EP2.友達Aから呆れられる二人

友野友達A 瑛太えいた 視点】



「ああ、付き合ってないはずだ」


 いや、ホントにな?マジでな?毎度思うんだよ。

 あいつら……郎亜と黒神は、どうしていつまでも付き合わないんだろうってよ。


 ……おっと、自己紹介が遅れちまったな。


 俺の名は友野ともの瑛太えいた

 二ヶ月前にこの高校に進学した、ピチピチの15歳。彼女持ちのリア充だ(ドヤ顔)。


 いやまあ、自己紹介早々で自慢しといてなんだけど、別に俺の事はいいんだよ。


 俺とあの二人郎亜と黒神は中学からの仲だ。

 特に郎亜とは中一の時に意気投合して、親友として気の置けない関係である。


 郎亜は物腰が柔らかく、しかし中々にユニークな性格をしている面白いやつなんだよ。

 真面目でもあり、物事に対して真剣に取り組む勉強熱心な模範生。


 ただ運動はからっきしで、中学の時は持久走で死にかけていた記憶がある。いや、マジで。

 身長が高いだけにちょっと勿体ないよな。


 黒神の事は……正直、よくわからない。

 俺の彼女とは仲が良いみたいだが、殆ど喋んないし、真顔だし、近付きがたいと思う。


 そんな郎亜と黒神だが。

 いかにもカップルですよー、みたいにいちゃついてるくせして、付き合ってはない。


 どうやらあいつらは幼馴染ってやつらしく、小さな頃からあんな距離感とか、なんとか。

 正直、結構長い付き合いの俺からしても付き合ってないのが未だに信じられない。


 だから、何回か確認……という名の揶揄やゆを郎亜に投げかけているんだが。


『いやいや、流理とは幼馴染だよ』


 という返答しか来ない。


「じゃあ郎亜、帰ろ」


「分かった」


 でも、絶対におかしいだろ。

 当然のように一緒に下校しようとしてるのは目を瞑るとして、だ。

 黒神は、未だ郎亜の腕に抱きついてるし。

 郎亜は、そんな黒神をとがめること無く普通に歩き出している。


 こんなのは放課後だけではない。朝の始業前や、毎度の休み時も同様だ。

 ベタベタとスキンシップをしながら楽しそうにいちゃつく。全く人目を憚らず。


 挙句あげくの果てには授業中もだ。

 ペアワークでは絶対組んでるし、教科書を忘れたとかなんとかで机を、そして椅子を近づけ、肩をくっつけていちゃついてる。

 この間、堅物かたぶつの教師(独身)がいちゃつく二人を見てこめかみに青筋を浮かべていた。


 でも、あいつらは付き合ってないらしい。


 なんで?って感じだよな。俺もそう思う。

 これはあくまで俺の憶測おくそくではあるんだが、もしかするとあいつらは無自覚にいちゃついているのかもしれない。

 いちゃついてはいるが雰囲気は甘いってよりも、どっちかというと自然体って感じだし。

 それに以前、『いつも目の前でいちゃつきやがって』と揶揄からかったこともみたら『え?』って本気の顔で返されたし。


 だから付き合うとか、そういうこと以前の問題になっている可能性がある。

 しかし、もしこれが本当だったとしたら……タチが悪いことこの上ない。


「今日は何する?」


「……何かしたい」


「その『何か』とは?」


 当然のように、放課後も二人で過ごすらしい。


「「「………」」」


 後ろ側から教室を出ていく郎亜と黒神を、クラスメイト達がじーっと眺めていた。

 最初はチラチラとしてたのに、今やガン見。皆が皆、顔を赤くしている。


 高校生にもなって堂々といちゃつくあいつらは、もはやウチのクラスの名物爆弾だ。

 あいつらがいちゃついた後の空気は、いつもいつもなんだか居心地が悪い。


 あんなにいちゃつかれると、一部の人達から憎悪ぞうおやらなんやらな感情を向けられそうなもんだ。

 しかし、少なくともうちのクラスではそういったものはなかった。


 見ていて恥ずかしくなるだとか、でも凄く微笑ほほえましいだとかなんとか。

 あくまで応援されている。うちのクラス、温かすぎないか?


 ……でも俺としては、ただただはた迷惑……とは言わんが、なんともいえない。

 あんな堂々といちゃつくのは、俺にはどうしても無理だ。


 心の中でそんな悪態あくたいをつく俺は、熱い頬を手で冷ましながら隣の教室に居る彼女を迎えに教室を出た。

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