第504話 目覚め 上
まさか知らない天井を経験するとは思わなかった。どこや、ここ?
上半身を起こし、周りを見回すと、侍女らしき女性が入ってきた。
……どこかで見たような……?
「チェレミー様!?」
あ、思い出した。王妃様の身の回りをする侍女だ。
「あ」
呼びかける前に部屋を飛び出していってしまったのでベッドから出た。
「あのときのままか」
わたしの服は決まった者にしか脱がせられないようにしてある。もちろん、自分でも脱げるけど、この国の決まりか習わしかは知らないけど、身分ある女性は侍女やメイドが服を着替えさせる。それはなにか間違いがなかったか、不貞がないかをチェックするからみたいよ。
なんじゃそりゃ? と思ったけど、小さい頃からやっていることだし、悪戯されるのも嫌なので服には付与を施しているのよ。
困ったわね。さすがに収納の指輪やアイテムボックスワールドに替えのドレスは入れてなかった。ドレス系はメイドが管理しているからいざってときの服と下着しか入れてないのよね……。
「こんなことがあるとは想定してなかったわ」
わたしもまだまだね。この失敗は次に活かすとしましょうか。
仮面に手をかけると、いつの間にか外されていた。
「世界樹で作ったから渦にやられたかしら?」
服も所々燃えたように煤になっていて、なかなか酷いことになっていた。それでも下着までは届いてなかったのが救いね。
聖衣にしたドレスなので、ガチガチに固めているから脱ぐのが大変だわ。次は強制パージできるように改造しようっと。
前に防御力を振ったので、留め具は背中や脇に寄せたから外し難い。なんでこんなデザインにしちゃったかな? 一人で脱げないじゃない。
悪戦苦闘していたら王妃様と侍女たちが入ってきた。
あ、ベールも入れてなかったわ。
被るものもないので手で火傷部分を隠した。
「誰かベールを」
すぐに察した王妃様がベールを用意してくれた。
すぐに出せるってことは前々から用意していたみたいね。これは、ドレスも──と思ったら侍女が持ってきた。
「目覚めてよかったわ」
「ご迷惑をおかけしました」
「いいのよ。なにがあったかわからないけど、あなたがやることに必ず理由があるはずだからね」
わたしの理解度がハンパない王妃様だ。
「倒れていた男性はどうしました?」
「隔離しているわ」
「絶対、逃がしたり自害させたりしないでください。渦を宿した貴重な検体。失ってはゴズメ王国の大損失です」
そのために苦労したのだ、ここで失うわけにはいかないわ。
「どうやらとんでもないことが起きていたようね」
「わたしはどのくらい気を失っていましたか?」
「夕方にあなたを発見してから半日は過ぎたわ。もう少しで夜が開けるわね」
午後の二時か三時くらいだったから十二時間は気を失っていたわけか。毎日の魔力籠めが生きたわね。それでも目覚めるのに半日もかかったってのは無茶したようだわ。
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