第473話 経験 下

 渦感知センサーが追加されたモノクルをかけて聖騎士たちの戦いと渦の動きを観察すると、渦が霧みたいに見え、強弱があることがわかった。


 やる気に満ちた聖騎士が狼の魔獣を倒すと、纏う黒い霧が霧散し、周囲に広がった。


 やはり精霊力では渦は消えないか。巫女の力はなにからきているのかしらね? 世界樹の滴から作れる聖水は効果があるのにね。


 収納の指輪から世界樹の葉を出して周りに撒いた。


「タルル様には世界樹の葉はどう見えます?」 


「どうとは?」


「光ってます? 歪んでます? 色はどうです? 周りの草木と同じですか?」


「うーん。揺れているように見えるな」


 揺れている? なんじゃそりゃ?


「説明が難しいが、葉が揺れていて渦が嫌がっている感じだな」


 磁力的なものかしら? 


 モノクルで見ると黒い霧に見える。妖精と人間では違って見えるのかしら?


「まだまだわからないことばかりだけど、世界樹の葉も効果はあることはわかったわ」


 いろいろ試して経験を積んでいくしかないわね。


 渦に歪められた狼はそこまで多くないのでそう時間はかからず駆除されてしまった。


「巫女たち。浄化を」


 馬上にいた巫女たちが降り、杖を掲げて浄化を始めた。


 杖には能力向上も付与しているから効果範囲も広くなった。


 それもモノクルで見るけど、わたしの目では白いオーラ的なものが黒い霧を侵食している感じだ。


「見ている次元が違うのかしら?」


「じげん?」


「この世界はいくつもの層が重なっているって理論です。人間がいる層。妖精がいる層。渦がいる層とね。層と層の間を超えるには特別な力がいるみたいな感じです」


「お前は不思議な考え方をするのだな」


「渦の謎を解き明かしたいのならそういう考えができる者を集めることです。わたしはそういう考えはできても検証していく力はありませんからね」


 わたしにそんな時間はないの。わたしがやりたいことはスローライフ。おっぱいに囲まれたキャッキャウフフなのよ!


「渦を解明する突破口は開きました。あとはゴズメ王国の仕事であり、渦の専門家として主導権を得る機会です。他国より有利な立場になりたいのならがんばることです」


 それはゴズメ王国の力となり外交カードの一枚となる。わたしに握られたくないのなら必死にがんばることだ。


「……お前が有利になっているようにしか見えんがな……」


「有利に生きるようにするのは貴族としての正しい在り方ですよ」


 いろいろ自由を奪われることもあるけど、わたしは貴族という立場をそれなりに気に入っている。おっぱいに囲まれた生活を送るにも貴族って立場は有利に働いているからね。


「ある意味、お前はブレがないな」


「わたしは一生ブレることはありませんよ」

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