第26話 四章② 『追憶①』
クルトガ・ティエット。
彼は〝聖堂教会〟―――――――パルティカン共和国お抱えの
悪を裁くのは勿論だが、異端者も話しを聞き道を踏み外した者には慈悲の心を以て更生させたりと、とにかく人気のある神父だった。
そんな彼は幼い娘を残し妻に先立たれても立派な父親を目指していた。
時に優しく、時に厳しい、そんな彼を娘のアシェアは大好きだった。
しかし、
そんな幸せな日々は長くは続かなかった。
ある日、悪魔祓いを行った際に悲劇は起こった。
彼が断罪した異端者の家族が娘を人質に立て籠もってしまったのだ。
クルトガは必死に説得をした。
自分を恨んでいるのなら自分を殺せばいい。
だが娘は返してくれ。
そんな説得も虚しく目の前で娘は殺されてしまったのだ。
無力だった。
彼が断罪したのは元々殺人を犯すような犯罪者だった。
そこに悪魔が憑りつき断罪を余儀なくされたのもあった。
周囲の人は感謝の気持ちを。
だが、その異端者と言われた者の家族は恨みの念を持っていた。
恨まれるのは分かる。
だが、
娘は何をした?
何故神は私の娘を救ってくれない?
何故?
なぜ?
ナゼ?
そんな疑問が尽きることは無く目の前が真っ赤になり、
曇天の空に向かって咆哮した。
そこからはもう覚えていなかった。
ただ力の限り手にしていた純白の十字の杭を振りかざしていた。
近くにいた者全てを断罪した。
娘を殺した者も、その家族も、何もしなかった同じ部隊の人間も、周囲にいた野次馬も、全てを断罪した。
そもそも〝聖堂教会〟異端審問官の中でも異端であったクルトガを良く思っていない者は多かった。
そんな事もあり、彼を気に掛けるどころか罵詈雑言を投げかける者もおり次第に心を病んでいった。
そう、
信じていた『神』に裏切られた。
仲間だと思っていた者にも裏切られた。
人格者であればあるほど慕ってきた人々は全て彼を裏切った。
ならば、
自分も『神』を裏切ろう。
仲間は全て『駒』であり、守るべき人々全てはその辺に生えている『雑草』と同じだと認識した。
そして彼はその日から変わってしまった。
魔術、魔導、仙道、陰陽道、ブードゥーなど東西南北ありとあらゆる分野を調べ尽くした。
だが、そもそも死者蘇生の秘術はどの文献にも載っていない。
彼は娘の墓の前で祈り続けていた。
その行為は神に捧げているのではなく、無力な自分を赦して欲しいと懇願する父親の姿だった。
そして、
クルトガは全てを諦めようと〝死〟を覚悟した。
そんな時、
まさに悪魔の囁きが彼の耳に届いた。
内容は今でも恐ろしい。
『神』に背くどころか人道をも背く行為。
それが、
彼がたどり着いた一つの道だった。
『
それは、神をも恐れぬ行為そのものだった。
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