第12話
車で飛ばすこと20分、目の前にはダンジョンの入口。
奥から地鳴りのようなものが聞こえてくる。
「んじゃ、行ってくるわ。」
「かーくん、絶対に生きて帰ってきてね?」
「あぁ、こんな所で死ぬつもりは無いよ。」
いい女に見送られて足を踏み入れる。
首筋をチリチリと殺気が刺してくる。
これより先は死地であると言わんばかりの殺気に思わず笑ってしまう。
『マスターって大物ッスよね〜、こんな状況普通の人ならチビって逃げてるッスよ?』
「はっ、1度死んだ人間舐めんなよ。 それに、あんないい女に頼られたんだ、男としてやるしかねぇだろ?」
『くぅ〜!かっこいーッスねぇ、流石私のマスターッス♡』
「はいはい、あんがとよ。…さて。」
眼前に広がるは大量のモンスター。
目が血走り、ヨダレを垂らしてこちらへ向かってくる。
相手にとって不足なし。
切った貼ったの殺戮ショー、はじまりはじまり〜
どれ程の時間が過ぎただろうか。
鎌を振るい相手を切り裂く、切り裂く、なぎ払い、切り裂く。
数えるのも億劫な程に切り捨てて尚、未だ終わりは見えなかった。
「クソ、何時になりゃ終わるんだコレ!」
『マスター頑張るッス!ふぁいと〜!』
相棒からの応援に目をやると、チアガールのコスチュームに着替えてボンボンを振っていた。
「こんな時に何してんだお前!馬鹿なの!?死ぬの!?」
『もう死んでるッス〜♪』
「今もうそんな冗談良いから! 手伝えって!」
『ん〜、そうしたいのは山々なんスけど、ウチの鎌貸してますし〜?』
「んじゃバトンタッチ! もうええ加減疲れた!」
『まぁこんな有象無象いくら殺っても意味無いッスしね。』
そこまで言うと、いつの間にか俺の持っていた鎌を振るい一気にモンスターを駆逐した。
一瞬の出来事に呆けていると、こちらに振り返りピースをしてくる。
『どうッスか〜? 惚れちゃだめだぞ♡』
「……いや、やっぱリッちゃんすげーわ。」
『へへっ、戦闘も家事も出来る嫁にしたいリッパーことリッちゃんです☆』
「しかし、コイツらいつまで湧いてくんだ?」
『んー、ぶっちゃけ飽きてきたんで、ケロちゃんも呼びます?』
「そっか、そういえば召喚のやり方知らないな。」
『この前はウチが代行したッスからね、誰かこーいって強く思えば勝手に来るっすよ。』
「そんなもんなのか?」
『そんなもんッス。』
そう言うのであれば、やってみるか。
先程までの死体は食い散らかされ、もうすぐそこまでモンスターが迫っていた。
「…… 冷静になって見てみると、普通に怖ぇな。」
『迫力はあるッスね〜』
「さぁ、誰でもいいから出てこいやァ!!!」
そう言った瞬間、目の前に魔法陣が現れ、先日現れたケロベロスが現れた。
『グルァァァァアアアアアア!!!!!!!』
咆哮をあげた瞬間、モンスターの群れはピタッと止まった。
『耳がァァァ!!!!耳がァァァァァァァァァ!!!!!』
ゴロゴロのたうち回っているリッちゃんを尻目に、ケロベロスの眼前に立つ。
そっと手をかざすと大人しく頭を垂れる。
主人のことはわかるようだ、ひと撫してから命令を下す。
「ケロちゃん、コイツら殲滅できる?」
『ワン!』
元気な返事をしたケロちゃんは、大きく息を吸い巨大なブレスを放つ。
すると、瞬く間に蒸発してゆくモンスター。
10分もしないうちにこの階層のモンスターは全て焼き払われていた。
「……なんつーか、うん。」
『見事なまでに焼け野原ッスね。』
『ワン!ハアハアハアハア。』
本来は緑が茂り、とても空気のすんでいるダンジョンなのだが見渡す限りの赤と黒、炎は未だにこの階層を焼いていた。
「うん、まぁ、うん。仕方ないよね!」
『そーッスよ、ダンジョンなんで暫くしたら戻るっしょ!』
「あ、そういえばこの下の階層も溢れてんのかな?」
『んー、どうでしょうね、流石に居ないとは思うッスけど、見てみます?』
「確認くらいはしておくか。」
『ワン!』
焦げた匂いを纏いながら奥へと進む。
チリチリと焼けるような熱気に顔を顰めつつ歩いていると、すぐに2階層への入口が見つかった。
それから暫く2階層を徘徊するも、特に異常は見られなかった。
ほっ、とため息をついてから来た道を戻る。
時計を見ると午前2時、飲み直しも出来ないかと肩を落としながら歩みを進めるのだった。
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