リアルフィクション~Real//Fiction~ 俺の幼馴染みには本人も知らない〝秘密〟がある。
がじろー
第1話 序章① 『幼馴染み』
まずは彼女―――――
彩羽は幼少の頃から少し変わった少女だった。
よく誰もいない場所に手を振っていたり、
両親はそんな彩羽を最初は想像力豊かな娘だと可愛がっていたのだが、そんな日々が数年続いていくと両親だけでなく、周りの友人やその両親でさえ気味が悪くなってしまっていた。
そして―――――気付いた時には彼女は周囲から孤立していた。
話しかけても誰からも相手にされず、ただ腫れ物に触れる様に距離を置かれていた。
彩羽は徐々に心を閉ざしていくようになってしまい、高校に上がる頃には彼女は誰とも関わらないように過ごしていた。
教室の端で、
誰とも関わらず、
ただ一人で―――――――――――――――。
「よぉ、相変わらずぼっちしてんな」
そんな孤独に生きる彩羽の元に少年がやってくる。
彩羽が変わった事をしていても態度を未だに変えることは無い少年。
何度も何度も拒否しても気付けば隣にいた少年。
昔から一緒に過ごすことが多かった少年。
彩羽が唯一心を開ける存在、それが
「うるさいな………わざわざ〝ぼっち〟に何の用よ?」
「んや? ただ彩羽の宿題見に来ただけ。ってわけで見せて」
遠慮のない物言いに少しイラっとしてしまったが、それでも長い付き合いなので無言でノートを渡す。
「サンキュ」
そう短く言うと、自分の席に戻らずその場で書き写す。
無言が続くがそんなのは二人にとって特に苦にはならなかった。
別に彩羽は自分から喋らず、冥夜も特に自分から喋るタイプではない。
しばらくして、
「ねぇ」
珍しく彩羽から話しかけた。
それに驚いたのか冥夜はびっくりした表情を浮かべたがそれも一瞬で目線をノートに下し「ん? どした?」と訊ねる。
「めーやはさ、何で私に構うの?」
変な質問したな、と彩羽自身驚き「やっぱなんでもない」とこの質問を打ち切った。
だが、冥夜はノートを写す手を止め考えるように教室の天井に目を向ける。
「何でって………
さも当然のように冥夜は言った。
そしてそのまま続ける。
「もしかしていつものネガティブ思考に入ったか? 残念ながらウザさとしつこさは彩羽の知ってる通り俺の専売特許だぞ? 俺はお前に遠慮はしないしお前も俺に遠慮はしない。
ただ優しく、そう言って笑った。
そんな彼の顔が眩しくて、尊くて、思わず目を逸らしてしまった。
「うっさいバカ、大バカ、ウルトラ大バカ―――――――――さっさとノート写して席に戻って」
そう言うと彩羽は窓に目を向け、そして小さな声で。
――――――――――――――――――ありがと。
と呟いた。
神代彩羽は一人だ。
家でも、学校でも、彼女の居場所はどこにもない。
それでも彼女には犬塚冥夜がいた。
今はそれだけで十分だった。
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