荷物を置いてから依頼者と会う予定をしているファミレスへと向かった。藤本隆文という少年の父親である依頼人が指定した場所は、一般的なファミレスだ。

 おしゃれな雰囲気のある店内には、ドリンクバーや客にも安心感のある落ち着いた外見には安堵の息が自然と漏れる。私は善知鳥からもらった写真から、依頼人の外見の特徴を覚え、特定の席に座り私は依頼人を待つことにした。

 先にタッチパネルで注文を済ませ、ドリンクバーで紅茶を飲んでいた。

 ……うん、この店の紅茶は一般層受けのいいタイプのものだなと感心する。カップを口に付けて、香ばしい紅茶のアールグレイを堪能する。

 すっと横から、中年そうな男が、私に頭を下げながら笑顔で声をかけてくる。


「すみません、お待たせしました」

「いえ、そんなに待っていませんよ。藤本さん。さ、お隣どうぞ」

「ありがとうございます」


 藤本父が私の前方の席に座る。

 気まずそうに口元に手を当てて小声で聞いてくる。


「その……本当に貴方が刧医なのですか?」

「自分の息子と同じくらいにしか見えませんか?」

「い、いえ! お医者様を年齢で判断はしないようにしていますが……その、あまり刧医の方があまり少ないのは知っていますので、その……闇医者的な存在だとも聞いていて、お金も高額だと……聞いていたもので」

「私は正規の刧医なのでそれはありません。他の正規じゃない存在が多額な報酬をふっかける者はいますが、まあ人口が少ない者なので、そういうことをする方もいらっしゃるのは嘆かわしいことですね」


 藤本父は安堵に顔が綻ぶ。

 彼が出会った他の刧医たちが、相当ろくでもない人間ばかりだったのだろう。

 続けて、藤本父は癒理子に恐る恐る尋ねる。


「で、では……息子の治療金は」

「患者の症状と依頼人の懐次第にもなりますが……それより、待ち合わせで何か一品注文しないのですか? 怪しまれますよ」

「そ、そうですね」


 私と藤本父は一緒に食事を摂って、彼の家に招かれ、正確な情報を聞くためにもお腹をいっぱいにしておくのだった。

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