第2章

第52話 おっぱい富士

 平和な冬が続いている。


 とは言え、朝のウォーキングも厳しくなっていくわ。今日は氷点下になってそうだね。


「グワァ~」


「クワァ~」


 ウォーキングに付き合わせているレオとラナの二匹も今日の寒さに嘆いていた。いや、君たち寒い地方の種でしょう。


 モルチャカは寒い地方に生息して冬にも強いとマゴットは言ってたんだけどね。環境のよいところで飼っているから退化したのかしら?


 三十分ほど川沿いを歩くと、太陽が山から出てきた。


 この世界に日の出を拝む習慣はないけど、綺麗なものには感動するのは世界は関係ない。つい立ち止まって見とれてしまった。


「お嬢様」


 護衛のランがわたしを庇うように前に出た。


 なに? と思ったら川に大きな鹿がいた。いや、鹿か? トナカイくらいあるわね……。


「モルタンか。珍しいのぉ」


 と、横からコノメノウ様の声が。びっくりして振り向いたら巨大な狐がいた。


「……コノメノウ様ですか……?」


「ああ。久しぶりに早く目覚めたのでな、散歩しておった」


 まったく気配は感じなかった。足音すらなかったわよ。ランだって気づかなかったみたいで驚愕した顔をしているわ。


「危険な生き物なんですか?」


「いや、ただデカいだけの獣だ。縄張り争いに負けたかして山から下りてきたんだろう」


「獣の世界も大変ですね」


 あんなに大きいのに負けちゃうんだから。


 モルタンと言う鹿はコノメノウ様に気づくと、凄い勢いで川上へ逃げ出してしまった。


「コノメノウ様は獲物を狩ったりしないんですか?」


「そんな野生は数百年前になくなっとるよ。人の食い物のほうが美味いしの」


 内臓もそう変化したのかしら? 聖なる獣は進化がハンパないわね。


「塩分の取りすぎはダメですよ。あとお酒も。ほどほどにしてよく運動してください」


 狐が痛風になるかわからないけど、生き物は生き物。塩分取りすぎは毒なはずよ。


「そなたは健康的だな」


「よりよい人生を送るには健康な体が必要ですからね。規則正しい生活を送ることは大切です」


 コノメノウ様のお陰で早寝早起きができて、昼寝時間も減った。最近では読書する時間もできたわ。


「やはりそなたは変わっておるな」


 規則正しい生活をしてて変わっているなら、なにが規則正しい生活なのかを教えて欲しいものだわ。


「戻りましょうか。お腹も空きましたし」


「そうだな。モルタンを見たら肉が食いたくなった。ロースト肉はあるか?」


「ないと思います。作るのが手間ですからね」


 コノメノウ様、お酒だけで生きていけるのかと思ったら普通に食べる。いや、ガイルの料理が美味しいとわかると、毎食五人前は食べるようになったわ。お陰で料理人を増やそうかと検討しているわ。


 まあ、コノメノウ様のお世話代はもらっているのでマゴットにお願いして料理人を探してもらっているけどね。


 館の前までくるとコノメノウ様が幼女に変化。相変わらず質量って言葉が行方不明になっているわね……。


 冷えた体を温めるためにお風呂に直行する。


「わしも入る」


 湯浴みは嫌いだと言ってたコノメノウ様。お風呂に目覚めたのかよく入るようになった。たまに夜中に一人で入っているわ。


「酒ないのか?」


「朝風呂くらいお酒は控えてください」


 いつの間にか現れたラグラナがコノメノウ様の服(変化のときに着ているらしいわ)を脱がし、わたしの服はアマリアが脱がしてくれた。


 ラグラナとアマリアも服を脱ぎ、わたしたちの体を洗ってくれた。


 ……朝からWおっぱいとは景気がいいわ……。


 でも、さすがに四人は狭いわね。この倍はないとゆったりできないわ。


 アマリアのおっぱいが触れて考えが纏まらないわ。ここはおっぱいの感覚と揺れを楽しみましょう。


 体を洗ってもらったら湯船に。Wおっぱい富士を眺めながら温まった。


 今日はいい日になりそうな予感がするわ。


 お風呂から上がり、朝食の席についたらマクライが今日の予定を尋ねてきた。


「部屋で仕事をするわ。なにかあった?」


 なにか予定が決まっていれば事前に報告してくれる。突然尋ねてきたってことは突発なお客でもきたってことでしょう。


「以前、お願いされておりました騎士がやってきました」


 騎士? なんだっけ?


「お嬢様を護衛する騎士でございます」


 あ、そう言えばお願いしてたわね! ランが護衛に立ったから完全無欠に忘れていたわ。


「護衛ってランじゃなかったのね」


「ランは館内での護衛です。もちろん、お出かけの際もお付きしますが」


 そうだったのね。思い至らなかったわ。


「では、朝食後に会うわ。今日到着したの?」


「はい。お嬢様がウォーキングに出たあとに到着しました。夜通し馬を走らせてきたようです」


 随分と急いできたみたいね。別に切羽詰まってないのに?


「……なにか、あったの……?」


「帝国の船団がバナリアッテにきたそうです」


 あら、冬も航海するんだ。荒れたりしないのかしら?


「つまり、警戒しろと?」


「あちらは警戒しているようです」


 それだけの人物がきたってことか。厄介なことにならないといいけど……。

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