(17)Aクラス
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ルーカスとアルフが会話をしていると、突然二人の後ろから聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「二人ともおはよう。中々興味深い話をしているみたいだが、俺たちも混ざっていいか?」
「俺たちって……ああ、どうもよろしく」
声をかけて来たのはすぐにエルッキだと分かったが、それ以外に三人ほど同級生が傍に近寄っていた。
それに気づいたルーカスは、少しばかり警戒心を抱いたが何でもかんでも拒絶する必要はないと判断した。
昨日いきなりルーカスに声をかけて来た実績のあるアルフも、問題ないと頷いていた。
「挨拶は昨日済んでいるからもういいだろ。それよりもワイはルーカスの探索者としての話が気になるんだが?」
「興味深いって、そっちか。エルッキは別に探索者を目指すつもりはないだろう?」
「そうでもないな。さっきの話でいえば、技術者として入ることもできるんじゃないか?」
「確かにそれはそうだけれど……いや、稼ぎという意味だとやっぱりどこかの工房に入ったほうがいいと思うぞ」
「それはまとめ役になるとか立場のある地位に就いた場合だろう。
「……うーん。難しいところだな。専属になれば変わって来るだろうが、基本的にはもともといる技師の弟子になるとかじゃないとなれないしな」
学校に入って二日目にするような話ではないが、集まった皆が興味深げに聞いていることが分かったのでルーカスもついつい具体的な話までしてしまった。
周囲を見てみると、集まっている生徒たち以外にもこちらの話を聞いているらしい幾つかのグループも見受けられる。
そもそもこのクラスに集まっているのは子供であり、ルーカスのように現場そのものを見て来たことがある人など皆無なのだ。
そう考えるとルーカスの話は、色々な意味で役に立つ内容になるわけだ。
ルーカスが一人前の船乗りとして既にクラスメイトたちに知れ渡っていることについては、特に不思議だとは思っていない。
恐らく貴族の子供たちを通じて、ルーカスが勲章持ちである話は伝わっているはずだからだ。
そんなことよりも、今の状況に気が付いたルーカスは念のために釘を刺しておくことにした。
「あ~。俺の話が聞きたいならそのまま聞いてもらっていても良いんだが、あくまでも探索者という狭い範囲内の話だと理解したうえで聞くようにしてくれ。全部の職業が同じというわけではないからな」
何のためにルーカスがそんな忠告をしたのかすぐに理解したエルッキが、先ほどまでよりも少し声を大きくして話を続けた。
「確かに全部が全部同じだと考えるのはまずいだろうな。船乗りのことについてはルーカスに聞くのが一番だろうが」
「俺だって親の船以外に乗ったのは、数えるほどでしかないぞ。探索船なんて船長ごとにやり方が変わるなんてことも珍しくないからな」
「そんな細かいことを知っているだけで、ワイたちにとっては十分役に立つからな」
ルーカスが話を聞くことに半ば黙認したからではないだろうが、周囲に集まっている同級生以外にも何人かが頷いているのが確認できた。
それこそ赤ん坊の時から船に乗り続けているルーカスは、彼らのように親や周囲にいる大人以外から仕事の話を聞ける機会などほとんど無いに等しい。
そこで同じような年齢のルーカスが現実を経験したうえでする話は、貴重な機会だといえる。
Aクラスは基本的に貴族の子女が多いクラスではあるが、家を継げる者などそう多くはないため色々な話を聞いて将来のことを考えたいという子供は多い。
そのことを理解したルーカスは、どうせ貴族だからと偏見にも似た目で見ていたと反省した。
彼らは彼らで、自分の将来のことを考えているのだと分かったためだ。
勿論中には親から圧力をかけられている者もいるだろうが、それとこれとは話が別で個人に立ち返ってみれば将来を不安に思う気持ちは同じなのだろうと。
そう考えると浮遊球なんてものを手に入れて、ほぼ将来が確定しているルーカスの方が異端の存在だといえる。
「それならまあ、いいか。それよりも話はここで終わりだぞ。そろそろ先生が来る時間だろう」
「おっと本当だな。ちょっと来るのが遅すぎたか」
「エルッキは本当に遅かったな。寝坊でもしたのか?」
「寝坊していたら遅刻じゃないか。言うほどギリギリで来たわけじゃないからな」
そんな軽口を叩き合いながらも、エルッキを含めた集まっていた生徒たちはそれぞれの席に向かい始めた。
隣の席になっているルーカスとアルモはそのままだが、間もなく担任が来るというのも本当の事なので一旦話は終わりということになった。
それを見てではないだろうが、各々で集まって話をしていたグループも解散して大人しく席につき始めた。
Aクラスということもあって、もともと真面目な生徒が集まっているお陰だろう。
そうこうしているうちに、担任のテリーが入ってきた。
「――おっと。さすがにAクラスということか。朝からきっちりしていて何より。それよりも今日から授業が始まるわけだが、基本的にはそれぞれの教科の今後の流れとスキップ制度のテストの説明になると思う。教科ごとに違っているところもあると思うが、気を付けるように」
非常にざっくりとした説明から入っていたが、こればかりは仕方ないだろう。
特にスキップ制度に関しては、テリーの説明にもあったように教科ごとに違いがあるのでこの場で一気に説明することは出来ない。
ルーカスもフェデーレ会で調べた時に分かったのだが、テストばれ防止なのかそれぞれの教科で色々な対策が行われていた。
ペーパーテストだけで終わる教科はまだいいとして、実技も混ざって来る教科もあるためそれぞれに工夫が凝らされている。
中にはペーパーテストだけで良さげな教科も、敢えて実技を混ぜて来るものもあったりするので油断はできない。
それだけこの学校が実技を重視しているということでもあるのだろう。
テリーの説明は、簡単なものだけで終わった。
大体の説明は、昨日のうちに終わっているということだろう。
この日の一時間目は質問がある生徒がそれぞれ個別にテリーのところまで行って聞き、重要そうなものがあればその都度他の生徒にも周知するという形が取られていた。
これも時間短縮する目的があるのだろうが、全体的に同じようなことが行われているのか、テリー独自の形式なのかまでは分からなかった。
とはいえ後半になって来るとクラスメイトたちも質問が尽きて来たのか、テリーのところまで行く生徒もいなくなっていた。
「――もうこれ以上は聞くことは無いかな? うーん。そうなると、残りの時間は何を話そうか……あ、そうか」
たまたまなのか、ここでルーカスの頭の上をフワフワと漂っていたツクヨミに目を向けたテリーは、何かを思い出したように話し始めた。
「これは別にそこの王種に限った話ではないが、この学校には星獣を連れて歩いている生徒はそれなりの数いるからな。皆も昨日から色んな星獣を見ているはずだからわかるだろうけれどな。ただどんな星獣であってもむやみに手を出すのはやめておけよ」
そんな忠告めいた言葉から始まった星獣に関する話は、ルーカスにとっても初めて知るようなことばかりだった。
今は別に星獣の授業ではないので一般的なことしか話していないようではあったが、星獣と接するうえで必要なことをテリーは上手に話していた。
最初は自分には関係ないとあまり話を聞いていなかった生徒も、テリーの話術に引き込まれるように話を聞き始めるのであった。
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是非ともフォロー&評価よろしくお願いいたします。
m(__)m
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