無口で無表情で無距離な幼馴染と、無自覚にいちゃいてる話。
さーど
第一話:無口で無表情で無距離な幼馴染
EP1.放課後での二人
【
──先立って記しておく。
この物語は、''純粋な愛''と''健全''で成り立った
心を清め、何か苦い飲食物とニヤけた顔を隠す道具を用意して
現在の時期としては、彼らにとっては高校初となる中間考査の最終日。
難易度は
――テストどうだった?
――割と自信あるわ。……
まだ関係を持ってから日が浅い級友同士で、今回の手応えを
それを起点に、更に親交を深めようと話題を
お互いにじわじわと、少しずつ。これから共に学ぶことになる少年少女へと歩み寄る。
この時期特有の、たった二ヶ月程前まで知人が極端にいなかった状態での新生活が
……しかし、ほとんどの生徒は目の前にいる級友との会話に集中出来ていない。とても失礼だ。
チラチラと、最後尾窓際の席、いわゆるラブコメ主人公席(?)の方へと視線を向けられている。
「……ふう」
「果てしてなくやりきった感をだしているね」
そのほとんどの生徒の視界に映るは、彼らと同じく二ヶ月程前にこの高等学校へ入学したばかりの、二人の生徒だ。
片や、普段から人の目を奪っていそうな、非常に
彼女はブレザーに包まれた男物の腕に抱きつき、達成感
……しかし、
──彼女の名前は
枝毛や癖毛が無い、さらっさらで真っ黒な髪を腰まで伸ばしたのロングヘア。
対照的に素肌は処女雪みたく真っ白で、しかし健康的な血の
切れ長の
そんな気が強く、
大人っぽさと子供っぽさを両立させた学年屈指の美少女ながら、何故か
その一方、視線を集めるもう一人の人物──流理が抱き着いている腕の持ち主。清潔感のある、流理とは対照的に長身の少年。
彼は空いている片手でバッグを肩にかけながら、溜息を吐く流理の様子に苦笑している。
――彼の名は
響きが少し女性っぽく感じる名前だが、れっきとした男性である。
窓から入る陽光で焦げ茶色に光るさらさらな髪と、高一にしては高い方の170という身丈。
流理と違って見た目はそこまで特出する程でも無い──といっても十分整っている──が、ケアを念入りにしているようで瑞々しい肌、キッチリと伸ばされた服と清潔感が高い。
……まあ、服に関しては現在進行形で流理に台無しにされているが。
ともかく、視線の中心にいたのは、そんな二人だった。
「
何か物言いたげに、郎亜を見つめる流理。
しかしその表情は全く動かないため、何を言いたいのかが全くわからない。
そんな流理に対して、郎亜は苦笑の表情を浮かべる。
「……そんなに
……どうやら流理は睨んでいたらしい。
ただただ切れ長な眼を郎亜に向けるだけで、全く睨んでいるようには見えないのだが。
流理は尚も?郎亜を睨み続ける。
「
「ごめんって。でもさ、流理がテスト範囲の
郎亜が謝りながらも、くすくすと笑う。
少し
「
そんな郎亜の言葉に、どんな意図か鼻息を鳴らす瑠璃。表情、変えてくれないだろうか。
「……結果に自信があるって、ほんとに?後ろから見た感じ、結構苦戦してるように見えたけれど」
「うぐっ」
しかし、郎亜の言葉に瑠璃は体を
だがしかし、表情は変わらない。
「……でも、頑張った」
ぼそっと、何だか弱々しく呟く流理。何気に今放課後、初の発言であった。
流理は無表情のまま、郎亜を見上げる。何か期待してるような……いや、気のせいだろうか。至って無表情だ。
そんな流理を見て、郎亜は
そして、流理に抱き着かれていない、空いている方の手を彼女の真っ黒な頭へと持っていく。
「うんうん、頑張ったね」
「……♪」
流理の頭に手のひらを置き、ぽんぽんと。まるで子どもをあやすように優しく叩いた。
そのまま、長い髪を
それを受ける流理は抵抗する事無く両目を
目を瞑る以外、表情は依然と変わらないが。
「「「………」」」
──そんな二人に、集まっている視線。
先ほど話題に出していたクラスメイトの皆々様である。
さて……彼らの心情の程を代弁しよう。
――近すぎない???
そう。些か近い、近すぎるのだ。
ベタベタとしたスキンシップ。どこか甘い会話……会話?
まるでカップル……いや、ここまで来るとバカップルの領域まで両足をずぶずぶと突っ込ませている。
ただ……どう見ても、彼らはお互い自然体だった。
それがどうもまた、何とも言えない気持ちになるのだ。
そして、見ての通りクラスメイトの彼らは思春期という、色々とエモい歳頃の男と女である。
そんな中、同い年の男女二人が人目も
「……凄く仲良いよね、黒神さんと未鳥くん」
そんな二人へ視線を向けて生徒の内、一人の女子が顔を赤くして静かにそう呟く。
そんな女子の言葉に、同じく顔を赤くした数人の生徒がこくこくと頷いた。
「……
一人の男子が、なにやら口元を抑えながら隣にいる友野という男子にそう問いかけた。
「……ああ、まだ付き合ってないはずだ」
友野と呼ばれた生徒は頷きながら……いちゃつく二人に、ジトッとした視線を向けていた。
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