アラフォーは転生したら“弱小貴族”だったので、ゲームの知識で《領地》を強くしてみる
黒おーじ@育成スキル・書籍コミック発売中
第1章 小さな領地を相続しました
第1話 前世の記憶
俺には前世の記憶がある。
今とは全然違う異世界の、日本という国で昭和、平成、令和と生き、37歳で死んだ記憶だ。
そんなこと言ったらヤベーやつあつかいされるだろうから誰にも言っていないけどさ。
でも、本当なんだ。
そして、この世界は俺が前世でプレイしていたゲームTOL(テリトリー・オヴ・レジェンド)の世界にそっくりなのである。
――TOL(テリトリー・オヴ・レジェンド)。
このゲームは、剣と魔法のファンタジー世界を舞台とした領地開発シュミレーションゲームである。
ようするに領地に施設を建設したり、騎士や魔法使いを育成したりして、領地を発展させていくゲームだ。
特徴としてはオンラインモードが充実していること。
内政で国力を上げれば、魔境や他プレイヤーの領地を攻めて自分の陣地を広げることもできる――
で……
俺はそんな世界の、とある辺境領地ダダリを治める弱小貴族『ドワイド家』に生まれた。
ドワイド家は以下の5名から成る。
父:トルティ
母:ネネ
長男:アーノルド(←俺)
次男:ヨルド
三男:ラムド
男兄弟ばかりだが、相続形態は長子相続だ。
よって、長男である俺は小さなころから「やがてオヤジの領地を継ぐことになるんだろうな」とは思っていたのだけれど……
さらにそう確信したのは、13歳の成人の日に『領地のステータス』が見えるようになったことだった。
初めはびっくりしたよ。
自分の目がおかしくなっちまったかと思った。
なにせ、目の前にこんな光の文字列が浮かんでいるのである。
―――――――――
領地:ダダリ
領主レベル:0 ▽
領土:450コマ
人口:750
兵力:2 ▽
魔法:0 ▼
産業:農70 工5 商5 ▽
施設:家屋150 畑70コマ 水車1 ▽
資源:――
外貨:+456万G/-897万G
内貨:――
―――――――――
でも、このステータス。
どっか見覚えがあるなあ……ってところから、前世の記憶を思い出したんだけどね。
そう。
これこそTOLのステータスと同じだったからさ。(しかも日本語)
「ええと、確かこの▽を押すと詳細が見れるはずだったよな」
俺はまず『領主レベル:0』の横の▽に触れてみる。
これは領主個人の能力値だ。
―――――――――
領主レベル:0
称号:転生(次期)領主
HP:7
MP:0
ちから:4
まもり:2
魔法:――
特殊技能:ステータス見
授与可能ジョブ:――
―――――――――
なんとも頼りない能力値だった。
だけど、領地を強くすれば領主の個人能力も上がる。
領主の個人能力が上がれば、また領地を強くする手立てが増える。
この循環がTOLのシステムだ。
じゃあ領地を強くするには具体的にどうすればよいのか?
その基本が『領民に
農民、神官、大工、鍛冶、騎士、占い師、魔道士……
領民をいろいろな職に就けて、彼らに作物を育てさせたり、施設を建設させたり、魔法を開発させたりして、国力を高めるのだ。
でも、肝心の『授与可能ジョブ』が空欄なので、その基本行動が取れないんだけど?
まあ、これは俺が実際にはまだ領主ではないからかもしれんね。
領主レベルも『0』なんてのは見たことがないし。
「うん。だいたい一通りは確認できたな」
他の詳細も見終え『閉じろ』と念じたら、自ずとステータスは消えた。
「……」
すると、いつもの
ステータスを夢中になって見ている間は驚きも一時停止って感じだったけど……
なにせ俺はそれまで普通にこの世界の子として育って来たんだぜ。
マジでいろいろと考えさせられたよ。
もしかしてこの世界はゲームの中なのだろうか?……とかさ。
でも、ゲームにしてはちゃんと人が暮らして、日々メシ食ったり、喋ったりしている。
空があり、山があり、ひとりひとりに人生とか感情があるようには見えた。
何よりもステータスには『称号:転生(次期)領主』とあったんだから、ここは生まれ変われるだけのまとまった『世界』なのだと思われる。
つまり異世界というワケだ。
問題はその異世界で、なぜTOLのようなステータスが開かれたのか、だ。
逆に、TOLというゲームがこの異世界の反映だったとか?
あるいは、この世界から日本に転生した人間があのゲームを作ったっていう可能性もある。
まあ、そこらへんは考えてもわからないか……
もう少しわかりそうなところから判明させていこう。
まずは、ゲームとこの世界がどれほど近似しているかってとこかな。
俺は13歳で領地のステータスが見えるようになったけれど、もしかしたらこの世界の領主(あるいは成人した次期領主)はみんな見えているのかもしれない。
そう思ってさりげなくオヤジに聞いてみたのだけれど……
「ステータス? 何を言っておるのだ」
そういうわけではなさそうだ。
まあ、よく考えてみれば、領地ダダリのステータスは初期状態以下で、もし見えているとしたらもう少しなんとかしそうなものである。
領地の力が小さくてもスローライフで何の不満もなくのんびり暮らしているとかならともかく、領地ダダリは近隣からマジでナメられまくっていたからな。
産物はほぼジャガイモ一本で、他の産業を育てようにもよそからモノが入り、いつまでも国力が上がらない。
国力が上がらないから兵力は極めて低く、王からの要請に対してもろくな兵を送ることができなかった。
そして、王都から召集がかかると文官やよその領主たちからコケにされ、オヤジはいつもそれを嘆いては安酒をあおっているのだ。
「ちくしょう。北のガゼット領、南のベネ領、西のライオネ領、みんなウチを
俺が純粋に13歳の子供だったら『こういう大人にはなりたくない』と思ったろうな。
でも、前世の日本で37歳まで生きた記憶がある身としては、なんだか身につまされる思いがあった。
「オヤジ、飲みすぎはよくねえぜ」
「ああん?」
「元気だしてくれよ。俺がきっとこの領地を強くしてみせるからさ」
「……ふん、
そう言っていつも強がるオヤジだったが……
ある年、やっぱり飲みすぎが
庭先で急にぶっ倒れたかと思えば、そのままくたばっちまいやがった。
「アンター!」
泣き叫ぶおふくろ。
弟のヨルドとラムドも「父ちゃーん」と泣いている。
家の中じゃ威張り散らしたオヤジだったけど、この時のドワイド一家の喪失感ったらなかった。
「アーノルド。これからはあんたがこの家を……領地の
「おふくろ……」
これが16歳の年のことである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます